GTC 2017
【GTC 2017】近未来「AIパトカー」登場。カメラに映るナンバーを記録し続けドローンも搭載
NVIDIA 矢戸氏による解説動画掲載
2017年5月10日 10:29
- 2017年5月8日~11日(現地時間) 開催
- San Jose McEnery Convention Center
GPUメーカーのNVIDIAが5月8日~11日(現地時間、以下同)の4日間にわたり、米国カリフォルニア州サンノゼ市の「San Jose McEnery Convention Center」で開催している「GPU Technology Conference 2017」(以下、GTC 2017)。このGTC 2017では、さまざま技術セッションも行なわれているが、その技術を搭載した製品も展示されている。
ショーケースフロアで、まず目に飛び込んできたのは「AI POLICE CAR OF THE FUTURE」と題した車両。簡単に書くと人工知能を搭載した未来の警察車両ということだろうが、このAIパトカーが実現している機能は驚くべきものがある。
このAIパトカーは、NVIDIAの提唱するAIシティの一環として提案されているもの。AIシティでは多数のビデオ映像解析により、人々がより安全に、より効率的に過ごせるものとしている。そしてAIパトカーは、そのAIシティにおける安全などの部分を担当することになる。
その概略を米国NVIDIA本社でJetsonのプロダクトマーケティングを担当する矢戸知得氏に語っていただいた。まずは、矢戸氏の解説ビデオ映像を見てほしい。
解説ビデオ映像を見て分かるように、このAIパトカーではフロントカメラに写る映像から車種、ボディカラー、ナンバープレートを記録し続けることができる。この機能を実現するためにNVIDIAのJetson TX2が用いられており、このJetson TX2は数万円で手に入るものだ。
このJetson TX2に搭載されたPascalアーキテクチャのGPUで、ディープラーニングを利用。映像の認識結果が、クルマの静止画、SUVなどの車型、色として記録し続けられている。車型や色などはテキストとして出力されており、映像をサーバーで解析するのではなく、エッジ側(車載側)で解析することでサーバー通信容量の減少、記録ストレージエリアの減少など、データの軽量化を図ることができている。
この映像解析は、フロントカメラ以外にサイドカメラでも実施。サイドカメラの解析で映像では、駐車場内をAIパトカーが走行し、止まっている車両を次々に解析。駐車場走行ではナンバープレートを近距離から読み取れるので、ほとんどの場合で解析に成功。やはり次々に記録し、表示していた。
さらに、もう1つのデモとして、室内では警察官のボディカメラ装着を想定した映像解析を実施。警察官がカメラを身に着け、歩き回ることで、次々に歩行者の顔認識が可能であるとのデモをしていた。
FacebookなどのSNSでは、サーバー側のコンピューティングパワーを使って、個人特定や画像解析、映像解析を行なっている。しかし、このAIパトカーの優れたところはJetson TX2のみでやっていること。実際日本ではNシステムなどがナンバー解析に用いられているが、あれほど大規模なシステムでなくとも車載レベルで車種、ナンバー解析ができることになる。
また、このシステムのよい点は、レーダーなどで対象物の接近を確認して撮影しているのではなく、ただ単に映像カメラからの映像を解析し続けていること。当たり前だが、映像の撮影には通常の光があればよく、特別な電波など放出しないために、例えばレーダー探知機などで探知されることもない。今回のデモでは映像としては示されていなかったが、映像に映る車種の速度を算出することも可能で(別のコーナーの、衝突回避などのデモでは普通に算出されていた)、レーダーを使わずに各種の解析が可能になる。
ただ、このようなAIパトカーが普及する時代は、クルマのほうもほとんどの道で自動運転が当たり前になり、速度違反などの交通違反は激減するのは確実だ。今はまだあまり目に見えない形で進行しているAI技術の普及が、いずれ目に見える形で、今とまったく異なった風景を作り出していくのだろう。