CES 2017
自動車関連技術の展示が相次ぐパナソニックブース
自動運転を想定した「車室内空間」、FCAと共同開発した「次世代コックピット」など
2017年1月6日 20:31
- 2017年1月5日~8日(現地時間)開催
米ネバダ州ラスベガスで開催されている「CES 2017」において、パナソニックブースでは自動車関連技術の展示が相次いだ。
パナソニックブースは、2016年と同じ1576m2の展示スペースに、「Smart Mobility」「Smart Entertainment」「Smart Home」の3つのテーマで展示を行なっているが、2016年の展示に比べてもBtoB関連の展示スペースを1割程度増やして全体の7割強に拡大。なかでもSmart Mobilityのエリアは、「最新の車載インフォテインメントシステムや、少し先の機内エンターテインメントシステムを提案するなど、パナソニックらしい人、街、車、飛行機のつながりを紹介した」(同社)という。
自動車関連では、「Connected Vehicles」をテーマに関連技術や製品を展示。同コーナーは北米主導で展示内容が決められたといい、パナソニックにとって自動車関連事業は北米最大の事業。この点でも、BtoB市場に向けたパナソニックの新たな事業スタイルを示すものになったといえよう。
パナソニックブースにおける自動車関連のコンセプト展示は2つ。1つは自動運転を想定した「車室内空間」だ。完全自動運転の社会が到来すると考えられている2025年を想定し、自動運転に適した車室内空間を提案。乗用車で対面シートを実現するインテリア技術を紹介して見せた。ここでは20型4Kタブレットやプロジェクションマッピング、ナノイー、カメラなどのパナソニックのコンシューマ技術を活用。「車両から移動体リビングへの変革」をテーマにしている。
テーブルには4Kタブレットが置かれ、木目調の内装部にはプロジェクションマッピングを活用したデザインが施され、窓には各種情報が表示される。「名所旧跡の近くなどを通過したときに、窓に名所旧跡に関する情報が表示されるといった使い方が可能であり、同乗者と楽しく過ごす車内環境を実現できる」としている。
もう1つのコンセプト展示が「次世代コックピット」だ。これはフィアット クライスラー オートモービルズ(FCA)との共同開発プロジェクトの一端として紹介された「PORTAL」と呼ばれるもので、少し先の未来を見据え、顔認証技術や車車間通信機能、クルマと店舗との連携機能など、スマートモビリティ社会と次世代の車載技術にフォーカスしたコンセプトを紹介。「個人認証により環境設定をカスタマイズ。4人の同乗者がそれぞれ違う音楽を聞いたり、アラームが運転者にしか聞こえないなどの音場制御もできるようになる。次世代の車載技術によるドライビング体験を提案した」という。最適な制御を行なうために、IBMのAIプラットフォームであるWatsonを利用している。
車内インフォテイメントシステムとしては、「第4世代U connectインフォテインメントシステム」と「Android車載インフォテインメントシステム」を展示した。第4世代U connectインフォテインメントシステムは、Apple「CarPlay」およびGoogle「Android Auto」と連携が可能な最新のU connectに対応したインフォテインメントシステム。応答性に優れた8.4型タッチスクリーンを搭載し、より自然な音声ガイドにより操作性を高めると同時に、高速起動の強みを訴求していた。Android車載インフォテインメントシステムでは、サイズや解像度が異なるディスプレイでも各種アプリを最適に表示し、動作させることができることなどを紹介。会場では空調コントロールなどのデモを行なっている。
また、プレミアムオーディオでは、米フェンダーと共同開発した「Fender Premium Audio System」と、音楽プロデューサーのEliot Scheiner氏と共同開発した「ELS Studio Premium Audio System」を実演。アキュラ「MDX」の実車を展示して、車室内を音楽空間に変える提案を行なった。
一方、Green Mobilityの展示としてリチウムイオン電池での協業を紹介。米テスラモーターズや台湾ゴゴロとの取り組みを紹介した。テスラ「モデル X」で採用しているのは「18650」だが、今回は「2170」という電池も展示。これは、1月4日(現地時間)にパナソニックとテスラが発表したギガファクトリーでの協業において生産する予定の「モデル 3」向けの電池となる。また、テスラとの太陽光パネルの協業についても紹介。パナソニックとテスラは、2017年夏からニューヨークのバッファロー工場で太陽電池セルとモジュールの生産を開始する予定で、2019年までに1GW(ギガワット)の生産能力を実現するという。
来場者の関心を集めていたのが、クルマとクルマの通信および道路と車間通信を行なう「V2V」「V2X」だ。クルマとクルマ、クルマと街(信号機や道路標識などのインフラ)がつながることで、効率的な交通システムの構築や事故の発生防止を目指すもので、安心、安全な自動車社会を支えるパナソニックの技術を、映像とジオラマで紹介した。V2VおよびV2Xの取り組みは、米コロラド州の高速道路で実証実験を行なっており、その仕組みを分かりやすく展示していた。
そのほかCommand & Controlの提案として、パナソニックが培ってきた画像解析技術を生かして自動車のナンバープレートや駐車場の空き状況を認識する「スマートパーキングメーター」を展示。駐車料金を課金したり、空いている駐車スペースへ誘導したりといったオペレーションを無人で行なう。また、太陽光発電やセキュリティカメラ、光ID技術を活用した「LinkRay」対応液晶ディスプレイなどを備えた「スマートバス停」では、交通情報や乗り換え案内などを表示するデモを実施した。
さらにセキュリティカメラやセンサーなど、さまざまな機器を備えたLED街灯をWi-Fiでネットワーク化する「スマートLED街灯」では、安心、安全な暮らしの提供に加えて、パナソニックのIoTプラットフォームを生かすことで、各所のセンサーから得られるデータを活用した新たなサービスを提供。スマートタウンの可能性を広げるという。Wi-Fi基地局としての役割のほか、気象センサーや温度センサーなどを活用して、さまざまな情報を発信する役割も担うとしており、「効率的な監視を実現する全方位カメラを用いたセキュリティシステムや、スマートLED街灯、スマートバス停、スマートパーキングメーターから上がってくるデータを一括で管理し、街の集中管理センターを想定したソリューションを提供する」と説明された。
一方で、航空機関連となるアビオニクス事業では、「Connected Aircraft」をテーマに、「コネクテッドフライトオペレーション」「コネクテッドパッセンジャーエクスペリエンス」を展示した。「コネクテッドフライトオペレーション」では、フライトモニタリングやメンテナンス報告、機内エンターテインメントシステムの更新など、地上と航空機がインターネットを介してつながるサービスを紹介した。
「コネクテッドパッセンジャーエクスペリエンス」においては、APIの公開によりエアラインごとにカスタマイズ可能な搭乗者向けアプリを紹介。スマートフォンなどの携帯端末が機内ネットワークにつながることで、専用アプリから見たい映画が選べたり、機内での物品購入ができるなど、1人ひとりの携帯端末と機内エンターテインメントシステムが連携するという。
パナソニックにとって、自動車関連事業およびアビオニクス事業は成長戦略において重要な役割を担う。また、北米市場においては最大の事業となっている自動車関連事業においての存在感を示すとともに、この分野に対してパナソニックがさまざまな領域からアプローチしていることを示す展示内容だったと言える。