GTC 2017
【GTC 2017】NVIDIA、トヨタとは直接契約。ティアワンの部品メーカーはトヨタが選ぶと説明
NVIDIA オートモーティブ部門 シニアダイレクター ダニー・シャピーロ氏
2017年5月12日 06:29
- 2017年5月8日~11日(現地時間)開催
- San Jose McEnery Convention Center
半導体メーカーのNVIDIAは、5月8日~5月11日(現地時間)の4日間にわたり、米国カリフォルニア州サンノゼ市において同社のプライベート技術イベントとなる「GTC 2017」を開催している。5月10日に行なわれた基調講演の中でNVIDIA 創設者兼CEO ジェンスン・フアン氏は、同社のAIベースの自動運転プラットフォームをトヨタ自動車に提供し、数年内に登場するトヨタの自動運転車に採用されることを明らかにした。
その基調講演後に、報道関係者の質疑応答に答えたNVIDIA オートモーティブ部門 シニアダイレクター ダニー・シャピーロ氏は「トヨタと弊社の契約は直接行なわれている。トヨタのためにシステムを納入するティアワンの部品メーカーはトヨタが選ぶ」と述べ、NVIDIAとトヨタの契約は、トヨタ本社との直接契約であり、実際にシステムを製造・納入する部品メーカーは、トヨタに部品を納めているティアワン部品メーカーの中からトヨタが選ぶと説明した。
NVIDIAとトヨタは直接契約。ティアワンの部品メーカーはトヨタが選ぶ
──NVIDIAはボッシュとZF(筆者注:いずれもドイツのティアワンの部品メーカー、ボッシュはグローバルに最大シェアを持つ)との提携をCESで発表した、その後の進捗状況は?
シャピーロ氏:弊社のCEOがボッシュのプライベートイベントへ参加し、基調講演に登壇した。そこで発表したことは、我々はボッシュのためにXavier(エグゼビア)の特別バージョンを投入することだ。もちろん、産業グレード、自動車グレードの製品となり、今年の末までに提供する予定だ。ボッシュはこれを利用してAIカーコンピューターシステムを自動車メーカーに提供する。まだどこの自動車メーカーがそれを採用するかは明らかにしていないが、そんなに時間がかからず明らかにできるだろう。
ZFに関しては今のところ何もアップデートはないが、この夏頃には何かをお伝えできると思う。今言えることは、レベル3の自動運転のシステムを今年の末までに、レベル4を2018年末までには製品化することができるのではないか。
──NVIDIAは自動車メーカーと直接ビジネスをしている場合と、ティアワンの部品メーカーを介してビジネスをしている場合と両方があるように見えるのがその違いは何か?
シャピーロ氏:多くの場合は何も違っていない。しかし、自動車メーカーがNVIDIAの技術、ソフトウェアとハードウェアのどちらも直接ほしいと思う場合もあるし、ティアワンが自動車メーカーのために統合する場合がある。より多くの場合は我々がティアワンと協力してシステムを作り、それを自動車メーカーに納入するという事例だが、ときには自動車メーカーとNVIDIAが直接やりとりをして、その後自動車メーカーがティアワンを見つけてくるというケースもある。違いは自動車メーカーの専門性で、部品に関してはティアワンの方が専門家だからだ。
──今回発表したトヨタとの契約はどちらのケースに該当するのか?
シャピーロ氏:我々はトヨタと直接契約している。トヨタがティアワンを選択し、我々がそこと協力して開発していくことになるだろう。
──そのトヨタとの契約は米国法人とか、日本の本社とか?
シャピーロ氏:我々は日本のトヨタ本社と契約を交わしている。
──その契約には、TRI(筆者注:Toyota Research Institute、トヨタが米国に設立にしたAI研究に特化した子会社)は関わっているのか?
シャピーロ氏:TRIのギル・ブラッド氏と弊社は、昨年のGTCの基調講演で講演していただくなどよい関係にある。しかし、今回の取引は生産車に関するものなので、日本のトヨタ本社と直接話しをさせていただいている。
──トヨタとのビジネスはすでに始まっているのか? いつごろ車両を実際に見ることができるのか?
シャピーロ氏:すでに開発は始まっている。基調講演で発表したとおり、今後数年のうちという計画だ。
Xavierは当初は1チップのボードが提供されるが、将来的にはマルチチップもあり得る
──Intelのように自動運転向けの半導体は急速に参入する企業が増えている。競合他社が増えているが、NVIDIAの強みは?
シャピーロ氏:自動運転を実現するには2つのことに対応する必要がある。1つはAIプラットフォームを準備することで、もう1つが自動車グレードの半導体を製造すること。他社との大きな差別化ポイントは、弊社のAIシステムがディープラーニングのアーキテクチャを採用していることで、他社に比べて研究で大きなリードがある。弊社はクラウドでのディープラーニングに取り組んできて、それはハイパフォーマンスのGPUを利用して演算されている。弊社の自動運転システムでは、それを自動車に入るようにスケールを調整して持ち込んでいる。
重要なことは、我々のアーキテクチャではユニファイドコードになっており、クラウドのディープラーニングで使っているコードが、自動車のSoCでも動く。競合他社の場合は、x86、FPGA、カスタムチップと異なるアーキテクチャのプロセッサに向けてソフトウェアを開発する必要なり複雑になってしまっている。ソフトウェアのスタックはシンプルなことが重要で、これが245社ものパートナーが弊社のソリューションを選んでいる最大の理由だ。
自動車メーカー、ティアワン、スタートアップ、大学の研究者……すべてが同じCUDAというオープンで柔軟性で伸張性のあるソフトウェアプラットフォームで結ばれている、これが我々のDRIVE PXの強みだ。
──IntelがMobileye、QualcommがNXPを買収するなど、ほかのコンピューティング系の半導体メーカーが自動車関連の買収攻勢を強めているが……NVIDIAもM&Aに興味があるか?
シャピーロ氏:みなさんも記事でご覧になったように、いくつかの会社が大きな古いタイプのテクノロジー企業を買収した。あるいは、スタートアップ企業を買収した例もある。我々もイノベーションを愛しているので、なるほどと思うところもある。我々も投資部門を持っており、そこが将来性のあるスタートアップ企業に投資している。
──自動車を動かすにはマイクロコントローラなどが必要なるが、NVIDIAはそこの部分はもっていないが……。
シャピーロ氏:そのとおりだが、弊社がそうした分野の製品に進出する予定は今のところない。NVIDIAの哲学は、NVIDIAの強みがだせる分野にリソースを集中するということにある。例えば、今回の基調講演では新しいVRのソリューションとして、Project Holodeckをデモしている。それはVRだけでなく、自動車産業にとっても有益なソリューションだと考えている。そうした弊社の強みを生かせる事業のフォーカスする、それがNVIDIAの哲学だ。
──自動運転の普及はプレミアムカーから始まり、ミドルレンジ、メインストリームへと降りてくるのだろうか?
シャピーロ氏:弊社はそう考えている。ただし、そのようにメインストリームへと降りていくのは、皆さんが思っているよりも早いのではないか。というのも、自動運転はユーザーに快適性をもたらし、一度使ってしまうとなかなか戻れなくなる。ということは、一度体験したユーザーは次に買い替えるときに、その機能を必須の機能とするだろう。また、自動運転には、交通事故を減らすという安全機能の側面もあり、その観点からも必須の機能となるようになるまですぐだと思う。
──将来的には複数のSKUが必要になるのだろうか?
シャピーロ氏:すでに現在のParker世代でも複数の選択肢を提供している。1つのParkerだけを搭載したというモデルもあれば、2つのParkerに2つのPascalというモデルもある。
では次世代はどうなるのかと言えば、現在公開しているXavierは1チップのボード。しかし、もし顧客が望めばマルチチップも可能だし、我々はそれをよろこんで提供するだろう。