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シャープがEV市場に参入 公開されたEVコンセプトモデル「LDK+」が提案するEVの新たな価値とは
2024年9月6日 18:50
- 2024年9月6日 発表
シャープは9月6日、EV(電気自動車)市場に参入すると発表した。
これは都内で行なわれた「SHARP Tech-Day'24 “Innovation Showcase”」の開催概要説明発表で、シャープ専務執行役員 CTO兼ネクストイノベーショングループ長の種谷元隆氏が、EV市場への参入を宣言したもの。発売年度は検討中としたが、「数年後を1つのめどにして進めたい」と事業化する考えを示した。まずは、「LDK+(エルディーケープラス)」と呼ぶコンセプトモデルを開発している。
種谷CTOは、シャープがEV市場に参入する価値について、「EVは動く家電ともいえる。家電の延長としてとらえることができ、そこに価値を提供できる」と語った。
LDK+は、鴻海精密工業股份有限公司(Foxconn:フォックスコン)と連携し、同社が持つEVのオープンプラットフォームをベースに、企画および開発、マーケティングをシャープが行なう。フォロフライの協力も得て実現することになる。
なお、EVコンセプトモデルは、9月17日~18日の2日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催する同社の技術展示イベント「SHARP Tech-Day'24 “Innovation Showcase”」の会場で展示される。
シャープによると、LDK+はバンタイプの形状で、全長は5m。後部座席が後ろ向きに回転。ドアが閉まると両サイドの窓に搭載した液晶シャッターが閉まり、プライベートな空間が誕生する。65V型のディスプレイを搭載しており、リモートワークのスペースとしても利用できたり、集中して仕事をしたり、子供部屋としても利用できるという。また、大画面を通じて家の中にいる家族とのシームレスなコミュニケーションも可能にする。
LDK+の名称は、家にあるLDK(リビング、ダイニング、キッチン)に、EVによって柔軟性を持った一室をプラスするというコンセプトからネーミング。種谷CTOによると「シャープが作るEVは、エンターテインメントを提供するEVではなく、さまざまな空間として活用してもらえる価値を提供できるEVになる。そこにプラスの意味を込めた」としている。
また、シャープの種谷CTOは、「EVとしての走りの性能は重要だが、家の駐車場に止まっているときには価値を生み出してはいない。家電メーカーの立場から見ると、今後EVが家とつながるなかで、止まっているEVをどう活用するかがカギになる。家電メーカーとして家とのつながりを実現しながら、新たな世界観を提案したい。EVを1つの部屋として捉えることで、止まっている時間も、価値を作り出すEVを生み出すことができる」と述べた。
EVと車が空間としてつながるだけでなく、EVと家を組み合わせた最適なエネルギーの活用も提案。人の生活や好みもAIが判断して、EVの中に快適な環境を実現することも目指す。
具体的には、シャープ独自のAI技術であるCE-LLMやAIoT技術を活用して、住空間、人、エネルギーの3つをつなぎ、快適でサステナブルな空間を実現。家とセキュアな回線でつながり、家から離れたプライベート空間を構築しながら、利便性を提供。車内では、その人の好みやシーンにあった温度や明かりを提案。EVと連携した最適なトータルエネルギーマネジメントも実現し、効率的に、快適に過ごせる場所を提案するとしている。
また、シャープ I-001プロジェクトチーム・長田俊彦チーフは、「LDK+は一般的なキャンピングカーとは異なる。キャンピングカーは違う場所に移動して楽しむクルマだが、シャープが提案するEVは、駐車場で家とつながることで価値を生み出す。ガソリン車とは異なり、EVは電気を使用するために、シャープが100年以上にわたり培ってきた家電の技術のほか、AIやエネルギーの技術も生かすことができる。より多くの価値を提供できる。家の中の機器とクルマがつながり、コミュニケーションすることで、部屋にいるのと同じ会話ができたり、家のデータとクルマのデータがつながったりして、その人にあった生活環境をAIが実現する。EVが蓄電池となって災害時に活用できるといったことも可能になる。EVの中で映画を見たほうが快適であり、エネルギーにも優しいといった提案もAIが行なうことになる」と語った。
エンジンをかけずにエアコンを稼働して、誰にも邪魔されず、ビールを飲みながら大画面で、大音量で映画を楽しむ……といったことも提案できるとしている。
現時点では、事業化については明確な方針は示しておらず、種谷CTOは、「SHARP Tech-Day'24での展示を通じて、シャープが考える世界観に共感してもらえるパートナーを集め、これらの企業とオープンな形で一緒にやっていきたい。コンセプトカーを見てもらい、どんな人に共感してもらえるのかを知りたい」と語り、「シャープブランドの自動車も、出口の1つであるし、パートナーシップによって合弁会社を作り、別ブランドで販売するという方法もある。なにも決まったものはない」と述べている。
今後、シャープのEV市場への参入が、どんな形で本格化するのかが注目される。
SHARP Tech-Day'24 “Innovation Showcase”開催概要
会期:
2024年9月17日 13時30分~19時(最終受付18時30分)
2024年9月18日 10時~17時(最終受付16時30分)
会場:東京国際フォーラム(受付:ガラス棟 地下1階 ロビーギャラリー)
主催:シャープ株式会社