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Intel、イスラエルの自動運転向け画像処理のトップ企業Mobileyeを153億ドルで買収

日産「セレナ」の同一車線自動運転技術「プロパイロット」のキーコンポーネント企業

2017年3月13日 買収

 半導体メーカーのIntelは、BMWとの自動運転車の開発で技術パートナーとして共同開発を行なっていたイスラエルの企業であるMobileyeを3月13日に買収したことを明らかにした。Intelによれば、Mobileyeの一株あたり63.54ドルを現金で支払い、買収総額は約153億ドル(日本円で約1兆7442億円、1ドル=114円換算)になるという。

 Mobileyeは1999年にイスラエルで設立された企業で、従業員数は660人、コンピュータ画像処理の技術に長けたベンダーで、ADASや自動運転のコンピュータ画像処理のトップベンダーとしても知られている。日本では日産自動車「セレナ」に採用されている同一車線自動運転技術「プロパイロット」のカメラユニットとして採用されていることでも知られている。

 Intelは昨年からADAS、自動運転関連のソリューションの充実に向けて企業買収攻勢を強めており、2016年はディープラーニングのソリューションで知られるNirvana Systemsを買収するなど、すでに顧客として発表されているBMWを含めた自動車メーカーへの売り込みを強めている。

「セレナ」にも採用されているMobileyeのソリューション。買収により技術ポートフォーリオを拡充

 Intelが買収したMobileyeは、自動車向けのコンピュータ画像処理の世界ではトップベンダーの1つとなっている。同社が自動車メーカーに提供している画像処理チップのEyeQは、2016年までの段階で全世界の1600万台に採用されて出荷されている。Intelは2016年、自動車メーカーのBMWやMobileyeと自動運転技術を共同開発することを明らかにしており、そうした協業により関係が深まっていた。

 Mobileye側も今後より大きく発展し、多くの自動車メーカーとの取引を進めるには多額の投資が必要になるという事情があったとIntelでは説明している。Intelの一部となることで、豊富なIntelのキャッシュフロー、製造技術などを活用することができ、より強力な製品を開発して投入していくことが可能になると説明されている。

2030年には7000億ドルの市場になると見られている自動運転に向けた投資を続けるIntel

 Intelは一昨年より、会社の変革を進めており、会社の収益がPC市場に依存するビジネスモデルから脱却するため、IoT(Internet of Things)や自動運転などの新しい領域への投資を増やしている。なかでも自動運転向けの半導体市場は、2030年には7000億ドル(日本円で79兆8千億円、1ドル=114円換算)の市場規模があると予想されており、Intelにとっても有望な市場の1つだと考えられている。このため、2015年にはFPGAのトップベンダーであるAlteraを買収し、2016年にはディープラーニングのソリューションではトップベンダーだったNervana Systemsを買収するなど豊富なキャッシュフローを利用した買収戦略を進めている。

 Intelは自動運転車の鍵になると考えられている5G(第5世代移動通信システム)向けのモデム、買収したAlteraのソリューションを利用した車載システム、ディープラーニングに最適化されたクラウドサーバー向けの半導体など、車載上の端末からクラウドサーバーまで自動運転システムを一気通貫で提供できるソリューションの構築を目指している。今回のMobileyeの買収もそうした戦略の一環と考えられ、コンピュータ画像処理に強いMobileyeのソリューションを手に入れることで、ディープラーニングを活用したAIソリューションで攻勢を強めるNVIDIAなど競合他社に対抗していく狙いがあるものと考えられる。

 Intelによると、規制当局などの承認を経て、今後9カ月で買収手続きは完了する見通しとのことだ。