イベントレポート

【CES 2019】フォルクスワーゲン、Mobileyeのレベル2+自動運転システムを採用へ

イスラエルでは共同でMaaSプロジェクトと、Mobileye CEO Amnon Shashua氏

CES 2019でプレスカンファレンスを行なうMobileye CEOのAmnon Shashua氏

 Intel傘下の車載コンピュータビジョンベンダであるMobileye(モービルアイ)は1月8日(現地時間)、「CES 2019」においてプレスカンファレンスを開催した。その中で、フォルクスワーゲンがMobileyeのレベル2+自動運転システムを採用することを明らかにし、Mobileyeの本社があるイスラエルにおいて共同でMaaS(Mobility as a Service)プロジェクトを行なうことを説明した。

 Mobileyeは、すでに多くの自動車メーカーのADAS(Advanced Driver Assistance Systems)に採用されている車載コンピュータビジョンベンダで、2017年に大手半導体メーカーであるIntel傘下となった会社だ。

 プレスカンファレンスには、同社 CEOであるAmnon Shashua氏が登壇。Mobileyeの技術状況を説明するとともに、将来計画について語った。

 Shashua氏は、MobileyeのADASのコアであるEyeQシリーズ(最新はEyeQ4)の採用例を示すとともに、EyeQシリーズの出荷数の伸びについても紹介。安全テストであるEuro NCAPの5スター車への採用事例を示すことで、EyeQシリーズの安全性能を説明。その最新のものがBMW X5で、EyeQ4に加え3つ異なる画角をもつカメラであるTriFocal Cameraを装備する。Mobileyeというと単眼カメラのADASというイメージもあったが、処理能力が向上し、さまざまな画像を処理し始めている。

Mobileyeの実績
EyeQシリーズの伸び
Euro NCAPについて
BMW X5の構成
Mobileyeブースに展示されていたBMW X5
TriFocal Camera
TriFocal Cameraの画角。広角カメラは150度を見る

 その流れの中で、フォルクスワーゲンがMobileyeのレベル2+自動運転システムを採用することを紹介。進化したACCや、レーンキープアシストを搭載し、RoadbookというHDマップをもつことで実現していく。

フォルクスワーゲンがMobileyeのレベル2+自動運転システムを採用することを紹介

 レベル2+自動運転システムは、各社によって定義が異なるものの、レベル2と同様に人間に運転責任がありながら、これまでのレベル2自動運転(日本では、スバルのアイサイト・ツーリングアシストや、日産のProPILOTなど)よりも高度な自動運転を実現していくものとなる。Shashua氏は2018年のCESのプレスカンファレンスで、このレベル2+自動運転について紹介。HDマップを装備するため、雨でロードサインが見えないときなどでも走り続けることができるというようなことが可能としていた。

【CES 2018】レベル2+について説明するMobileyeのAmnon Shashua氏

 つまり、現状のアイサイト・ツーリングアシストやProPILOTでは、車線や先行車が基本情報となっているため、車線や先行車が見えないような場合はレーンキープ走行が難しい。日本の高速道路では車線がしっかりしているが、アメリカなどでは、ボックスドットとよばれるドットが埋め込んであったり、そもそもそんなものがなくなっていたりする。この状況でも、レーンキープする走りができるという。

 そのために必要なのが車線情報などを持つHDマップとなり、Shashua氏はMobileyeとHDマップで実現できるのがレベル2+自動運転だとしていた。

 もちろん、レベル2系の自動運転なので運転責任はドライバーにあり、「アシストする範囲が広がる」と思えばよいだろう。日本の道で考えると、先行車もおらず、葉っぱなどで車線が隠れてしまっている場合でも、レーンキープ走行ができるというようなものとなる。

 その日本の高速道路についても、Shashua氏は報告。日本の高速道路2万5000kmが110万の機能(標識など)とともにデータ化されたことを語るとともに、ドイツではBMWと共同で都市のデータ作成などを行なっていることを紹介した。

日本の高速道路のデータ化を紹介

 また、Shashua氏はMobileyeの取り組みについても説明。Mobileyeのシステムではリアルタイムに外の風景を見ているため、例えば工事による渋滞であったり、バス停に多くの人が並んでいたりすることが、多くのMobileyeシステムデータが集まるクラウド側のシステムで分かるという。そこで、これを利用して、トラフィックコントロールをしたり、バス停の場合はそのバス停に優先的にバスを回したりすることができる能力を持つ。さらにこれを発展させた取り組みをイギリスで行なっており、Mobileyeシステムの見る信号柱やマンホールのデータと、電気業者、ガス業者、水道業者の地下地図データと結びつけることで社会インフラのメンテナンス情報を管理ができる。いわゆるスマートシティ実現のための、基本情報を収集していくことが可能になっている。

Mobileyeシステムでの例

 このプレスカンファレンスの後半で明かしたのが、フォルクスワーゲンとのMaaSの取り組み。レベル4自動運転のEV(電気自動車)を用いてイスラエルでMaaSを行なっていく。最初はテルアビブで2019年から始め、2020年末まで研究開発&実験。2021年からは商用化に取り組み、2022年にはサービスを開始したいという。

 これは、フォルクスワーゲンとMobileyeと、チャンピオンモータースとの協業となるのだが、事業レイヤーなどもしっかり決まっており、将来へ向けての具体的な取り組みとして紹介された。

イスラエルにおいて、フォルクスワーゲンとMaaSプロジェクトに取り組む
プロジェクト概要
ロードマップ
取り組みのレイヤー

 Mobileyeの次世代製品であるEyeQ5については、2018年12月からサンプル出荷を開始しており、2021年には4つのOEM、出荷量としては800万個以上であるとした。

Mobileye EyeQ5搭載ボード
Mobileye EyeQ5
Mobileyeの製品ポートフォリオ
EyeQファミリー
EyeQ5のブロックダイアグラム

編集部:谷川 潔