ニュース

【SUPER GT 第3戦オートポリス】NSX-GTの15kg軽量化について「お客さまが喜んでいただけるにレースに」とGTA代表取締役 坂東正明氏

SUPER GTを運営するGTAの定例会見より

2017年5月21日 実施

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GT第3戦「2017 AUTOBACS SUPER GT Round 3 SUPER GT in KYUSHU 300km」が5月20日~21日の2日間にわたって、大分県日田市のオートポリスにおいて開催されている。決勝レースは21日14時よりスタートの予定だが、それに先立ち午前中にはピットウォーク、SUPER GTを運営するGTアソシエイション(以下、GTA) 代表取締役 坂東正明氏による記者会見が実施された。

 坂東氏は、このレースからGT500のホンダ NSX-GTに対するミッドシップハンデを従来の29kgから15kg削減して14kgにしたことについて、「ここ2年ホンダは勝っておらず、お客さまにとってそれでいいのかという議論があった、GTAが決めた」と述べ、拮抗した争いを実現するためにGTAが決断したことであることを明らかにした。その一方で、FRでやるのが本来の規定であり、暗にホンダに対してFRの車両に早期に変更してほしいと促した。

2年間勝っていないホンダ、拮抗した争いを実現するために15kgの削減をGTAが決断

──坂東代表より冒頭の挨拶を。

坂東氏:昨年開催できなかった分、今年は天候にも恵まれていい環境でできることを喜んでいる。昨年の熊本地震により、ここが被災して、その後見に来たが、周辺の環境や地元の皆様への影響も含めて難しいと苦渋の決断をした。

 今年も何度か足を運んで、本当にこの環境でやっていいか、興行を打っていいのかを悩みながら開催することにした。現行の状態でイベントをやることが地元の皆さまにどういう影響を与えるのかを常に配慮しなながら、1日も早く復興できるように、またSUPER GTに足を運んでもらってよかったと思えるようなレースをみんなにしてほしいと金曜日にチームにもお願いしている。

 熊本の震災のときもそうだったが、シリーズの1つとしてでなく、地域密接型のレースにしていきたい。地域の幹線道路や一般の生活道路を使ってこのサーキットにアクセスしていただくことになるので、その中で地域の皆さまに迷惑をかけないように、チームにも早めにサーキット入りしてもらったりと工夫している。報道関係の皆さまにも、そのあたりの視点でぜひ取材をお願いしたい。

──GT500のホンダNSXに対して救済とも思える、15kgのミッドシップハンデの削減があったが?

坂東氏:今、復興という観点での取材をお願いしたいという話しをしたばっかりで、最初にその質問とはご理解いただけていないようだが……(笑)。

 NSXはNSX Conceptとして参戦している時代からミッドシップとして参戦している。このため、クラス1としての参戦ではなく、レクサス(トヨタ)、日産の了承の元でJAF-GTとして参戦するという形になっている。これは、生産車両とのつながりということでホンダの前社長である伊東氏からもお願いされて、ミッドシップ、ハイブリッドという形でその分ハンデウェイトを搭載しての参戦として始まっている。その中で、昨年バッテリーの問題からハイブリッドを降ろすことになり、単にミッドシップになった。我々としてはFRにした方がいいのではないかという話しはしたが、ミッドシップでということで続いてきた。

 当初はハイブリッドとミッドシップのトータルで29kgという重量を、3メーカーも同意して決定した。というのも、基本的にはモノコックは共通部品を使うのだが、FRが基本になっているのでそれをミッドシップにするとタイヤハウスやロールゲージなどを作り直したりしなければいけないし、アクセルペダルもおけないということで、ドライバーもややセンターよりに乗る形になる。これに対する考えは今のところも変わってはいない。

 ただ、ホンダに関しては2年間勝利がなっったり、その結果拮抗した争いになっていないなどを総合的に考えて、お客さまにとって面白いと感じられる措置が必要と考えて、15kgの削減を決めた。

──なぜ15kgなのか?

坂東氏:性能調整委員会で、話し合い、有識者会議で話し合い、GTAが決めた。

──それ以外の車両にもそういう性能調整を行う可能性があるのだろうか?

坂東氏:今のところない。

──こういう措置になったのはホンダからのリクエストがあったのか?

坂東氏:ホンダからのリクエストは一昨年からあった。だが、今年から規定が変わっているので、去年までの結果を見て決めるのはおかしいだろうということもあり、テクニカルコースの岡山、高速コースの富士の結果を見てからと前から決めていた。

──FIA-GT3のBOPの見直しがあったが、JAF-GTに関してはなかったが?

坂東氏:FIAの方はSROで決めており、サーキットがコースの特性によってABCに別れており、それに合わせたもの。ヨーロッパの方ではタイヤはピレリのワンメイクで、こちらは3メーカーの競争でそれに配慮して、最終的にはうちの性能調整委員会が判断して決めている。

 JAF-GTの方も性能調整のウィンドウを作れればよいが、チームによっては毎レースしっかり開発しているところもあり性能は変わり続けており難しい。ただ、レースによってJAF-GTが有利とか、その逆とかもあるし、得意不得意はあっていい。SROともよく協議しながらやっていきたい。

──タイから参加しているチームがあるが、今後そうした国外のチームは増やすつもりか?

坂東氏:タイから参加しているチームに関しては、今年から参戦でいきなりここに来てこのレベルで戦うというのは大変で、やっとの想いで参戦している。今後東南アジア各国でスーパーシリーズを立ち上げて、そこに参戦したチームにレベルを上げてもらって本シリーズの方に参加して欲しいという想いがあり、その意味ではウェルカムだ。今後もヨーロッパメーカーのワークスとか、日本のワイルドカードとかではない、外国からの参加は歓迎したい。

──それは、今後も参加したいチームがあるということ?

坂東氏:中国などから、FIA-GT3を買って出たいというお話を何チームか頂いている。

──前回の富士戦では、レース後にDTMとの話し合いに行くという話しだったが、その状況について教えて欲しい。

坂東氏:富士のレース後直ぐにホッケンハイムに飛んで、土日にDTMの開幕戦に行ってきた。金曜日と日曜日に、ゲルハルト・ベルガー氏(筆者注:元F1ドライバーで、DTMの主催者であるITRの会長に今年から就任した)と会談してきた。向こうも新しく就任したばかりなので、基本的な合意事項の確認をしてきた。多少の考え方の違いはあるが、今後6週間以内に基本合意を取りたい。

 シャシーの共通パーツに関しては、6メーカー(筆者注:日本のGT500に参戦している3メーカーとDTMに参戦している3マーカー)で合意しており、エンジンのあり方に関しては、日本側は14年からやってきてすでにアップデートしている状態だが、向こうはまだ取れていない。6週間以内にそこを詰めて、ファイナルレース(筆者注:SUPER GT/GT500とDTMの車両が走るレース)につなげていきたい。

 ホッケンハイムで見てきたところで、フロントアップライトなどはすでに全車共通になっており、今後もそれを進めて空力などに関してもイコールコンディションを実現していきたい。

──それは文章で確認するということか?そのために再度向こうに行くこともあるのか?

坂東氏:FIA会長のジャン・トッド氏が6月までに出してほしいということだったので。ベルガー氏がこちらに来るという可能性もある。

──鍵は2リッターターボエンジンだと思うが、向こうでのその進捗はどうだったのか?

坂東氏:言っちゃいけないと言われていたけど、アウディに行ってみて蓋をあけてみたら隅っこに置いてあった気がする……。

――みたような気がしただけですね……?

坂東氏:……(無言で肯く)。

──前回の富士大会のときに、復興の活力になりたいと言ってましたが、開催に向けて大変だったところは? また菅生での復興に向けての活動は?

坂東氏:金曜日には日田市の市長とお会いし、今日は大分の副知事にもご来場いただく。このサーキットは大分県にあるので、今後は地元の自治体も巻き込んでの環境作りが大事だと考えている。富士でもやっているサーキット内でのキャンプや周辺の温泉の活用とか、地元と協力してやれることはたくさんあると考えている。

 実は今日、日田市のお祭りがあり、サーキットから帰るときのお客さまの誘導なども大事だ。我々としては、この後にニュルブルクリンク24時間レースもあり、その後はル・マン24時間レースがあるため、日付はここにするしかないという事情もあるが、地元ともよく話し合ってそれが重ならないようにするなどもしないといけないとは思っている。

 このサーキットの復旧状況に関してだが、VIPラウンジが震災で被災して、建物から配線がぶら下がったままになったりとか、課題を抱えたままになっている。元々このサーキットは沢を埋めたてて、その上にサーキットを建設しており、その上にあった建物なりが段差になってしまって、使えない施設がでてしまっている。サーキットだけでそこにコストをかけてというのは難しいので、日田市でもイベントに使うなどしてうまく対応できればと考えている。

 (7月22日~23日開催の)菅生に関してはいつものようにやっていきたい。復興に関してはいつまでという区切りはなかなか難しいのだが、地元の方にとってはずっと復興だから、継続的に続けていきたい。

──今でもミッドシップには29kgのハンデという概念は変わらないということか? それが変動する可能性はあるか?

坂東氏:ある、ある……(苦笑しながら)。この話しは非常に難しい。そもそも、技術革新したいという想いがあるということなら、早くFRにしろという議論もある。同じ規則の中で戦うというのが今のルールなので、販売やマーケティング上の都合でハイブリッド+ミッドシップにしたいという中で、29kgという重量は決まった。その意味では規制に見合うFRという環境を早く作っていきたい。速くなってきたら重量をまた変えるという話しになると、個別性能調整になってしまうので……。

──昨年ぐらいからホンダから重量の見直しをという話しがだったということだが、ホンダからのリクエストとしては、どんな理由で減らしてほしいという話しだったのか?

坂東氏:元々はミッドシップは有利だからハンデをというのが基本的な考え方。だが、今考えれば過去2年間勝っていない、そこをどのように見せるかという意味でお願いがあった。

──過去にも性能調整はあったが、今回GT500に性能調整がシンプルに入ったのは初めてのような気がするが……。

坂東氏:前にもそんなことしたか? ……基本的にはなかったと思う。今の規定の中で、プロモーションとして決められた。その15kg削減が妥当か、そうではないかに関しては誰もが不満を持っている。

 ホンダさんもそうだろうし、レクサス、日産も不満だろう。また、性能調整委員会にしても不満がある。その中で昨日の結果ではホンダがとても速く走っていて……こんなに速く走らなくてもいいのになとは感じている(苦笑)。

 ただ、それをお客さまがどう判断するか、それで面白いレースになって満足してもらえるなら我々にとってはそれが救いとなる。レースがどうなるか、お客さまが喜んでいただけるレースになればそれでいいと思っている。

──JAFへのカレンダーの申請が6月に行なわれるが、来年のスケジュール、鈴鹿のSUPER GTレースの見通しは?

坂東氏:鈴鹿は鈴鹿でやるのでは?(笑)。

 鈴鹿の10時間レースの話についてはまだ結論がでていない。8月の末にやることだけが決まっている。今のGTの予定としては鈴鹿で(別途SUPER GTを)やるためにはル・マン24時間レースの翌週しかない。我々のレースを梅雨を当てはめるのかという話しになる。

また、10月のブリーラムの話しもまだついていない。Moto GPとタイ側の話しも済んでおらず、そのあたりのシャッフルはやらないといけない。JAFへのカレンダー申請は規則だって言ってるけど、6月はJAFのルールなので、F1も10月ぐらいにならないと決まらないのであまり意味がないのではないのか……。

──最後に坂東代表から……。

坂東氏:ここにいるおいでの報道の皆さんが15kgにこだわっているのか、過敏に反応しているのも理解した(笑)。こちらからのお願いとしては、正確な情報を伝えてほしい。いろんな意味合いもあるので、いろいろな意見があって、それから先を見据えて決めてきた。

 また、ここでレースをやるのは2年ぶりで、お客あまにも続々と来て頂いている状況で、復興に役立つようにみんなで努力してイベントを作り上げていくので、お客様にはぜひ楽しんでいただきたい。