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MobileyeとWILLER、日本・台湾・ASEANをターゲットに自動運転で協業。2021年実証実験、2023年ロボタクシーなどサービス開始

2020年7月8日 発表

Intelの子会社となる自動運転ソリューションを提供するMobileye(出典:Mobileye)

 Intelの子会社でイスラエルの半導体メーカー「Mobileye」(モービルアイ)は、7月8日にオンラインで記者会見を開催し、高速バス「WILLER EXPRESS」を展開するWILLERと戦略的なパートナーシップを締結し、日本・台湾・ASEANとグローバルの市場を見据えた自動運転ソリューションの提供を両社が共同して行なっていくことを発表した。

 両社が共同して開発するMaaSシステムを利用して、完全自動運転による無人で運行する「ロボタクシー」、オンデマンド型でシェアサービスとして提供される完全自動運転の「自動運転シャトル」の日本での商用化を目指す。

 まずは2021年までの日本の公道で自動運転走行のロボタクシーの実証実験を開始し、2023年には完全自動運転でのロボタクシーと自動運転シャトルのサービス開始を実現し、台湾やASEAN(東南アジア諸国連合)へのサービス展開を目指す。

MobileyeとWILLERが提携し、2021年にロボタクシーの実証実験を、2023年にロボタクシーと自動運転シャトルの商用化を目指す

モービルアイ 日本法人 代表取締役 川原昌太郎氏(2019年12月3日、編集部撮影)

 Mobileyeは1999年にイスラエルで創業された半導体メーカーで、コンピュータビジョン(カメラと半導体を利用して、AIを活用して物体を判別する仕組みのこと)向けの半導体を提供してきた。近年ではMobileyeの半導体Eye-Qシリーズは、自動車、特にレベル2やレベル2+の自動運転に採用されることが多く、日本でも日産自動車の「プロパイロット」シリーズの製品に採用されるなどして、注目されている半導体メーカーの一つと言ってよい。Mobileyeは、PC向けやデータセンター向けのCPUで高い市場シェアを持ち、世界最大(2019年の売上ベース)の半導体メーカーであるIntelに、2017年の3月に買収されることが発表され話題(別記事「Intel、イスラエルの自動運転向け画像処理のトップ企業Mobileyeを153億ドルで買収」参照)を呼んだ。

 WILLERは、1994年に創業した西日本ツアーズ(現:WILLER TRAVEL)が源流になっている旅行、バス運行会社企業などからなるグループ企業の中核企業で、子会社のWILLER EXPRESSが高速バス「WILLER EXPRESS」を提供していることで知られている。WILLER EXPRESSはゆったりしたシートの導入などで女性客などから人気を集めており、日本全国で22路線/292便/年間309万人の顧客(2018年時点)と同社によれば高速バスとしては「国内最大手」の規模を誇っているという。

 Mobileyeの日本法人であるモービルアイ 日本法人 代表取締役 川原昌太郎氏は、今回のMobileyeとWILLERとの提携の概要を説明した。

 川原氏は「日本を含む市場で両社が共同してサービスの提供を目指す。まずは2021年にセーフティードライバー(筆者注:安全を確保するために人間のドライバーが運転席に座って緊急に対応する)が搭乗した状態でロボタクシーの自動運転走行の実証実験を日本の公道で行なう。その後、2023年にロボタクシー、そして自動運転シャトルのサービス開始を目指す」と述べ、Mobileyeが提供する自動運転向けのソリューションと、WILLERが開発するサービスなどを組み合わせてそうしたサービスの実現を目指すと説明した。

 その上で、サービスは日本だけでなく、台湾やASEAN(東南アジア諸国連合、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアなど東南アジアの10カ国で構成される共同体)などに展開していく計画で、そうしたMaaS(Mobility as a Service)をグローバルに展開していくことが両社の提携の目的だと川原氏は説明した。

日本ではWILLERが運行システムや交通システムの開発を担当し両社共同でMaaSシステムを作り上げる

Mobileye 副社長MaaSオペレーション事業部長 ヨハン・ユングウィルス氏(デジタル会議より筆者キャプチャー)

 その後、Mobileye 副社長MaaSオペレーション事業部長 ヨハン・ユングウィルス氏がMobileyeのMaaSのビジョンなどについて説明した。ユングヴィルト氏はダイムラー・メルセデスで約20年勤務した後、フォルクスワーゲンでCDO(Chief Digital Officer)を勤め、フォルクスワーゲンの自動運転車「SEDRIC(セドリック)」の開発に関わる(別記事参照)などしており、その後Mobileyeへと加入したMaaSの専門家だ。

自動運転のメリット(出典:Mobileye)
自動運転により実現されるMaaSのメリット(出典:Mobileye)

 ユングウィルス氏は「自動運転には安全性の向上、渋滞の解消、駐車スペース不足解消、人口減少への対応、生産性の向上などのメリットがある。それにより交通システム全体を、より安全にクリーンに、低コストでより便利にする」と述べ、自動運転により、交通システム全体の効率が向上し、安全性が向上し、かつコストが下がることでより多くの人が利用しやすくなるというメリットがある説明した。

Mobileyeの自動運転システムのデモ動画

 ユングウィルス氏は同社が提供する自動運転システムの特徴としては「われわれのシステムはコンピュータビジョンだけを利用して運転している。つまり人間が運転しているのと同じだ。それで、ラーンドアバウトのような難しい交差点でも、きちんと周囲を把握して運転できている」と説明した。

XaaS(出典:Mobileye)
自動運転によりMaaSはグローバルに(出典:Mobileye)

 ユングウィルス氏はMaaSのレイヤーを、自動運転(レイヤー1)、HDマップ(レイヤー2)、車両運行/リモート操作(レイヤー3)、AIによる交通システム(レイヤー4)、シェアライド(レイヤー5)という5つのレイヤーに分け、Mobileyeはレイヤー1~3あたりを提供し、レイヤー3~5は先日Intelが買収を発表しMobileyeの一部となることが発表されたMoovitが担っていくと述べた(別記事「インテル、9億ドルでMoovitを買収。モービルアイ事業に参加」参照)。

Moovitの役割(出典:Mobileye)

 なお、HDマップに関してMobileyeはREMという仕組みをすでに導入しており、その詳細に関しては別記事「Mobileye、自動高精度地図生成システム「REM」の最新情報」を参照いただきたい。

MobileyeとWILLERの役割分担(出典:Mobileye)

 ユングウィルス氏は、WILLERとの提携ではグローバルにはMoovitが担っている部分をWILLERが担い、デマンド調整やレイヤー4の交通システムの部分、さらには車両運行システムなどをWILLERが担当し、それ以外をMobileyeが担当して両社のソリューションを1つにして提供すると説明。「両社の強みを合わせることで、MaaSとしてフルスタックで提供していくことが可能になる」(ユングウィルス氏)とそのメリットを強調した。