長期レビュー

高橋敏也のトヨタ「86(ハチロク)」繁盛記

その8:ついにサスペンションユニットを「SHOWA TUNING COMFORT」に丸ごと交換!

 ハチロク絶好調! 数カ月前、我がハチロクはついに重要パーツのカスタマイズという、禁断の世界に踏み込んだ。サスペンションユニットのスプリングを、チュウハツの「CHUHATSU PLUS SPORTY」へと交換したのである。これがもう大当たり! 我がハチロクの走りは、劇的に変化した。もちろんよい方向に。ノーマルスプリングのスポーツカーらしいゴツゴツ感から角が取れ、快適さが格段にアップした。その上で路面への追従性、操舵性は向上した。さらにわずかではあるが、車体がローダウンして格好よくなった(言わないと誰も気づかないけど)。

 面白い、ここまで変わるとは思っていなかった。今までバイクのカスタマイズは積極的(それ以上かも)にやってきたが、クルマのカスタマイズは初めての経験である。面白い上に効果絶大、それならもっと楽しもうじゃないか! そんな気になったのはある意味、当然の流れかも知れない。その気になったら、すぐ始めるのが私の身上。という訳でさっそくチャレンジしたのが「サスペンションユニットの交換」である。

 えっ? 数カ月前にスプリングを交換したばかりでしょ? いやいやいや、今度はユニット丸ごと交換ですよ! ユニット丸ごと! スプリングだけじゃなくて、ダンパーも交換したんですよ! ノーマルからスプリング交換、そしてサスペンションユニット丸ごと交換。ほら、ちゃんと段階踏んでいるじゃないですか! と、言い訳しつつ本当にサスペンションユニットを丸ごと交換しました、ショーワの「SHOWA TUNING COMFORT」に。

サスペンションとスプリングを調べていたら……

 どうしてこうなった──といっても実は単純な話。以前、ノーマルスプリングをチュウハツの「CHUHATSU PLUS SPORTY」に交換した際、自分の興味を満たすため、そして原稿を書くためにあれこれ調べた。以前も書いたが、元々私はバイク乗り。そして冒頭でも書いたとおり、バイクはかなりカスタマイズするので、サスペンションに関してある程度の知識はある。

 基本的にサスペンションユニットは「スプリング」と「ダンパー」で構成されている(板バネの話とかは、ひとまず置いておいてくださいな)。例えば路上の凹凸があったとして、凸部分をタイヤで踏んだとしよう。タイヤは突き上げられ、その力はサスペンションユニットに伝わる。するとユニットのスプリングが縮んで、そのショックを吸収する。逆に凹部分にタイヤがかかると、スプリングが伸びるという具合だ。

 ところがスプリング、すなわちバネは縮むと元に戻ろうとする。それをそのままにしておくと、ピョーンと跳ねてしまうことになる。実際には車体の質量が影響する上に、スプリング自体が運動エネルギーを吸収する訳だが、まあ簡単に言ってしまうと「バネがビョンビョンしてしまう」のである。サスペンションは車体を支えているのだから、そのままだと車体までビョンビョンする。そこでダンパーが登場する。ダンパーにはオイルが内蔵されていて、伸び縮みに対して抵抗を与える。これによってスプリングの動きを抑制し、車体を安定させるのだ。

 ほかにもサスペンションユニットには、ロールとピッチの抑制という重要な役割もある。ロールは車体の左右の揺れ、ピッチは車体の前後の揺れと考えると分かりやすい。コーナーを曲がる際、車体にはG、すなわち遠心力がかかって傾く(連続したコーナーであれば揺れる)。これを抑制するもの、サスペンションの重要な役目である。

 上記のようなことを確認しつつ、あれこれ調べていて興味をひいたのが、ショーワの「SHOWA TUNING」シリーズである。私が興味を持つということはもちろん、ハチロク向けに「SPORTS」と「COMFORT」、2つのモデルが用意されている。スポーティな走りはほかに任せるとして、私のハチロクにはやっぱり「COMFORT」だろう。

「快適で、しかも応答性のいい、しなやかな走り」

 と、パンフレットには書いてある。「快適」で「しなやかな走り」とか言われて、我が通勤快速ハチロクが反応せずにおられようか! さらにスプリングのみの交換と、サスペンション丸ごとの交換では、どのように違ってくるのか気になる。というか「そのハチロク、サスを交換してあるから」などとさりげなく言ってみるのもわるくない。こうなったらもう交換するしかない! 要するに理性が物欲に負けたという、実に単純な話なのでした。

ショーワさんでお話を聞きました

 サイトを見れば製品の概要は把握できる。ネットで検索すれば、さまざまな情報が得られる。まったく便利な世の中になったものだ。しかし、もしチャンスがあるならその製品に関して、もっと突っ込んだ話を聞きたいものである。そこでダメ元、導入予定のSHOWA TUNING COMFORTに関してメーカーであるショーワに取材できないか、Car Watch編集部に頼んでみたらあっさりOKが出た。

 という訳で向かったのが埼玉県行田市にある株式会社ショーワさん。ちなみに行田市にはショーワの本社、4輪開発・研究部門、そして4輪車用ショックアブソーバ工場などがある。お話をうかがったのは営業本部の髙﨑秀樹さん、そして開発本部四輪サス開発部の河村哲範さんである。もちろん河村さんはSHOWA TUNING COMFORTの開発担当者、すなわち生みの親である。

ショーワのエントランス展示で記念撮影
ちなみにこちらはバイク用のサスペンション、いわゆるフロントフォーク。ああ、旧車Z1300のフロントも倒立にしたいなあ

 ショーワと言えばバイク乗りにとっては、絶対に外せないメーカー。最近はあまり見なくなったが、以前はフロントフォークに“SHOWA”のステッカーが貼ってあるのは珍しくなかった。すると髙﨑さんから「フロントフォークのステッカー、実は石はねとかで傷がつくのを防ぐ意味があったんですよ」という話が。なるほど……。

 それはそれとして、ハチロク用のSHOWA TUNING COMFORTである。まずはもっとも基本的な部分、SHOWA TUNING COMFORTはノーマルのサスペンションと、どのように違っているのか? 開発を担当された河村さんによれば「中身は結構違いますよ。オイル、オイルシール、構造的にもリバウンドスプリングがフロントサスに入っています」とのこと。

 まずオイルだが、これはダンパーに封入されているもので、ハチロク/BRZ用からは新開発の「NEW DAMPER OIL」が採用されている。ベースとなるオイルをゼロから見直し、微少なストロークの領域でフリクション特性を適正化、通常走行時の乗り心地を大幅に向上させたのだという(なんとなく分かると思うけど、パンフレットの受け売り)。要するに新しい優れもののダンパーオイルで、色は青い。「なぜ青なのか? もしくは配合で青くなったのか?」という質問には、「ほかのオイルと区別するためです」との返答。ちなみにほかに、赤と黄色のオイルがあるそうだ。

 興味深かったのはSHOWA TUNING COMFORTの場合、「まずスプリングを先に決めました。減衰力がまったくない状態のダンパーを用意して、それにスプリングを組み合わせて、まずスプリングのバランスを先に決めたんです」という話。ダンパーが機能しないサスペンションユニットだと、車体がどんな挙動を見せるのか? いずれにしても自分の知らない世界、それも技術的な話というのは本当に面白い。

 ちなみにハチロク用のSHOWA TUNINGシリーズでは、SPORTSとCOMFORTがあり、SPORTSのほうはMT用とAT用に製品が別れている(COMFORTは区別なし)。この理由がちょっと気になったので聞いてみたところ「基本的に狙いどころは一緒なんですが、車両の重量関係とかの部分でちょっと乗り味が出なかったんですね。最初にMT用をチューニングしたんですが、そのMT用をATに装着すると、どうもMT用のよさが出ない。なので新たにチューニングし直したんです」と河村さん。減衰力などをチューニングしているそうだ。

SHOWA TUNING COMFORTに付属するエンブレムシールをどこに貼るかを相談中。ちなみに開発の河村さんの提案で、新デザインのエンブレムシールを採用したとのこと
ここに決まりました! 河村さん、1000km走ったら貼りますね

 代表的なバイクのサスペンションメーカーであるショーワは、クルマの代表的なサスペンションメーカーでもあった。さらにクルマ関係で言えば電動/油圧パワステ、プロペラシャフト、ガススプリング、CVTポンプ、デフなどのメーカーでもある。いずれにしても私のハチロクが装着するSHOWA TUNING COMFORT、そのダンパーオイルは「青い」ということが分かった訳だ(それだけかっ!)。

 ほかにもいろいろお話をうかがったのだが、気になっていることを最後に質問してみた。というのもSHOWA TUNING COMFORTを入手するため代理店の方とお話をしたところ、「記事にされるのでしたら、ぜひ1000kmほど走ってみてください」という話があったからだ。はて、これはどういうことなのか? サスペンションにも「慣らし」のようなものが必要なのだろうか?

 いやいや、サスペンションに慣らしは必要ない。新品を装着した段階から、想定されている性能を発揮するのだが、初期変化というのはやはりあって、それが落ち着くのは1000kmぐらい走った頃。なるほど、了解した! 不肖・高橋、SHOWA TUNING COMFORTを装着して1000kmだろうが、1万kmだろうが走ってやろうじゃないか!

SHOWA TUNING COMFORTに交換!

スーパーオートバックスかしわ沼南、到着! 早速ピットへと向かう。いや、スーパーピットだ

 「アメリカかよ!」パート2。我がハチロクは千葉県柏市へとひた走る。目的地はもちろん「スーパーオートバックスかしわ沼南」である。以前、スプリングの交換をお願いしたスーパーオートバックスかしわ沼南で、今度はサスペンションユニットの交換をしてもらおうというのである。スプリング交換をやってもらった際、その技術力の高さはこの目で確認している。

 アメリカ的に広い売り場を抜けてカウンターに行き、スポーツチームマネージャーの川北さんに再び取材のお願いをする。忙しい川北さんだが、今回は少しお話する時間が持てた。「ハチロクやBRZのカスタムって、やっぱり多いですか?」という質問に対し、「多いですね~」といった他愛もない話ではあったが。

前回もお世話になったスポーツチームマネージャーの川北さんと談笑。やっぱりハチロクをいじる人は多いらしい

 そしてハチロクを、自動車工場かと思うほど広いピットへと持ち込む。スーパーオートバックスかしわ沼南には53ものピットがあるのだが、ハチロクを入れたのは前回のとなりのピット。そして作業を担当していただくメカニックの方も前回と同様、平川さん。こちらは安心して、作業の進み具合の見学に集中できる。

 SHOWA TUNING COMFORT、製品的にはスプリングとダンパー、マニュアルとエンブレムシールで構成されている。それ以外のパーツに関して、例えばバンプラバーなどはノーマルのものを流用する。そして作業の流れはジャッキアップの後、全タイヤを取り外し、フロントのサスペンションから交換を行う。

箱から取り出したばかりのSHOWA TUNING COMFORT。ダンパー、スプリングともに青系のカラーリング。ちなみにダンパーオイルも青い(ショーワ談)。見たことないけど

 もっと具体的に言うとサスペンションをユニットごと取り外して分解、バンプラバーやピストンロッドのカバーを取り外す。それらを組み込みつつSHOWA TUNING COMFORTを組み立てる。組み上がったSHOWA TUNING COMFORTを車両に戻せば作業完了という訳だ。この作業が平川さんの手によってスムーズに進み、すべての作業を終えるまで約2時間。以前のスプリング交換時と、さほど大きな違いはなかった。

「SHOWA TUNING」のロゴが眩しいダンパーユニット。純正のダンパーは黒なので多少カラフルになるが、装着してしまえば外からは見えない
こうして見るとダンパーはメタリックブルー、スプリングは明るいブルーという感じ
製品に付属するエンブレムシール。SHOWA TUNING COMFORTを入れたら、これを貼ってアピールしたい
ジャッキアップ、作業開始!
まずはタイヤを取り外し……
フロントのサスペンションユニットを取り外す。スプリングが黄色いのは、チュウハツプラスのスプリングが入っているから。ノーマルのスプリングは黒
スプリングを圧縮して取り外す。これはノーマルサスに付属するピストンロッドのカバーや、バンプラバーを流用するため
ノーマルダンパーとの比較。当たり前だが、SHOWA TUNING COMFORTのダンパーの方が、高級感あるなあ
ノーマルパーツを流用しつつ、SHOWA TUNING COMFORTを組み上げる。これでハチロクに装着できる状態となった
サスペンションユニットとして完成したSHOWA TUNING COMFORT。格好いい!
フロントに装着した状態。隠れてしまうのが、つくづく残念
リア側のダンパー比較。形状はほぼ同じでも、カラーリングで随分印象が違ってくる
リア側で装着されたSHOWA TUNING COMFORT。見えなくなるのが……以下略
フロント、リヤ、ともにSHOWA TUNING COMFORT装着完了!

 各部のチェックも終了し、平川さんにお礼を言ってからピットを後にする。走り出しは至って快調、実にスムーズな乗り味である。ショーワのパンフレットでは「しなやか」という表現を使っているが、私の印象としては「滑らか」というほうがしっくり来る。だが、そこはそれ。ハチロクはスポーツカー、力を入れて走った際のパフォーマンスが重要になって来るだろう。ここは一つ、しっかり走り込まねば!

 ちなみに帰宅時の高速道路は、同行していた編集さんがハチロクを運転した。ある程度は機敏な動き、例えばクイックなレーンチェンジなどを行ってみた結果、編集さんがボソっと「このサスいいなあ」。どういいのかを聞いてみたところ「まるで高級スポーツカーのサスみたいだ」というのだ。要するにハチロクより相当に高価なスポーツカーのサスに匹敵するというのである。

 私もそう感じられればよかったのだが、ここで悲しい事実が1つ。何度か本コーナーでも書いている通り、私はハチロク以外のスポーツカーに乗ったことがないのだ! 「高級スポーツカー」のエクスペリエンスが、私の中には存在しないのである。まあいい。そんな私でも、しっかり走り込めばなんとかなるはずだ。という訳で、SHOWA TUNING COMFORTを装着したハチロクは旅に出るのであった。

つくづく広いピットスペース。こうして見ると工場というより秘密基地か?
少しだけSHOWA TUNING COMFORTのダンパーが見える。ただしジャッキアップ時のみ
作業完了! ありがとうございました平川さん! 何かあったら、ぜひまた平川さんにお願いしたい
出撃ハチロク、SHOWA TUNING COMFORTバージョン!

走れ1000km! 目指せ伊吹山!

1000km走行を達成するため東京から伊吹山へ! 出発日は台風一過、晴れてはいるが昨晩の雨で車体が濡れている

 「まあ、1000km前後は走ってみてください」「わかりました! この不肖・高橋、1000kmだろうと1万kmだろうと、SHOWA TUNING COMFORTを装着し、走りきってみせましょう!」 多くのお調子者がそうであるように、私も言ってから後悔するタイプである。しまった、連載には締め切りがあったんだ。

 私の場合、1週間に100kmから150kmほどハチロクを走らせる。問題はSHOWA TUNING COMFORTに交換してから原稿の締め切り日まで、約4週間ほどしかないということだ。要するに普通に走っていては、締め切りまで400~600kmぐらいしか距離を稼げないのである。まあ、逆に考えれば「普通じゃない走り」をして、約1000kmを走ってしまえばいいだけの話。

 ということで緊急企画「不肖・高橋、伊吹山を目指す!」というのをやってみた。長距離ドライブをするのはいいが、できればちゃんとした目的が欲しい。漠然と観光というのでは、ちょいとばかり寂しすぎると思うのだ。あれこれ考えた挙げ句、無理矢理にぶち上げたのが「ハチロクで伊吹山頂上駐車場に期間限定で開設された『86 PIT HOUSE IBUKIYAMA』に行って、ナウいヤングの間で大人気、LONCAFEのフレンチトーストを食べよう」という企画だ。本当にこの通りの内容だから、何を説明していいやら。

 86 PIT HOUSEというのはトヨタが提供するハチロク系コンテンツで、大人の峠ドライブを提案するものだ。86 PIT HOUSE IBUKIYAMAの場合は岐阜県にある伊吹山ドライブウェイを走り抜け、その頂上駐車場にカフェ空間が用意されているというコンセプトになっている。東京・杉並区から86 PIT HOUSE IBUKIYAMAまで片道約400km、往復すれば約800km。そこに通常走行が加われば、いとも簡単に1000km走破を達成できる。

 さらにこの企画ではSHOWA TUNING COMFORTを装着した状態で、高速道路走行と峠道の走行を体験できる。まさにいいことずくめの企画と自画自賛していたら、ポニョ嫁が「わたしも行くじゃ」となったのは計算外であった。単純に観光目的かと思ったのだが、後に「この話には裏がある」ことが判明する。

 何はともあれ台風一過、晴天の東京を出発、ハチロク東名高速道路をひた走る。途中、サービスエリアで休憩を取りつつ走ったが、まあ車体が安定していること。ノーマルのハチロクと比較すれば、誰でもすぐに分かる。例えばギャップ(橋梁などの接続部)を超える時、ゴッというショックはあるが、車体の方は水平な感覚が強かったり。あるいはスピードが乗っている状況で、クイックなレーンチェンジをしても、FR車特有のリアが出る感覚がほとんどない(それぐらいのスピードということもあるけど)。

 そんなことを感じつつ東名高速を走り抜け、ハチロクは約5時間かけて伊吹山ドライブウェイ入り口に到着。全長17kmの峠道をハチロクで駆け抜けつつ、標高1377mの伊吹山頂上を目指す。さて、SHOWA TUNING COMFORT・イン・峠道である。これがまあ、実に素晴らしい。

某サービスエリアで、固い表情を浮かべているおっさん。まだ先が長いということもあり、この表情になった。Tシャツの上にシャツという軽装に注目
あと228kmでゴール! というか疲れた
到着! 伊吹山ドライブウェイの頂上駐車場。どこだ? 86 PIT HOUSE IBUKIYAMAはどこだ?
発見、86 PIT HOUSE IBUKIYAMAぁぁぁ! 目的地到着を喜ぶより何より、寒い! 私は北海道生まれだけど、寒いものは寒い!

 急カーブ、きついコーナーを抜けようとする際、クルマの車体は大きく傾く。アウト側が沈み、イン側が浮き上がる状態だ。スポーツカーの場合はいわゆる硬めのサスペンションが入っており、アウト側が踏ん張り、イン側が浮くのも抑制される。SHOWA TUNING COMFORTの場合も基本は同じなのだが、何と言えばいいのか、その抑制のクオリティがノーマルと比較して段違いなのである。

 コーナー途中で身体にはしっかりGがかかっているのに、車体の安定度が非常に高い。このためドライバーは安心して、ハチロクを走らせることに集中できる。しかもガチガチでゴツゴツとした感覚はなく、スムーズに走り抜けるのだ(水面を走るミズスマシのように……って、最近はミズスマシと言っても通じないだろうなあ)。別の言い方をすると、まるで自分の運転技術がレベルアップしたような気になれる。

 何はともあれ伊吹山ドライブウェイ、そして86 PIT HOUSE IBUKIYAMA訪問という目的は達成された。後は東京へ戻ればいいだけなのだが、ここでポニョ嫁が同行した真の目的が判明した。「御殿場にアウトレットショッピングモールがあるじゃ! そこに寄っていくじゃ!」。ああ、あなたの真意はそこにあったのですね。私と一緒にドライブしたいとか、伊吹山が見たいとか、そういったことではなかったのですね……。

おっさん、お洒落なフレンチトーストを注文するの図。周囲の皆さんの、しっかりした防寒着……
とってもお洒落なフレンチトースト。いわゆるスイーツってとこですかね
ポニョ嫁の希望でバナナの入ったものにしました。それにしても寒い! ということでハチロク車内に撤退
外気温9度! 寒いはずだ。伊吹山、標高1377m、舐めててすいませんでした
お疲れ様のハチロク。まあ、まだ帰りがあるので頑張りましょう!
伊吹山からの絶景。寒いけどその分、景色は抜群によかった。峠道も、フレンチトーストも楽しめたし

 多少引きつった笑みを浮かべつつ、御殿場のショッピングモールに寄り道して帰宅。全行程で約850kmは走ったことになる。後は日々の走りで目標だった「SHOWA TUNING COMFORTを装着して1000km走行」は達成できる。というよりこのロングドライブだけでも、SHOWA TUNING COMFORTの性能、品質は充分に堪能できたのがよかった。

 追伸、助手席のポニョ嫁はよく眠っていました。ちなみに助手席に乗る機会の多い編集さんも、SHOWA TUNING COMFORTにしてからよく眠るようになりました。それだけ快適な乗り心地ということなのでしょう。

チューンドパーツで得られるアドバンテージ

 サスペンションがノーマルな状態のハチロクは、乗り味がいかにもスポーツカーといった具合にゴツゴツしている。踏ん張りが効いた感じがある上で、路面の凹凸を素直に車体に伝えているといった印象だ。この乗り味、結構好きな人も多いのではないかと思う。ちなみに私の場合は正直、そのゴツゴツ感に驚かされた。

 一方、SHOWA TUNING COMFORTに交換した後はどうか? とにかく乗り味はスムーズ、滑るように走るのだが、路面追従性や踏ん張りといったサスペンションに求められる重要な機能はすべて向上している。ただ単にクルマを走らせるおっさん、私ですらそれらを明確に感じ取れるのだから、スポーツ走行などを楽しむ人ならその違いに驚くはずだ。

 明らかにSHOWA TUNING COMFORTのほうが、ノーマルのサスペンションより高性能である。しかし、両者には大きな違いがある。ノーマルのサスペンションは市販車のパーツという限られた予算の中で作られており、SHOWA TUNING COMFORTは市販車のパーツという枠を外れて、カスタムなパーツとして作られている。そもそも両者の着地点は異なっており、単純な比較には無理がある。

 私は乗り心地がよく、高性能なサスペンションを探していてSHOWA TUNING COMFORTに出会った。結果として支払った分の満足感は、充分に得られたと思っている。これがカスタマイズの喜びというやつだろう。普段は通勤に使っているハチロクに、カスタムパーツのサスペンションが必要か? それはまた別の話である。自己満足でいいと思うし、その上で高い性能が得られるのだから、こんなに幸せなことはない。

 さて、サスペンションはSHOWA TUNING COMFORTで決まった。足まわりということなら、次はホイールとタイヤの番である。バネ下重量の低減とグリップ力、操舵性の向上を目指して私のパーツ探しは続くのである。目指せ通勤最強ハチロク、オートマ最強ハチロク! ──いや、可能なら近いうちにサーキットで体験走行ぐらいしたいなあ。

某日、取材で富士スピードウェイに行った際、ついにSHOWA TUNINGのエンブレムシールを貼りました。ショーワの河村さんと2人で決めた場所に

高橋敏也

デザイナー、コピーライターを経て、パソコン関連のライターとして独立。SF小説なども上梓している。ライター歴は20年を超えるが、最近10年は真面目なレビュー記事というより、パソコンを面白おかしく改造する記事などを書いている。若い頃はオートバイをこよなく愛していたが、体力の衰えと共にクルマへの興味を持つ。このため自動車免許を取得したのは1998年。現在、クルマはトヨタのハチロク、オートバイはカワサキのNinja 1000とZ1300を所有、都内を縦横無尽に走っている。インプレスジャパン、DOS/V POWER REPORT誌に「高橋敏也の改造バカ一台」を連載中。ほかにImpress Watchでインターネット動画「パーツパラダイス」を配信中。

Photo:安田 剛