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【アウディ サミット 2017】NVIDIA製SoCを搭載した「zFAS」でレベル3自動運転を実現した新型アウディ「A8」

NVIDIA オートモーティブ部門 シニアダイレクター ダニー・シャピーロ氏もイベント参加

2017年7月11日 発表

レベル3自動運転を市販車として世界で初めて実現する新型アウディ「A8」

 アウディは7月11日、スペイン バルセロナにおいて「アウディ サミット 2017」を開催。このアウディ サミットにおいて、市販車として世界で初めてレベル3自動運転を実現する新型アウディ「A8」を世界初公開した。

 このレベル3自動運転は、高速道路上かつ60km/h以下のときという条件はつくものの、運転主体が人であるため“安全運転支援装置”との言い方もなされてきたレベル2自動運転から一段階上のレベル3自動運転を実現。機械主体の運転というゾーンに踏み込んだものだ。このレベル3自動運転に関しては、各国の法律の整備とともにステップバイステップでONになる機能としているものの、レベル3自動運転を可能とする能力を備えたクルマとなる。

自動運転レベルの定義。下段が最新のもの。レベル0~レベル5の6段となり、世界的にもこの6段階で定義されている

 新型アウディA8では、4つのカメラによるサラウンドビュー、1つのフロントカメラ、1つのドライバーモニターカメラと、6つのカメラを装備。そこに、フロントレーザースキャナー、レーダー、超音波センサー(ソナー)といった多様なセンサーを加えたセンサーフュージョンでレベル3自動運転に必要な環境情報を手に入れている。そしてそれらをつかさどるのが、同社が独自に開発したブレインモジュール「zFAS」(ズィーファス)なる。

アウディ サミット 2017で展示された量産版zFAS。このモジュールが新型アウディ「A8」に搭載されている
NVIDIA製SoC。アウディの説明員によればTegra K1とのこと

 このzFASは、アウディが米国において開催された「CES 2014」でプロトタイプ展示がされていたが、処理の中心にNVIDIA製のSoC(System On a Chip)を置いていた。プロトタイプの際はその大きさからリアトランクなどに設置されていたが、市販版となってさらに小型化されることで、運転席下部辺りに配置されていた。

新型アウディ A8のパワートレーン
zFASはこの位置に配置されている
プロトタイプ版第1世代zFAS。CESで自動駐車などのデモを行なった
プロトタイプ版第2世代zFAS。第1世代よりもコンパクトになっている。しかしながら量産版はさらにコンパクトになった

 zFASの説明スタッフに確認したところ、市販版A8に搭載したNVIDIA製のSoCは「Tegra K1」とのこと。このTegra K1は2014年に発表されたSoCで、192のCUDAコアを搭載。アウディはこれまでのzFASでもTegraシリーズを搭載してきており、プロトタイプからしっかり開発を進め、NVIDIA製Tegra K1と組み合わせることで市販車搭載可能なレベルまでzFASモジュールを小型化してきたことになる。

新型アウディ A8の搭載するセンサー類。4つのサラウンドビューカメラに加え、1つのフロントカメラ、1つのドライバーモニターカメラ、フロントレーザースキャナーなど備える
各センサーのカバー範囲イメージ

 このアウディ サミット 2017は、新型アウディA8の発表を中心にアウディの最新技術を展示するもので、世界中の報道関係者など2000人が参加。アウディと一緒になってzFAS開発を進めてきたNVIDIA オートモーティブ部門 シニアダイレクター ダニー・シャピーロ氏も参加していた。これまで同社がアウディと進めてきた自動運転の世界が一段上のステージになったことについての感想については「素晴らしいことだ」とのこと。とても感慨深く、今回の発表を見守っているようだった。

新型アウディ A8の前に立つNVIDIA オートモーティブ部門 シニアダイレクター ダニー・シャピーロ氏

 また、この新型A8には、zFASに搭載されたNVIDIA製SoCのほか、バーチャルコクピットを実現するSoC、ハプテックインターフェースを持つ2画面のグラフィカルなセンターコンソール、リアのエンタテイメントシステム用各種グラフィックスチップなど多数のNVIDIA製半導体が使われている。「新型アウディA8にいくつのNVIDIA製半導体が使われているのか?」という質問には、「それはアウディに聞いてほしい」との答えだった。

数多くのディスプレイを備える新型アウディ A8。未来のクルマを一足早く具現化している

 アウディの自動運転に関するプレゼンテーションでは、このzFASがレベル3自動運転をすべてつかさどると説明されたほか、安全運転支援装置のコントーラとしての役割も行なっているという。高度な安全運転支援装置の先にあるものがレベル3自動運転であり、そのレベル3を実現するためのコンピューティング能力を提供しているのがTegra K1になる。そのコンピューティング能力を、どうクルマに反映させていくかは各自動車会社の競争領域となるのだが、早くからクルマの自動運転に取り組んできたアウディだからこそ、世界初のレベル3自動運転市販車を実現できたということなのだろう。