イベントレポート

【パリモーターショー 2018】2割軽くて、2割安い!! ヴァレオの48Vプラグインハイブリッド車を、パリのコンコルド広場で一般に世界初公開

凱旋門のまわりをグルリと同乗走行

2018年10月2日~3日 プレスデー

2018年10月4日~10日 一般公開日

パリのコンコルド広場に現われたヴァレオの48Vプラグインハイブリッド車。一般向けには世界初公開となる

「パリモーターショー(MONDIAL PARIS MOTOR SHOW)」では、関連イベントなどが多数開催された。その1つが開幕前にパリ市内のコンコルド広場で行なわれたパレード。クラシックカーから未来のクルマまでが参加し、120周年という記念すべきパリモーターショーの開催を祝った。

 10月4日からメイン会場となるポルト・ド・ヴェルサイユの一般公開が始まったが、それと連動するようにコンコルド広場で行なわれたのがエコカーの試乗会。EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、HV(ハイブリッド車)が多数展示され、その一部は乗れるようになっていた。

 このエコカー展示会に、最新の48V電気自動車と、48Vプラグインハイブリッド車を持ち込んだのが、世界的にも知られるサプライヤーのヴァレオ。とくに48Vプラグインハイブリッド車は、一般向けで世界初公開となるもので、ヴァレオの担当者によると試乗車ができたばかりだという。

各部に48Vプラグインハイブリッド車であることを示す印が

 一般的なハイブリッド車、といっても何が一般的か難しいのだが、ハイブリッド先進メーカーであるトヨタ自動車のハイブリッドシステムでは高電圧が用いられている。初代プリウスでは274V、2代目プリウスでは500V、3代目プリウスでは600Vという高電圧を用いることによって高効率なシステムを築いている。

 このトヨタハイブリッドシステム、つまりTHSは素晴らしい技術なのだが、高電圧を用いるためすべてにおいて高い技術力が必要になってくる。クルマの製造はもちろん、クルマの整備、そしてその整備を行なうディーラーの高電圧整備教育など導入へのハードルは非常に高い。

 そこでヴァレオが提案しているのが48Vで、通常のバッテリー(12Vや24V)よりは高電圧だが、従来のハイブリッドシステムよりは低電圧を用いるシステム。ヴァレオはこの48Vを用いた、48V電気自動車と48Vプラグインハイブリッド車のシステムを提案しており、そのプロトタイプ車がコンコルド広場で世界で初めて一般にお披露目されたことになる。

通常のEVと変わらない、ヴァレオ48Vプラグインハイブリッド車

 このヴァレオの48Vプラグインハイブリッド車は、ゴルフの通常モデルを使用した改造車となる。48Vプラグインハイブリッド車の前輪はベース車同様にエンジンとトランスミッションで駆動し、後輪軸を改造。後輪軸にモーターが組み込まれ、それを搭載バッテリーで駆動する方式となっている。

ラゲッジルームにはE4V製のバッテリーが収まる
バッテリーの横には後輪用のモーターが見える
後輪軸に取り付けられた駆動モーター
フロントには通常のエンジンが。プラグインの普通充電はフロント中央から行なっていた
充電ケーブルの先を確認すると
通常の200Vコンセント。PCと一緒に充電されていた
ちなみに48Vプラグインハイブリッド車のルーフには太陽電池が。航続距離を数km伸ばすことができるという

 ヴァレオのルイス・アレン(Louis Allen)氏によると、搭載するバッテリーはE4V製の40kWh。モーターは15kWのもので航続距離は60km~70kmだという。これはパリの市街地を端から端まで走れる距離で、このくらいあれば普段の実用には十分とのこと。特筆すべきは充電時間で、普通充電で4時間~5時間あればよいとのこと。フランスは200Vの電源が一般に使われており、実際に現場でもサービスコンセントから、1つはクルマに、1つはPCにという状況を見ることができ、48Vプラグインハイブリッド車がPCと同じ感覚で充電されていた。

48Vプラグインハイブリッド車を担当するヴァレオのルイス・アレン(Louis Allen)氏

 今回、この48Vプラグインハイブリッド車に同乗走行することができた。コンコルド広場から凱旋門のランナバウトをくるっと回って戻ってくるコースだったが、同乗走行中1度もエンジンがかかることなくコンコルド広場に戻ってきてしまった。

 プラグインハイブリッド車の場合、モーター駆動とエンジンからの駆動をどうコントロールするかが見どころなのだが、これではただのEV(笑)。アレン氏によると、SOC(State Of Charge)で残り5%程度になるまでモーター駆動で走り続け、走行速度では70km/hまではモーター駆動とのこと。一般にパリ市内を走る限りは、バッテリーが空になる近辺まではリアのモーターでのみ走り続けることになる。

 また、その走りの感触も、とくに可もなく不可もなくというもの。逆に言えば、48Vでありながらしっかりした走りの実力を持っていることになる。

48Vプラグインハイブリッド車で凱旋門をぐるりと
凱旋門へ向かって出発!!
タコメーターが1度も動かないまま同乗走行が終了。これでは普通のEVですね。48Vでありながら普通の走りができる

 プラグインハイブリッド車の場合、先ほども書いたようにモーター駆動とエンジン駆動の駆動力合成や使い分けがポイントなのだが、この48Vプラグインハイブリッド車の場合はできるかぎりモーターでのみ走ることで、その面倒な制御をしなくてよいようなロジックになっている。もともと簡易なシステムを目指しているので、このような割り切りも商品の魅力として捉えられる。

 アレン氏によると、このシステムは高電圧のハイブリッドシステムに比べて、2割軽く、2割程度安いという。狙っている市場は、日本のように高電圧の本格的なハイブリッド車が普通に入っている市場ではなく、これからプラグインハイブリッド車が必要となってくる新興国市場やヨーロッパ市場など。それらの市場では、価格が安く、ディーラーの教育負担も小さくて済む48Vプラグインハイブリッドが最適なのだという。

編集部:谷川 潔