イベントレポート

シャープ、コンパクトミニバンタイプのEV「LDK+」公開 クルマが“もう1つの部屋になる”

2025年10月30日〜11月6日 開催
シャープのEVコンセプトモデル「LDK+」

 シャープは、「Japan Mobility Show 2025」のシャープブースにおいてEVコンセプトモデル「LDK+」を公開した。

 2024年9月に公開した第1弾に続く新たなコンセプトモデルで、シャープの親会社である鴻海科技集團(Foxconn)のEV「Model A」をベースに開発。これをもとに改良を加え、2027年度の市場参入を目指す。

シャープブースで行なわれたプレスブリーフィングの様子

 シャープ 専務執行役員 CTOの種谷元隆氏は、「シャープのLDK+は、走っているときに価値を出すだけでなく、止まっているときでさえも、価値を出す新しいクルマである」と定義し、「クルマは95%の時間は駐車している。だが、EVであれば稼働していても音を出さない、排気ガスも出さないため、暮らしの中でもっと使ってもらえるのではないか、もっと楽しい生活にできるのではないかと考えた。クルマは家と一体化する。家と連携し、新しい暮らしを提供できる。家にクルマを止める『Park of your home』から、クルマが家の一部やもう1つの部屋になる『Part of your home』に進化することになる。みなさんの未来を創るため、2027年度の商品化に向けて邁進していく」と述べた。

 第2弾となる今回のコンセプトモデルはコンパクトミニバンで、5人乗りで設計。運転席と助手席の間に、テーブルやプロジェクターを備えたコンソールボックスを配置。運転席を後向きに回転させることができ、後部座席と向き合う形でリビング空間を生み出すことができる。

 後部座席上部にはロール式スクリーンを設置しており、これを下ろすと大画面で映画を楽しんだり、オンライン会議を行なえたりする。スクリーンに映し出される画面は60型ぐらいのサイズになりそうだ。

シャープ 専務執行役員 CTOの種谷元隆氏

 種谷CTOは、LDK+を家の一部として使う方法をいくつか提案した。

「Part of your home」がキーメッセージだ
クルマが止まっている95%の時間に着目した

 1つめは、お父さんが仕事に使用。必要な資料をスクリーンに映し出して、手元のPCで操作ができる。車内はエアコンがきき、静かで、快適な空間が実現できる。

 2つめは、子供の勉強部屋としての利用だ。静かで、落ち着いた場所で勉強をしたいという用途での利用が可能だ。プラズマクラスターイオンで空気をきれいにしたり、LDK+に搭載されたAIが家庭教師となって子供の学習をサポートしてくれる。

 3つめが、大音量で映画を楽しんだり、大声を出しながらスポーツ観戦をしたり、あるいは楽器を演奏して楽しんだりといった利用だ。いわば、もう1つのリビングルームとしての利用になるが、車内の音が外には漏れないため、家の中ではできないような楽しみ方が、車内であれば思う存分楽しむことができる。

「新たな空間を提供するために、シャープが持つ多くの技術を車内に詰め込んでいる。シャープが培ってきた家電の技術や、エッジAIであるCE-LLMによる対話エンジンなどが空間をクリエイトする。また、ソフトウェア・デファインド・ビークルによって、1人ひとりが使いやすい空間を実現することができる。年齢層を問わずに、シーンを選ばずに、家や地域とつながった使い方ができる。百人百様の使い方ができるのがLDK+である」とした。

具体的な利用シーンを提案
シャープが持つ家電技術などによって新たなニーズに応える

 LDK+には格納式プロジェクターやスクリーン、プラズマクラスターイオン、LED照明、液晶調光シャッターなど、さまざまな技術を搭載していることを強調してみせた。

 シャープブースで行なわれたプレスブリーフィングでは、鴻海科技集團でEV事業を統括する関潤CSOがメッセージを寄せた。

ビデオメッセージを寄せた鴻海科技集團の関潤CSO

 関CSOは、「多くの人がなぜ家電屋(シャープ)がEVを作るのか、と疑問に思っているだろう」と切り出し、「私は約1年半前に、シャープの種谷さんからEVを作りたいという話を聞いた。『クルマは走っている時間よりも、止まっている時間の方がはるかに長い。動いている5%の時間のためのクルマではなく、止まっている95%の時間に着目したEVを作ってみたい』ということだった。とてもおどろいた。実に面白い視点である。ぜひ、やりましょうと完全サポートを約束した」と述べた。

 続けて、「だが、そのあとは喧々諤々である。私の利用イメージのモデルは中3女子であり、下には小5、小3の弟がいる。弟たちがうるさくて、受験勉強に集中できないという環境にある。そこにLDK+によって、快適な勉強部屋を提供できるというものだ。だが、種谷CTOはおっさんがくつろげる空間を目指している(笑)」と語り、笑いが起こった。

 では、シャープブースに展示されているLDK+を写真で紹介しよう。

Japan Mobility Show 2025のシャープブース
シャープブースに展示されたLDK+
正面から見たところ
後ろ部分の様子
車内の様子。広い空間を実現している
運転席の椅子は180度回転し、助手席の椅子は折りたためる
LDK+の運転席の様子
ステアリングには「SHARP」のロゴが入る
クルマの中央部には移動式コンソールがあり、テーブルにもなる
移動するコンソールに組み込まれたプラズマクラスターイオン空気清浄機
コンソールの反対側には格納式プロジェクターが搭載されている
後部座席部分にはロール式スクリーンが設置されている
スクリーンに映像を映したところ。60型程度のサイズとみられる
液晶調光シャッターで車内が見えなくなる。映画鑑賞などにも最適だ
コンソールの上部には複数のコンセントが用意されている
室内天井部分のLED照明。自由に色を変えることができる
大河原克行