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シャープ、プラズマクラスターイオン照射で運転能力が向上することを確認
2023年9月26日 15:10
- 2023年9月26日 発表
シャープは9月26日、同社のプラズマクラスター技術で、クルマを運転中の人に対してプラズマクラスターイオンを照射すると、ブレーキの反応やハンドル操作の滑らかさについて、能力が向上することを世界で初めて確認したと発表した。
シミュレーションでは、ブレーキの反応時間が0.5秒短縮
シャープでは2020年、脳波測定を用いた研究で、プラズマクラスター技術でクルマを運転中の人の集中力維持効果を実証。今回は集中力維持という効果だけでなく、運転行動に関する能力向上にも効果が期待できるのでは、という考えのもとで研究を実施した。
この効果の確認は、芝浦工業大学 SIT総合研究所 特任研究員の伊東敏夫氏と共同で行なったもの。芝浦工業大学の実験室にあるドライビングシミュレータにプラズマクラスター技術搭載の試験装置を搭載し、20歳から24歳の男女20名が試験を行ない、プラズマクラスターイオンの濃度が被験者位置で約10万個/cm 3 の風を照射または送風のみで違いを比較した。
測定は手動運転操作とテイクオーバーの必要な自動運転操作をドライビングシミュレータで再現。手動運転においては先行車が停止表示したあと、ブレーキを踏むまでの時間を測定し、障害物を避けるときのハンドル操作の滑らかさをステアリングエントロピー法で数値化して評価した。
この結果、ブレーキを踏むまでの時間はプラズマクラスターイオン照射ありでは、送風のみに対して0.5秒短縮されたとし、滑らかさについても、障害物を避ける際のハンドル操作の粗さがとれて滑らかになったとしている。
また、自動運転レベルによっては、自動運転中も手動運転に切り替えるテイクオーバーが必要となるが、今回はレベル2の自動運転を想定して試験を実施。自動運転時の眠気の強さが抑制されたことが確認できた。
そして、自動運転から人の手動運転に切り替わるテイクオーバー時のハンドル操作についても滑らかさが向上したとしている。
高齢者でも効果が出たことは面白い結果
発表会では、芝浦工業大学の伊東敏夫氏がブレーキを踏むまでの時間が0.5秒短縮されたことについて「50km/hに換算しますと7mの距離になる。つまり、7m手前でブレーキ操作ができたことで、非常に安全性が上がったのではないか、と考えられる」と見解を述べた。
また、ドライビングシミュレータは20歳から24歳までの学生が約40分間にわたって運転操作を行なって検証したものとなるが、別途、大阪のシャープに上の年代の人を集め、簡易的な試験も実施した。
ノートPCの画面にクルマを表示させ、ブレーキをかけた映像になったらエンターキーを押すというものだが、これでも60歳以上で反応が早くなったという効果が得られたという。
ドライビングシミュレータに比べると秒数での差はわずかなものになるが、これは、シミュレータでブレーキを踏みかえるという動作に比べて、エンターキーを押すだけという動作から反応時間はもともと早い。そのなかでも差が出た点は評価に値するとのこと。
伊東氏は一般的に「高齢になるとどんどん反応が鈍くなって効果がないということが分かっている」として、「プラズマクラスターでは高齢者に効果があったというのは、非常に面白い結果だと考えている」と述べた。
今回こうなったメカニズムは分かっていない
なお、プラズマクラスターの車載用空気清浄機はすでに市販されている。ただし、これを使ってドライバーにプラズマクラスターイオンが含まれた風を照射することで、効果があるかということについては、明確な回答はできないとのこと。
今回はあくまで試験装置で結果が出ただけで、既成の商品で効果が出るかどうかは、言えないとしている。
また、効果のメカニズムについては、関連するものとして2020年にクルマを運転中の人の集中力維持効果があることを確認。この5月にはプラズマクラスター技術で脳血流が上がり脳活性が起きる可能性を確認している。
ただし、なぜ血流が上がるなどのメカニズムは分かっていない。シャープ スマートアプライアンス ソリューション事業本部 PCIヘルスケア事業部副事業部長兼PCIソリューション推進部長の岡嶋弘昌氏は「実際まだ分かっていない。実は今、やっているところで、時間がかかる」と研究途中であることを明らかにし、「最終的にはすべてのメカニズムを解明したい」と述べた。