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ブリヂストンがサポートを行なっているパラトライアスロンの秦由加子選手がデモラン
「Team Bridgestone」発足。パラアスリート技術支援説明会
2017年10月13日 00:00
- 2017年10月12日 開催
ブリヂストンとグループ会社のブリヂストンサイクル、ブリヂストンスポーツは10月12日、これまで培ってきたタイヤや自転車、スポーツ用品に関する技術を用いてパラアスリートを支援する取り組みを開始したと発表した。
この発表を受けて、ブリヂストンは「Team Bridgestone」パラアスリート技術支援発表会を都内で開催。今後、グループの技術を生かしてパラアスリートが抱える課題を解決するため、分析・解析技術や新たなツールの開発などを行なっていく取り組みについて説明が行なわれた。
最初に登壇したブリヂストン オリンピック・パラリンピックマーケティング推進部 アクティベーション推進ユニット 課長 鳥山聡子氏は、チームブリヂストンとパラアスリートの技術支援をスタートした背景について説明。
鳥山氏は、「ブリヂストンのブランドとして、“さまざまな困難を乗り越えながら夢に向かって挑戦し続ける企業でありたい”“ブランドでありたい”“そのような思いを持つすべての人の挑戦・旅を支えていきたい”という思いがある。この思いを体現するため、6月30日にローンチしたのが、チームブリヂストンジャパンとなる」と、チームブリヂストンについて説明。
続けて、活動の軸として「チームで挑戦する」「チームで応援する」「チームが架け橋となる」という3つの軸を設定していると話し、「アスリートがまずは最高のパフォーマンスを求めて挑戦をする。それを支えていくということも我々にとっては大きな挑戦だと思っております」と、支援について述べた。
また、チームブリヂストンは日本だけでなく海外を含めたさまざまな地域で結成されており、アスリート同士の相乗効果なども今後期待していることだと述べ、「応援する人、支える人、アスリート自身もほかの夢に向かって挑戦するすべての人を応援する存在であり、応援し合うということも、あえて我々が一方通行のアスリートへの契約という形態にしたのではなくて、チームという形をとったというところに込めた思いでございます」。
「このチーム自体が架け橋となってさまざまな相乗効果を生み出し、チームにいるオリ・パラ・夏・冬、さらにはスポーツ以外の面も含めてさまざまな挑戦をする人たちの架け橋となり、それがオリンピック・パラリンピックのムーブメントの一端となるということを目指しております」と今後について語った。
次に、ブリヂストンサイクル 経営戦略本部ブランドコミュニケーション戦略課 課長 渋谷淳一氏が、ブリヂストンサイクルにおけるこれまでのアスリート支援の取り組みと、パラアスリートへの支援について説明を行なった。
ブリヂストンサイクルは、東京オリンピックが開催された1964年にブリヂストンサイクル 自転車競技部としてアスリート支援の活動を開始。その後、Jリーグなど多くのプロチームの活動が開始した1998年に、トラック競技やロード競技、マウンテンバイク競技といったスポーツバイクの走行チームとして、プロチーム「TEAM BRIDGESTONE ANCHOR」を発足。選手への機材サポート契約などを経て、現在はパラトライアスロンの秦由加子選手のサポートを行なっている。
具体的な内容として、チーム運営やチームサポート、自転車のフレームサポートのほか、専用のラボで選手の体重1kgあたりの身体に取り込める酸素量(最大酸素摂取量)を測定する「vo2max測定」や、選手の漕ぐ力がしっかりとペダルに伝わって推進力になっているかを計測する「ペダリング動画解析」、ポジションチェックなどの測定を行ない、それらを踏まえた上で数値面などからフォーム改善などのアドバイスを行なっているという。
渋谷氏は、「このような取り組みが今後トレーニングに活かされ、秦選手とともにスタッフも成長して進化していければと思っております。これからも秦選手とともに東京2020パラリンピックへ、夢へ向かって挑戦してまいりたいと思っております」と締めくくった。
ブリヂストン イノベーション本部 イノベーションマネジメント部 イノベーション調査研究ユニット 主任部員 小平美帆氏は、パラアスリート技術支援についてを説明。
小平氏が所属する部署では、課題に対してブリヂストンの強みやコア技術を活用して解決できないかと考え、技術を起点としてアイデアを創出する活動を行なっているとのこと。その活動を進めていくなかで、パラアスリートたちが多くの課題を抱えていることを知ったという。
パラスポーツを行なうにあたり用具はとても重要である一方、選手たちはそれぞれ障がいの度合いが異なるため、用具とのギャップが生じていたという。用具のなかでも義足について注目したところ、スポーツ用の義足で地面と接する“ソール”という部分にゴムなどが使われていることを知り、ブリヂストングループの事業であるタイヤやゴムクローラ、ゴルフシューズなどと親和性が高いと考え、そのなかでもスパイクレスのゴムソールを使用しているトライアスロンに着目。パラアスリートにヒアリングを行なうと、「なるべく軽いもの」「できるだけ減りにくいもの」「いろいろな路面で安心して走りたい」という3つの課題があることが分かったという。
小平氏は「パラトライアスロンのランニングコースは、公道を走ることがございます。例えばアスファルトであったり、横断歩道の白線であったり、石畳であったりと、さまざまな路面で走るということが分かりました。それと比較して当社のタイヤを見てみますと、さまざまな路面で走れるようにタイヤを設計するという技術がございます。このさまざまな路面で走れるという技術で親和性が高いと考えてこのたびゴムソールの開発をすることにいたしました」と述べた。
また、実際にプロトタイプを作るにあたっては、「ゴムの材料の改良」「パターンの設計」という大きく2つのアプローチがあると考え、まずはゴムの配合の検討に着手。秦選手のランニングの観察や走っているときの圧力の測定をして、ゴムの配合の検討を行なうなど、サンプルを作成。実際にそのサンプルを秦選手が使ったところ「今まで使っていたソールよりも安心して走ることができた」というフィードバックとともに、「もっと今よりもよいソールを目指してほしい」というリクエストがあったという。
小平氏は今後のサポートの目標として、「選手がより安心して走ることができる、そしてアスリートの競技の成績に貢献できるソールを提供したいと考えております。そのためには、より安心して走れるより選手のニーズを捉えた設計が必要だと考えております。走り方を深く理解して目標設定を定めるとともに、その目標を達成するためにソール材料の開発であったり、形状の設計の検討であったりを進めて、実証を進めたいと思っております」と語った。
説明会にはゲストとして、現在サポートを受けているパラトライアスロンの秦選手が登場。アメリカのフロリダ州サラソタで行なわれたトライアスロンのワールドカップで優勝した喜びや、パラトライアスロンを始めたきっかけなどについて語った。
パラトライアスロンとは、「スイム」「バイク」「ラン」の3種目を続けて行なう競技で、オリンピックではスイム1.5km、バイク40km、ラン10kmの51.5kmが一般的だが、パラトライアスロンはその半分のスイム750m、バイク20km、ラン5kmとなる。
秦選手は、ブリヂストンのサポートを受けるにあたり、「まさか義足のソールを作っていただけるとはまったく考えていなかった。義足のソールはとても重要で、実際にどんな路面状況か分からないなかで海外に行くと、調子がわるいなとか、タイムが出ないとか、義足の影響だったりもしていた。自分で工夫しなければいけないと思いながらも、1人ではどうすることもできなかったとき、小平さんから義足のソールってどうなっているんですかとか、困っていることないですかって聞いていただいて、今の技術開発に繋がっています。まわりの方々に支えていただいて、今回の結果にも繋がったのかな、とも思っています」と話した。
また、「シーズン中はかなり多忙になってしまうのですが、ソールを使いこんでいくと消耗品ですのですり減ってきたりとか、そういったことも小平さんにレースから帰ってきて話しをして、ここが困ったとか、こういうのが思うようにいかなかったので変えてほしいという要望を随時お願いできた。そして、迅速に対応していただいて、またすぐに次のレースに向かうということを繰り返せたので本当に感謝してます」と述べた。
最後に今後の意気込みについて「東京2020に向けてはまだまだ自分自身も成長できると思っています。ソールとバイクと、いろんな形でご支援をいただいてるということは、すごく幸せなことだと思います。私1人で競技をやることとまったく違って、たくさんの人に応援していただきながら競技ができるということが幸せなことだと思いますし、東京2020でみなさんで、チームブリヂストンで喜びたいと思っておりますので、それに向けて今後も頑張っていきたいと思っています」と話した。