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工学院大学、「2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」に参戦する新車両「Wing」公開

チームの応援大使に女優の足立梨花さん就任

2017年6月29日 公開

「工学院大学ソーラーチーム」が公開した新車両「Wing」

 工学院大学は6月29日、学生によるプロジェクト「工学院大学ソーラーチーム」が10月に開催される世界最大級のソーラーカーレース「2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」に参戦することを発表。このレースに参戦する新車両「Wing」を新宿キャンパスで公開した。

工学院大学の4号機となるWing
新車両「Wing」

・単胴型、1人乗り
・ボディサイズ:4990×1050×1070mm(全長×全幅×全高)
・4輪、4WS
・前輪:マルチリンク&プルロッドサスペンション
・後輪:マルチリンク&リジッドサスペンション
・モーター:アモルファスと平角線を使用したホイールインモーター(オートクルージング機能搭載)
・ソーラーパネル(羽部分):3D曲面太陽電池、シリコン太陽電池4m2搭載

 工学院大学の学生が取り組む「工学院大学ソーラーチーム」は、2009年に8名の学生によってスタートした学生プロジェクトの1つ。2011年の国内大会で準優勝し、2013年には世界大会に初参戦。2015年は世界大会準優勝となり、2016年の国内大会ではチーム初となる女性ドライバーが誕生して、大会新記録を樹立し総合優勝を果たした。

 この成果が評価され、2017年に“大学のフラグシップ”に選定されて「総合研究所ソーラービークル研究センター」を設立。多数の教員陳が学部・学科の枠を越えて技術支援を展開。産学連携を目指した研究体制の強化に取り組んでいる。

「工学院大学ソーラーチーム」は、車両をメインに扱う技術部、サポート企業との調整や広報を担う運営部、会計全般を管理する財務部に分類され、チームメンバーの学生がその役割をそれぞれ担当している。さまざまな学部・学科で構成される部員は、現在306名。“50年後の未来を考えた地球の持続的利用”を理念に、車両の開発、設計、製作、レースでの走行など、全てが学生主体で行なわれている。

2009年から始まった学生プロジェクト「工学院大学ソーラーチーム」。2016年にはチーム初の女性ドライバーが国内大会に参加し、チームは大会新記録を樹立して総合優勝を果たした
「工学院大学ソーラーチーム」は国内最大のソーラーカーチームで、2017年には大学のフラグシップに選定されて「総合研究所ソーラービークル研究センター」が設立された
学内では22名の教職員が学部・学科の枠を越えてアドバイザーとして技術支援を展開。産学連携を目指した研究体制の強化に取り組んでいる
10月8日にスタートする「2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」は、オーストラリア北部の都市 ダーウィンをスタート。南部の都市であるアデレードに設けられたゴールに向かい、太陽の光をエネルギーとして公道約3000kmを縦断するソーラーカーレース
工学院大学ソーラーチームのWingは、スピードのみを競う冠クラスの「チャレンジャークラス」にエントリーする
学生キャプテンの中川卓郎さん(工学院大学 大学院修士課程 機械工学専攻2年)

 今回、お披露目となったソーラーカーは、10月にオーストラリアで開催される「2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」に参戦するため製作された新車両で、太陽電池が取り付けられたソーラーパネルの特徴的なフォルムから「Wing」と名づけられた。今回はより速度を重視したデザインの車両となっており、オーストラリア大陸を北から南に向かって約3000kmの道のりを、太陽の光をエネルギーとして縦断する過酷なソーラーカーレースに挑む。

 大会のレギュレーションが今回から変更となり、太陽電池面積は縮小(6m2→4m2)され、逆に車両の寸法制限は大型化(全長4.5m×全幅1.8m→全長5.0m×全幅2.2m)となった。この規定変更でさまざまなデザインの車両設計が可能となり、工学院大学ソーラーチームが参加するチャレンジクラスでこれまで主流だった双胴船型(カタマラン)から、新しいデザインに変更した車両が登場することが予想され、チームの新車両であるWingは、学生自らが開発・設計した多くのアイデアを単胴型デザインの車両に取り入れている。

中川さんからチームの歴史と活動内容、これまでの戦績などが報告された。新車両のお披露目は、チームメンバーの学生によってアンベール
「2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」に参戦するため製作されたWingは、太陽電池を取り付けたソーラーパネルが特徴的な1人乗りの単胴型デザイン。より速度を重視している
ソーラーパネル(羽部分)には、3D曲面太陽電池とシリコン太陽電池をレギュレーション限界の4m2まで搭載
装着されるタイヤはブリヂストンが開発したECOPIA with ologic。タイヤサイズをこれまでになかった狭幅・大径化することで、低燃費と安全性を高次元で両立したソーラーカー専用の「ologic」タイヤ
単胴型ボディ後方のクリアカバー内にナンバープレートが配置される
空力の効率化や車両重量を低減するため、最小限にまで抑えられたコクピットスペース。スピードメータや計器などは現時点では装備されておらず、どのような形で搭載するかも公表されなかった。Wi-Fi接続する液晶画面でメーター表記をするタブレットのようなものが搭載されるのか?
「工学院大学ソーラーチーム」の応援大使に就任した足立梨花さん
Wingについて「かわいらしいフォルムなんだけど、なんか速そう!」と語る足立さん

 また、新車両Wingのお披露目と同時に、工学院大学ソーラーチームの応援大使に足立梨花さんが就任。チームとともにレースを応援するほか、ソーラーカーの周知に協力していく。

 応援大使に就任した足立さんは「世界大会でゴールを目指すみなさんを応援したい。ソーラーカーをもっと広めていきたいなと思いました」と応援大使就任を喜び、「かわいらしいフォルムなんだけど、なんか速そう!っていう印象があります。しかも、太陽の光だけで走ると思うと、凄いなぁと思いますね」と、Wingに対する印象をコメントした。

七夕も近いことから笹飾りを披露するシーンも
工学院大学 工学部 機械システム工学科 准教授でチーム監督の濱根洋人氏(右)

 工学院大学 工学部 機械システム工学科 准教授でチーム監督を務める濱根洋人氏は、“個人的な趣味で応援大使就任を依頼した”という足立さんに「(足立さんは)明るくて清楚。『勝利の女神』がチームに絶対必要、次の世界、未来を考えている子供たちにもっともっとソーラーカーを広めたい。そのためには足立さんの力がどうしても必要だということでお願いしました」と語った。

2016年の国内大会からチーム初の女性ドライバーとして活躍している石川はるかさんは、現在工学部 機械工学科3年生。七夕の短冊に書いた願いごとは「単位がほしい……」。10月の「2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」にもドライバーとして参加するが、レース期間の1カ月ほどをオーストラリアに滞在予定で、講義への出席率が厳しくなるという状況は無視できない現実のようだ
7月の七夕も間近ということでチームメンバーが短冊を作成。応援大使の足立梨花さんも「優勝できますように!!」とチームに向けた願いを短冊に綴った
工学院大学 学長 佐藤光史氏

 工学院大学 学長の佐藤光史氏は「ソーラーカーレースへのひたむきで知性あふれる本学学生たちの挑戦。学生の無限の可能性を開花させることを教育理念としております工学院大学は、このような挑戦する学生たちに負けないようにイノベーションを目指す所存でございます」と学生たちを応援。また、協賛・協力団体への感謝の気持ちを述べた。

工学院大学 名誉博士、帝人グループ名誉フェロー 根岸英一氏

 2010年のノーベル化学賞受賞者で、現在は米国 パデュー大学 特別教授、工学院大学 名誉博士、帝人グループ名誉フェローでもある根岸英一氏から「ソーラーチームという斬新な活動に多くのみなさんが参加されていると聞きまして、非常にすばらしいことだと思っております。みなさまのご健康と、努力を続けられることを心から応援しております」との応援メッセージがビデオでソーラーチームに寄せられた。

帝人株式会社 帝人グループ執行役員 内川哲茂氏

 チームのサポート企業を代表して挨拶した、帝人 帝人グループ執行役員 内川哲茂氏は「みなさまと同様、私どもも1人の技術者といたしまして、新しい車体を間近に見ること、それからここに盛り込まれております多くの技術をみなさまからうかがうことを楽しみにやって参りました。工学院のソーラーカーは環境への配慮が存分になされた、非常に地球に優しいレースカーと聞いております」。

「それに加え、砂漠という非常に過酷な環境で約1週間に渡るレースを耐え抜くために、多くの改善やアイデアが詰め込まれていると聞いております。このWingは、学生のみなさんと監督、それと私ども協力企業・団体の技術の粋を集めた“テクノロジーショーケース”と言っても過言ではないかと考えております」。

「多くの企業の連携体制で1つのソーラーカーを作り上げるというプロジェクトに携わることができたことは、企業としても、また団体としても大変光栄であると考えております。レースではぜひ優勝を勝ち取っていただきたいと思います」と、チームに対して応援の言葉を贈った。