イベントレポート
【CES 2019】NVIDIA、ジェンスン・フアンCEO記者会見。世界初のレベル2+自動運転システムについて語る
メルセデス・ベンツとの共同開発については、「Xavierより先の世代ベース」と
2019年1月15日 00:00
半導体メーカーのNVIDIAは、ここ数年のCESの記者会見や基調講演登壇時には、自動車関連の話題を中心取り上げてきた。それに対して2019年、NVIDIAがCESの開幕に先立って1月6日に行なった記者会見では、新しいPCゲーミング向けのデスクトップPC用GPU(僚誌PC Watchの記事「NVIDIA、レイトレをメインストリーム市場にもたらす『GeForce RTX 2060』」)と、ノートブックPC用GPU(NVIDIA、ノート向けGeForce RTX 20発表、1月29日より搭載製品が出荷)を発表し、ついに記者会見の中では自動車の話題を取り上げなかった。
だからといって、自動車関連の発表がなかった訳ではなく、記者会見の翌日にはプレスリリースという形で報道発表を行ない、NVIDIA DRIVE AutoPilot(NVIDIA、世界初のレベル2+自動運転システム「NVIDIA DRIVE AutoPilot」市販化)、独ダイムラーとの提携(NVIDIAとメルセデス・ベンツ、次世代AIカー開発へ)などを発表しており、決して自動車分野の取り組みを減らしているという訳ではない。
本記事では1月9日(現地時間)に報道関係者やアナリストなどを対象に行なわれたNVIDIA 社長 兼 CEO ジェンスン・フアン氏の記者会見の中から自動車関連の話題について取り上げていきたい。
レベル2+の自動運転システム、メルセデスとの提携が大きな発表
──まず初めにフアンCEOからCESでの発表のまとめを。
フアン氏:今回、自動車向けには2つの大きな発表を行なった。1つめは、すでに商用出荷を開始した世界初のレベル2+の自動運転プラットフォームを発表したことだ(筆者注:NVIDIA DRIVE AutoPilotのこと)。我々はソフトウェア、Xavierチップ、すべてを提供しており、2020年には市場に搭載した車両が登場することになるだろう。レベル2+とはなんだという話だが、レベル2+は自動運転に必要になるすべての要素を持っているが、ドライバーが運転席に座っている必要があり、ドライバーがすべての責任を持つ。しかし、自動パーキング、ハイウェイでのオートパイロット、レーンチェンジが自動化される。すでに我々はシリコンバレー近郊で50マイルのテスト走行を行なっているデモをブースで公開している。4つのハイウェイ、レーンチェンジ、渋滞の中などを、ハンドルに手を置いただけの状態で走行できている。
2つめは独ダイムラーとの次世代カーコンピューティングシステムの開発提携だ。1つは自動運転のためのカーコンピューティングシステム、そしてもう1つはAIユーザーインターフェースを実現するためのカーコンピューティングシステム。これらのコンピューティングシステムはソフトウェアで実現される。将来のカーコンピュータはソフトウェアで実現される、未来の自動車メーカーはソフトウェアの会社となる、ダイムラーはそのことをとてもよく理解している。
──ダイムラーとの提携についてもう少し教えてほしい。
フアン氏:メルセデスとはすでにMBUX(筆者注:Mercedes-Benz User Experience、自動車のセンターコンソールに設置される車載情報システムのこと、Hey メルセデスで、音声認識が呼び出せたりする)のAIユーザー体験、ロボットタクシーの実現で協力している。新しい発表では自動運転とAIを2つのコンピュータで実現し、ソフトウェア的には1つのユニファイドアーキテクチャで実現する。それらはXavierより先の次世代の製品における提携になる。
──レベル2+自動運転についてもう少し教えてほしい。またレベル5自動運転はいつ実現できるのか?
フアン氏:レベル2+は、レベル3と技術的な要素はほぼ同じで、次世代のレベル2+はAIによる運転とドライバーモニタリングの機能が入る。レベル5の実現はそんなに難しいことはないと考えており、むしろレベル3やレベル4よりも簡単だと考えている。レベル5はロボットタクシーの要素が大きく、ODD(筆者注:Operational Design Domain、運行設計領域)は限られており、スピードも低い。レベル3とレベル4は高速道路も走らせないといけないので簡単ではない。
──CESでは5Gが大きな話題だが、NVIDIAが5Gのモデムなどのビジネスに進出する可能性は?
フアン氏:その予定はない。すべてをカバーすることはできない。我々は我々の強みを出せる分野で勝負したいと考えている。
フアン氏によればレベル2+自動運転とはドライバーが責任を持つ中で、レベル3以上の自動運転の要素技術を投入したもの
今回のフアン氏の会見やNVIDIAの発表では、レベル2+(レベルツープラス)自動運転という新しい用語が登場しており、それらに関しては若干解説が必要になるだろう。
レベルxというのは、どの段階の自動運転を実現しているかの用語になる。現在一般的に利用されているのはSAE International(SAEインターナショナル)が定義した段階で、レベル0(L0)、レベル1(L1)、レベル2(L2)、レベル3(L3)、レベル4(L4)、レベル5(L5)の6段階が設定されている。日本の国土交通省も現在は同様の定義をしている。
このうち、ドライバーに変わって自動車自身が自動運転をするのがレベル3以上で、レベル0は自動運転の機能ナシ、レベル1とレベル2はいわゆるADAS(Advanced Driver Assistance Systems)と呼ばれるドライバーの運転を助ける支援装置という位置づけになっている(つまりレベル1とレベル2はドライバー自身がドライバーの責任で運転する)。
では、レベル2+というのは何かというと、これらでは定義されていない、新しい段階となる。現時点ではどちらかと言うとマーケティング的な用語という位置づけが正しく、拡張されたレベル2と半導体メーカーが説明したいため使っている、そうした理解が正しいだろう。
このため、定義は企業によって異なっているというのが現状だ。フアン氏が説明したのはレベル2+は、ドライバーが責任を持って運転するということには違いはないが、レベル3以上に採用されるような自動運転の技術をレベル2にも適用したものと説明されている。というのも、レベル3以上ではマシンラーニング/ディープラーニングベースのAIを利用した自動運転を実装するが、それをレベル2にも適用したものがレベル2+だというのがフアン氏の定義ということになる。
現在のADASはAIのような技術は使っておらず、あらかじめプログラムされたアルゴリズムで自動ブレーキなどの機能を実現するのが一般的だ。そこにAIを利用した自動運転の技術やドライバーモニタリングの機能を適用することで、依然としてドライバーがハンドルに手を置いている必要はあるが、自動車がレーンチェンジやハイウェイパイロット機能、あるいは車庫入れなどの操作をある程度自動的にやれる、そういう意味だと考えることが可能だろう。
フアン氏はNVIDIA DRIVE AutoPilotを既に既に出荷済みと述べ、2020年に発売される商用車に採用されると説明した。ドライバーがハンドルを握り続けるというL2+の定義によれば、現行の道路交通法でも走らせる可能性があり、より便利で安全なADASとして検討されていく可能性が高いと言えるのではないだろうか。