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シャープ、プラズマクラスター技術で新型コロナ・オミクロン株の感染価99.3%減を実証 喘息などの症状緩和に役立つ可能性

2022年10月13日 発表

今回のコロンビア大学による検証

 シャープは10月13日、新型コロナウイルス・オミクロンBA.1株にプラズマクラスターイオンを15分照射することでウイルス感染価を99.3%減少させる効果が実証されたと発表した。あわせて喘息などの気道の症状緩和に役立つ可能性も示唆されたと発表した。

新型コロナウイルス・オミクロン株への効果

 新型コロナウイルスへの効果は感染症学・免疫学を専門とする米国コロンビア大学医学部教授の辻守哉氏らが検証を実施。オミクロンBA.1株の高濃度濃縮液を102Lの試験ボックス内部にエアロゾル状に噴霧した上で、プラズマクラスターイオン(イオン濃度約2万5000個/cm 3 )を照射し、空気中での浮遊ウイルスの減少効果を検証した。15分の照射では感染性を持つウイルス粒子の数を99.3%減少が確認された。

米国コロンビア大学医学部の辻守哉氏と森宗昌氏

 報道発表会ではオンラインで参加したコロンビア大の辻氏が検証方法や効果について説明した。プラズマクラスター照射の効果に「正直言ってびっくりした」と言う辻氏は「顕著な減少効果を確認できた」とし、プラズマクラスター照射したウイルスの培養結果を写真で示すなどした。辻氏はオミクロン株の特徴としてワクチンが聞きにくく感染力が強いので、取り込まれる前の対策が重要と強調した上で、エアロゾル感染対策としての応用が大いに期待されると語った。

実験の方法
感染性を持つウイルス粒子の数を99.3%減少
実験のまとめ

 シャープではこれまで、浮遊する新型コロナウイルスに対する効果では、長崎大学の研究によって基礎的効果を実証しているが、今回の実験は、以前より大きい102Lの空間を使い、ウイルスも感染力の強いオミクロン株を用いたことに違いがある。

これまでのプラズマクラスター技術が新型コロナウイルスに対する効果の実証

 今回の実験に使ったオミクロン株はBA.1株だが、辻氏は「断言はできないが、ほかの株でもウイルスに効果を示す可能性は高いと思う」とし、現在流行中の別のオミクロン株で効果がある可能性が高いことを示した。

喘息などへの効果

 一方、喘息などの効果は呼吸器学・幹細胞学を専門とするコロンビア大医学部准教授の森宗昌氏が検証し解説した。

喘息などへの効果のこれまでと今回

 鼻の中から肺の中まで呼吸の通り道を作る上皮細胞は、気道の防御に必須の役割がある。喘息患者においては、気道上皮から出る粘液分泌のバランスが崩れ、粘度の高い粘液が多く出て気道を狭めたり栓をしてしまったりするため呼吸が苦しくなることがある。

実験の方法
プラズマクラスター照射による粘液分泌の変化
実験のまとめ

 そこで、12Lの試験ボックス内に配置した人工的に培養したヒトの気道上皮細胞へイオン濃度約10万個/cm 3 のプラズマクラスターイオンを照射すると、呼吸を妨げる高粘度の粘液分泌を示す指標が抑制された。一方で、サラサラな低粘度の粘液分泌を示す指標が増加し、喘息患者で問題となる気道の粘液分泌が改善され、喘息などの気道の症状緩和に役立つ可能性があることを確認した。

 森氏は粘膜分泌に対してプラズマクラスターが作用するメカニズムについては「まだ検証中」として分からないとしながらも、今後は照射時間や照射の後の時間などを変化させて検証を進めるとしている。

今回の検証意義

森氏からシャープに問い合わせて研究がスタート、満員電車の密なところに期待

 今回、コロンビア大学の辻氏、森氏が検証をした経緯は、ニューヨークにいた森氏が現地で新型コロナウイルスの蔓延が始まったころ、マスクなど資材不足のなかで治療にあたっていた医療従事者を守りたいという考えがきっかけとなる。

 森氏は「医療従事者が生きてないと、患者は救えない」という考えのもと、医療従事者を守るための調べを進めるなかでプラズマクラスターイオンに着目。森氏のほうからシャープに問い合わせたことから研究が始まった。

 その後、感染症や免疫を専門とする辻氏が新型コロナウイルスについての研究を進め、森氏は専門の喘息などへの効果について研究を進めた。森氏は今回の結果を受けて、プラズマクラスター照射の装置を集中治療室や病院のスタッフルームに置いておきたいとし、満員電車など密なところにもプラズマクラスターイオン照射の意味意義があるとした。

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