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【SUPER GT 第3戦オートポリス】大クラッシュ、同士打ち。GT500クラスは36号車 au TOM'S LC500が優勝

2年ぶりのオートポリス戦はドラマチックなレース展開

2017年5月21日 開催

激戦を制した36号車 au TOM'S LC500(中嶋 一貴/ジェームス・ロシター組、BS)。マシン各部に激戦の証が残る

 SUPER GT第3戦となる「2017 AUTOBACS SUPER GT Round 3 SUPER GT in KYUSHU 300km」が5月20日~21日の2日間にわたって、大分県日田市のオートポリスサーキットにおいて開催された。

 21日の14時からは決勝レースが行なわれ、GT500は36号車 au TOM'S LC500(中嶋 一貴/ジェームス・ロシター組、BS)がレクサス同士の接触という衝撃の展開を乗り越えて優勝した。

序盤から8号車が大クラッシュでセーフティカー、36号車が怒濤の追い上げでトップグループに

 2年振りのオートポリス開催は、地元大分県警のパトカーに先導されたパレードラップから静かに始まった。フォーメーションラップからスタートが切られると、各車とも予選の順位どおりに静かにスタートしていった。ここから始まったレースは、後の展開を思えば当初は落ち着いたレースだった。前日の20日に行なわれた予選でポールポジションを獲得した100号車 RAYBRIG NSX-GT (山本尚貴/伊沢拓也組、BS)が、瞬く間に2位からスタートした46号車 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山哲/千代勝正組、MI)、3位の1号車 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/平手 晃平組、BS)以下に6秒差をつけて序盤のレースを支配した。

大分県警が先導するため、グリッドの前列に着任
最前列は白バイを配置
開会の挨拶を行なう株式会社オートポリス 代表取締役社長 寺西猛氏
同じく挨拶を行なう自由民主党 衆議院議員 衛藤征士郎氏
大分県副知事 二日市具正氏はおんせん県をアピール
挨拶やグリッドウォークをサポート
久住高原 くたみ太鼓の演奏も。近年のSUPER GTは地元密着で開催されている
パレードラップ開始5分前に、桜伊織氏による国歌独唱
14時にパレードラップ開始
ポールポジションの100号車が序盤を支配した

 ところが、5周目にファイナルコーナーの手前で、ウォームアップ中に車両がストップしてしまいピットスタートとなってしまっていた8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/小林崇志組、BS)が単独スピン、そこにGT300の31号車 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/久保凜太郎、BS)が突っ込み、さらに18号車 UPGARAGE BANDOH 86(中山友貴/川端伸太朗、YH)が巻き込まれて接触という大クラッシュが発生。いずれのドライバーも無事で怪我などはなかったが、リタイヤに追い込まれた。レースはこれによりセーフティカーが導入されることになった。

8号車 ARTA NSX-GTのスピンによりセーフティカーが導入された

 これで最も損をしたのが、2位に6秒の差をつけてレースをぶっちぎりかけていた100号車 RAYBRIG NSX-GT。逆に最も得をしたのは昨日の予選でクラッシュしてしまったため、ピットからのスタートとなっていた17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/小暮卓史組、BS)。GT300の後ろからスタートなっていたため、大きく遅れていたが、これによりトップから10秒程度の遅れになるまで挽回することができた。

セーフティカーの導入で損をした100号車 RAYBRIG NSX-GT
怒濤の快進撃を開始した17号車 KEIHIN NSX-GT

 14周目にセーフティカーはピットに入り、レース再開。レース再開後に大暴れしたのは、昨日の予選2回目(Q2)でスピンアウトしてしまい7位という不本意な順位からスタートすることになった36号車 au TOM'S LC500(中嶋一貴/ジェームス・ロシター組、BS)。ジェームス・ロシター選手が操る36号車は前を行く6号車 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ組、BS)がオーバテイクし、さらに37号車 KeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ組、BS)をオーバテイクするという、キレキレの走りを披露した。ノリにノッてるロシター選手は、さらにさらに5位を行く16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/中嶋大祐組、YH)も追い抜き、瞬く間に4位に上がる。これにより、前を行くトップの100号車、2位の46号車、3位の1号車 DENSO KOBELCO SARD LC500を追いかけてトップ争いに加わる展開となった。

 激しい争いだったのはトップ4台(100号車、46号車、1号車、36号車)だけでなく、6位の37号車 KeePer TOM'S LC500、6号車 WAKO'S 4CR LC500、38号車 ZENT CERUMO LC500(立川 祐路/石浦 宏明組、BS)という、前戦までのポイントランキングでトップ3となっていた三台の争いも激しかった。いずれもハンデウエイトが50kgを超えているこの3台は、このレースから50kg以上のハンデを燃料リストリクターのハンデに置き換える措置を受けており、ストレートでは厳しい状況。それでも、シリーズを考えると、このレースで上位でゴールすることは大きな意味があるだけに、いずれも譲れない状況。そうした中で、周回遅れをうまく使った38号車が、37号車と6号車をまとめてオーバテイクして6位に上がったが、その数周後に周回遅れと接触し、大きく順位を落とす結果となってしまった。

ピットスタートから始まった17号車のレースはセーフティカー導入を利用して表彰台圏内へ奇蹟の追い上げへ

 レースが大きく動いたのは30周前後から始まったピットストップだった。34周目に、上位4台で早目にピットインしたのは、トップを走っていた100号車 RAYBRIG NSX-GTと、36号車 au TOM'S LC500に抜かれて4位に後退していた1号車 DENSO KOBELCO SARD LC500が同時に実施。ところが、後から入ったはずの1号車 DENSO KOBELCO SARD LC500が先にピットアウトし、100号車はトップから転落する展開に。

 これでトップに立ったのは36号車 au TOM'S LC500だが、もちろん同じようにピットインする必要がある。そのロシター選手がピットインしたのは翌35周目。中嶋一貴選手にドライバー交代した36号車がピットアウトしてみると、平手晃平選手が操る1号車 DENSO KOBELCO SARD LC500がぴったりと真後ろにつける展開に。タイヤが温まっていない36号車は、1号車から猛攻を受けることになったが、なんとかしのぎきり、タイヤ交換をした中でのトップ(つまり実質的なトップ)に踊りでることになった。

 41周目に最後に23号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組、MI)がピットストップを終えると、順位は36号車、1号車、100号車、46号車、17号車、6号車、23号車となっていた。そう、この時点で最も驚かされたのは17号車 KEIHIN NSX-GTの急激な追い上げだ。

 17号車は昨日の予選で激しく車両をクラッシュしており、メカニックが夜遅く(実際には夜中を超えた3時までだったそうだ)まで残って作業を続け、なんとか修復なって、今日のレースではピットスタート。大きなハンデだったのだが、それが序盤にセーフティカーがでたことで、文字どおりチャラになって、“奇蹟の追い上げ”が可能になったのだ。

 ほかのチームよりも早めにピットに入る決断も上手くいって塚越広大選手が急激に追い上げ、この時点で5位まで上がってきたのだ。さらに、17号車の快進撃は続き、4位を走っていた46号車 S Road CRAFTSPORTS GT-Rを45周目にオーバテイク、これで前を行くのは同じホンダ勢の100号車 RAYBRIG NSX-GT。100号車は後半スティントではまったくタイムが上がらなくなり、防戦するのが精一杯な状況となっていた。その後はその100号車に、17号車、46号車を抜いて4位に上がった6号車 WAKO'S 4CR LC500、46号車、23号車 MOTUL AUTECH GT-R、37号車 KeePer TOM'S LC500まで2秒以内に6台が数珠つなぎにつながる展開となってしまったのだ。

 その6台から最初に脱落したのは、6号車 WAKO'S 4CR LC500。前を行く17号車をオーバテイクしようとして接触してしまう。17号車は空力パーツが破損するなどのダメージはあったが、そのまま走り続けて100号車を追いかけ続ける展開になったのに対して、6号車はタイヤにダメージがあり大幅にタイムダウン。最終的にピットに入ってそのままレースを終えることになった(2周遅れで完走扱い)。ランキング2位だった6号車にとっては痛い失点となってしまいそうだ。

レース終盤に1号車と36号車がレクサス同士討ち、生き残った36号車が波乱のレースを制する

 レースはこれで決着かと思った終盤、さらに大きなドラマが待っていた。50周目に、前を走る周回遅れに詰まったトップの36号車 au TOM'S LC500を、1号車 DENSO KOBELCO SARD LC500がオーバテイクしようとする。一度は成功したかに見えたが、両車は併走したまま次のコーナーへ向かっていったが、1号車を操る平手選手は、36号車の中嶋選手にスペースを残さずコーナーに入っていった結果、イン側の縁石にはじかれた中嶋選手が1号車に突っ込む形となり、1号車はたまらずスピン、そこに運わるく後ろから来ていたGT300車両が突っ込んで、1号車はコースアウトしてバリアに突っ込むことに。結果、、リタイヤとなってしまった。

 この接触は一度は審議になったが、結局その後も36号車にはペナルティがでることなどもなく、レースの審査委員会もレーシングインシデントと判断したようだ。

36号車 au TOM'S LC500と1号車 DENSO KOBELCO SARD LC500の激しいトップ争い
36号車 au TOM'S LC500と1号車 DENSO KOBELCO SARD LC500のトップ争いは、思わぬ幕切れとなった

 その2周後の52周目には、1号車のリタイヤによって2位に上がっていた100号車 RAYBRIG NSX-GTを、17号車 KEIHIN NSX-GTが1コーナー、2コーナーを併走で回るという手に汗を握る展開で豪快にオーバテイク。ピットからスタートした17号車はなんと2位に上がってきたのだ。逆に抜かれた100号車は17号車にどんどん離されていく展開で、4位に上がっていた46号車 S Road CRAFTSPORTS GT-Rに激しく追い上げられる。レースの終盤は、この表彰台の一角を賭けた100号車と46号車の争いが焦点となった。残り数周の時点で、一度46号車が100号車をオーバテイクした…かに見えたのだが、その抜いた2コーナーでは黄旗がでており、追い越しはできない区間かどうかギリギリのところだったため、次のコーナーで、46号車は順位を100号車に戻すことになってしまった。

 イベントフルなレースもようやくこれでチェッカー。最後は1号車との接触のダメージをだましだまし走った36号車 au TOM'S LC500が優勝し、2位はピットスタートから奇蹟の追い上げを見せた17号車 KEIHIN NSX-GT、3位はポールからスタートした100号車 RAYBRIG NSX-GT。4位は46号車 S Road CRAFTSPORTS GT-R、5位は23号車 MOTUL AUTECH GT-Rとなった。

2位まで追い上げた17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/小暮卓史組、BS)
ポールスタートだが3位となった100号車 RAYBRIG NSX-GT (山本尚貴/伊沢拓也組、BS)
GT500クラス表彰台
GT500 レース結果(正式版)
順位号車マシンドライバータイヤハンデ周回数タイム
136au TOM'S LC500中嶋一貴/ジェームス・ロシターBS24651:59'56.800
217KEIHIN NSX-GT塚越広大/小暮卓史BS6652:00'23.392
3100RAYBRIG NSX-GT山本尚貴/伊沢拓也BS10652:00'23.556
446S Road CRAFTSPORTS GT-R本山哲/千代勝正MI-652:00'23.938
523MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリMI24652:00'24.579
637KeePer TOM'S LC500平川亮/ニック・キャシディBS62652:00'25.199
712カルソニック IMPUL GT-R安田裕信/ヤン・マーデンボローBS6652:00'37.235
819WedsSport ADVAN LC500関口雄飛/国本雄資YH12652:00'39.095
924フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラYH2652:01'03.994
1038ZENT CERUMO LC500立川祐路/石浦宏明BS58652:01'15.378
1116MOTUL MUGEN NSX-GT武藤英紀/中嶋大祐YH4642:00'10.157
1264Epson Modulo NSX-GTベルトラン・バゲット/松浦孝亮DL-642:01'14.030
136WAKO'S 4CR LC500大嶋和也/アンドレア・カルダレッリBS60621:55'41.825
141DENSO KOBELCO SARD LC500ヘイキ・コバライネン/平手晃平BS30501:34'29.962
158ARTA NSX-GT野尻智紀/小林崇志BS636'04.825

※9位でゴールした38号車には同一レースでの白黒旗2回提示による35秒加算のペナルティが科されたため、9位から10位に後退した