イベントレポート 東京オートサロン 2025
「Tune the Next」をテーマにチューニングを越えたエンジン、車両製作技術を展示するHKS
2025年1月11日 16:22
- 2025年1月10日~12日 開催
チューニングパーツメーカーであると同時に、産業、製造、運輸などの業界向けにさまざまな製品を提供しているエイチ・ケー・エス(HKS)は1月10日~12日の期間、幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催されている「東京オートサロン 2025」でチューニング部門の新たな事業を発表した。
HKSでは「Tune the Next」というテーマを掲げて大きな転換期を迎えているクルマ社会に対し、エンジンを搭載するクルマをより長く楽しむためのチューニング技術を提案している。その内容は新型車はもちろんのこと、旧型になったクルマにも最新理論のもとに開発したパーツを用意して、今あるクルマを大切に乗り続けるという環境配慮のスタイルを取っている。
HKSは東京オートサロン2024で「THE HKS(ジ・エイチ・ケー・エス)」という車両販売ビジネス企画を発表している。2024年は日産「GT-R(R35)」とトヨタ「GR86(NZ8)」の完成車を展示し、その後の販売にもつながっているとのこと。
そして2025年は日産「スカイラインGT-R(BNR34)」を展示。この車両には「Dimension(ディメンション)Zモデル」というサブネームが付けられているが、これは走りの性能向上はもちろん、未来に向けた作り込みをしていくという方向性を表すものだ。
エンジンは、2.6リッターのRB26DETTを2996ccへとボアアップし、「V-CAM(ブイカム)」と呼ぶHKS独自の可変バルブタイミングシステムを搭載。ターボはHKS製GTタービンの「GT7095_BB」。吸排気系のパーツもすべてHKS製で、この仕様のエンジン制御にはHKS製のECU「F-CON V Pro(エフコン・ブイプロ)Version3.4」を使用。そして最高出力は900PSとなっている。
エンジンのほかにも、目を引くのが大きめなエアロパーツ。フロントバンパー下部にはアップスイープ付き大型ディフューザーを装着し、リアにも大型のGTウイングを備える。これらすべて材質はドライカーボンとなっているのだが、このカーボンパーツもHKS内製であった。HKSは近年、工作機械の導入に力を入れていて、日本でも設置しているところが少ないという5軸のマシニング機械から、排出ガス測定試験の設備、マフラーの音量テスト用の試験路なども自社で用意している。そしてさらにドライカーボン製品を作るためのオートクレーブ装置も導入。これにより自社でドライカーボンパーツが製作できるようになった。
また、それに伴い空力解析用のソフトウエアも導入し、さらにクルマが入る規模の風洞実験設備を持つ企業と提携し、データだけでなく風洞を使った開発も可能となった。こうした環境は「THE HKS」の車両製作にも生かされている。ちなみに展示車はかなり大型のエアロパーツを装着しているが、これはサーキット走行を狙いとしたもの。それだけにこのスタイルのまま公道を走ることはできないが、オーダーがあれば公道走行用に作り直すことも可能だ。その際も単にサイズを小さくするだけではなく、空力的な効果をしっかりと持たせたままリサイズできるのだ。
エアロパーツについてはもう1つ特徴がある。それはリアウイングに装備されたDRS機構だ。ウイング内部に電動で作動するリンク機構を内蔵することで、メインフラップの角度を走行条件に合わせて可変できるようにした。その動作も全開、全閉だけでなく任意の角度にセットが可能。なお、DRS機構付きのリアウイングはTHE HKS車専用となっている。
次世代チューニングの展示
THE HKS車と並べて展示してあったのがRB26DETTをベースとした次世代チューニングパーツだ。このエンジンは「RB26 ADVANCE HERITAGE」という名称で2021年に開発がスタート。コロナ禍と重なっていたなどによりパーツ調達がままならない、人材がそろわないなどの障害はあったが、それでも地道に作業は行なってきたという。
この取り組みでは最高出力600PSを発生しつつ、燃費を20km/Lというエンジンにすることを目指している。そのためのキーになるのが「副室燃焼・プレチャンバ」というもの。これはスパークプラグの先端に複数の穴の開いたキャップがかぶせられていて、ここで従来のプラグを使うときとは違う、ジェット噴流のような燃焼を起こすことができ、その効果で燃焼室内の混合気をより速く燃焼できるというもの。さらにピストン側もその燃焼特性に合わせたトップ形状としていて、高圧縮比化されている。
現在のところ「RB26 ADVANCE HERITAGE」ではWOT最大熱効率比較(2000~3500rpm)で、最大熱効率が37.9%/3500rpm(CNRF CN85+を使用)を達成。ちなみに現行のHKS製ステップ2仕様のRB26DETTでは最大熱効率が25.5%/3500rpm(市販ハイオク)となので、ベース比では49%の向上となっている。
中間まとめとしては、熱効率は向上しているが熱効率向上により排気エネルギーが減少。そのため同容量の過給器ではトルクが減少するという状況にもなっている。そこで今後は対策として過給器の容量可変化などの検討を進めているそうだ。