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シャープ、単独初開催の大規模技術展示イベント「SHARP Tech-Day」から車載関連技術を紹介

2023年11月10日~12日 開催

東京ビッグサイトでシャープ初の大規模技術展「SHARP Tech-Day」が開催された

Foxconnブランドの電動SUV「モデルC」も展示

 シャープは11月10日~12日の3日間、東京・有明の東京ビッグサイトで同社初の大規模技術展示イベント「SHARP Tech-Day」を開催した。

 SHARP Tech-Dayは、2023年9月に創業111周年を迎えた同社が、それにあわせて、1が並ぶ11月11日を中心にした3日間にわたって開催した技術展示会だ。シャープが単独で開催する大規模技術展示会は、創業以来初めてのことであり、展示会場では「Be a Game Changer」をテーマに、同社独自の42の技術を展示。初公開となる技術が数多く並び、会期中に5000人を超える来場者が訪れた。

 展示会場は、「Smart Living」「Smart Industry」「Smart Cities」「Sustainability」の4つのゾーンで構成。未来の家電やAI、XRに加えて、EV関連の展示も相次いでいた。

 会場には、シャープの親会社である台湾の鴻海グループによるFoxconn(フォックスコン)ブランドのSUV「モデルC」が展示されたほか、シャープの子会社であり、PC事業を行なうDynabookからは、「AI運転改善指導ソリューション」などが展示された。SHARP Tech-Dayから車載関連の展示をレポートする。

 シャープの呉柏勲社長兼CEOは、11月20日に社内イントラネットを利用してCEOメッセージを社員に発信。そのなかでSHARP Tech-Dayについて振り返り、「新規事業の創出、新産業への挑戦の加速」と「社内にイノベーションの魂を再び呼び覚ます」という2つの目的があったことに言及。「今回のTech-Dayを通じて、非常に多くの方々に、当社の目指す未来に『共感』してもらった。今後は、この『共感』を、『協業』へとつなげることで、社外パートナーの力も借りて、スピードを上げ、新たな顧客価値創出を具体化していきたい」と述べている。

 なお、呉社長兼CEOは、同メッセージの中で、SHARP Tech-Dayを2024年以降も継続して開催することも明かしている。

ステージ上でポーズを取るシャープの経営トップ。右から2人目が呉柏勲社長兼CEO

 車載関連の展示が多く行なわれていたのは、「Smart Cities」のゾーンである。

 同ゾーンの入口には、鴻海グループの電動SUV「FOXCONN モデルC」を展示していた。モデルCのボディサイズは4695×1895×1625mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは2920mm。0-100km/h加速は3.8秒、航続距離は700kmとなっている。車内には15.6型IVIを設置。自動運転はレベル2+としている。

鴻海グループの電動SUV「FOXCONN モデルC」
フロントグリル
リアビュー
モデルCのスペックを紹介していた

 また、FOXCONNによる車載用部品の展示も行なっていた。ここでは、EV向けのSiCパワーモジュールや、路線バス向けの電動バス「モデルT」などに採用している各種LEDモジュールのほか、ドアやシート、サイドミラー、ライト、ウインカーなどの機能を制御するBCM「XMicro1」などを紹介していた。

鴻海グループのEV向けのSiCパワーモジュール
各種LEDモジュールを展示
「モデルT」に採用しているLEDモジュール
ドアやシート、サイドミラー、ライトなどを制御するBCM「XMicro1」のデモストレーション
展示されていたBCMの「XMicro1」
ライトやウインカーなどを制御している様子

 シャープの技術として展示していたのが、車内のデザイン性に配慮した設計が可能なディスプレイ一体型カメラだ。液晶パネルの有効エリア内に小型カメラモジュールを組み込むことができ、ドライバーにカメラがあることを意識させないデザインが可能になる。スマホ向けカメラの技術を活用した小型・低背カメラモジュールを利用しているという。

液晶パネルの有効エリア内に小型カメラモジュールを組み込んだディスプレイ一体型カメラ

 DynabookによるAI運転改善指導ソリューションは、通信型ドライブレコーダーで収集した走行時のデータを分析し、AIが運転の改善点について指導するソリューションだ。ドライブレコーダーに搭載した画像認識技術をもとに、ドライバーの運転の様子を確認するほか、居眠りやわき見、運転中の携帯電話の使用などを検知。警告するすることで安全運転を促す。また、機械学習によって優良ドライバーの運転データをモデリングし、ドライバーの走行と比較したシミュレーションを行ない、改善すべき点を明確化。的確に運転指導が行なえるようになるという。

DynabookによるAI運転改善指導ソリューション

「Sustainability」ゾーンでは、車載用太陽電池モジュールを展示していた。

 展示されていたのはNEDO事業の一環として開発したもので、34%以上という世界最高水準の高効率太陽電池セルを車載用モジュール化して、太陽電池パネルを制作。トヨタのプリウスPHVのルーフやボンネット、バックドアなどに搭載し、実証車として公道走行を行なったという。運輸分野におけるCO2排出量削減に向けた太陽電池活用の可能性を検証したもので、定格発電電力は約860Wを達成。駐車時の駆動用バッテリへの1日あたりの最大充電量は、EV航続距離44.5km相当となり、走行時の駆動用・補助バッテリ系統への最大充電・給電電力量はEV航続距離56.3km相当に達したという。晴れた日が続けば、クルマを購入してから自分では一度も充電せずに、利用できるという世界が訪れそうだ。

トヨタのプリウスPHVのルーフやフード、バックドアなどに太陽電池セルを搭載
実際に公道走行を行ったクルマを展示
ボンネット部分にも太陽電池が敷き詰められていた

 もう1つの展示が、ルーフに設置できる車載用太陽電池モジュールだ。車体の流線形にあわせた3次元曲面モジュール構造となっており、黒を基調としたバックコンタクトセル技術を採用することで、デザイン性を追求したという。太陽光を利用することで、EVの航続距離を伸ばすことを支援できるとしている。

ルーフに設置できる車載用太陽電池モジュール

 また、「宇宙用ソーラーシート」と呼ぶフレキシブル太陽電池モジュールも展示していた。

 宇宙空間でも32%という高効率を実現した化合物多接合型太陽電池を使用し、軽量で巻き取り式となっているため、ロケット打ち上げ時には格納しておき、人工衛星が宇宙空間に到達した時点で広げて、大面積の発電モジュールとして利用できるという。高効率化合物3接合セルをフィルムで封止した軽量フレキシブルモジュールであり、JAXA認定メーカーであるシャープならではの耐久性を実現。過酷な宇宙環境でも使用できるようにしているという。

宇宙用ソーラーシート。軽量で巻き取り式となっているのが特徴だ
ペロブスカイト太陽電池モジュールも、将来は車載用途が想定されている。透過性が高いことがわかる

「Smart Living」ゾーンでは、シャープが発表したエッジAI「CE-LLM」を採用した技術や製品、サービスなどが数多く展示されていたが、そのユースケースの1つとして展示されていたのが、ICOMAの電動モビリティバイク「TATAMEL BIKE」と、CE-LLMとの連携だ。

 TATAMEL BIKEの前方に搭載されているカメラを通じて、走行中の映像を自宅の大型ディスプレイに表示したり、シャープのネックスピーカー「サウンドパートナー」を介して、近くのお店や役立つ情報を走行中に音声で知らせてくれたりする。また、電動バイクの車両情報の確認や、宅内にあるAIoT家電の制御を遠隔地から音声で行なえるという。電動バイクとシャープのAIoT家電との連携提案がこれから増えそうだ。

ICOMAの電動モビリティバイク「TATAMEL BIKE」と、CE-LLMの連携をデモンストレーションした