ニュース
岡本幸一郎の電動モデル専門ブランドに生まれ変わった「ポールスター」発表会レポート
ブランド第1弾となるPHV「ポールスター 1」の価格はボルボと一線を画する水準に?
2017年10月19日 15:14
- 2017年10月17日(現地時間)発表
あのポールスターがEVブランドに!?
1996年にモータースポーツチームとして設立されたポールスターは、各種のボルボ車を駆ってレースに参戦し、数々の輝かしい戦績を挙げてきた。以降、2009年より市販車に向けたパフォーマンス関連の製品を手がけるようになったのを機にボルボとの関係強化が図られ、2014年には初のコンプリートカーを発売。2015年にはポールスターのパフォーマンス部門がボルボ傘下に収まる運びとなった。
ところが2017年6月、ポールスターがボルボから独立した高性能エレクトリックカー専門ブランドになることが発表されたことで、パフォーマンスカー・ブランドとして認知されていたポールスターがEV? と感じた人も少なくなかったようだが、そんな折、近い将来のポールスターについてのかなり具体的なプランを、10月17日(現地時間)の夜に中国 上海で開催されたローンチイベントで初めて知ることができた。
この日、実車が公開されたのは「ポールスター 1」と名づけられたモデルだ。やや大柄な2+2の2ドアクーペ。スタイリングは2013年のフランクフルトショーで披露され、評価の非常に高かったボルボの「コンセプトクーペ」を継承しているのは見てのとおり。実車を見ると、たしかに非常にスタイリッシュであることに感心しきり。低くワイドで後半がグラマラスなボディは、面構成が極めて美しく仕上げられていて、エレガントな雰囲気を漂わせながらも、いかにも走りそうなイメージを持ち合わせている。ルーフ部の大半をガラスとしたパノラミックな作りも特徴的で、縦長の大画面ディスプレイを中心にウッドやメタルなどを印象的に配したインテリアも好評の新世代ボルボに通じるものだ。
600HP&1000Nmを誇るプラグインハイブリッド
気になる動力源には、既存の「T6」系に相当するガソリンエンジンをフロントに搭載し、リアに左右輪の駆動力のベクタリングも行なう2基のモーターを組み合わせ、センタートンネルとリアアクスルの脇に搭載した計34kWhのバッテリーで駆動するPHV(プラグインハイブリッド)となる。電力のみで最長150kmもの走行が可能でありながら、システム最高出力は600HP、最大トルクは1000Nmまで達するというから、相当に高いパフォーマンスが期待できる。
車体はボルボと新世代アーキテクチャーである「SPA」を共用しつつも、50%をポールスター独自にモディファイしたプラットフォームに、フルカーボンファイバーを用いたボディを組み合わせる構造を採用することも特筆できる。これにより230kgの軽量化が可能であり、バッテリー搭載による重量増を相殺するとともに、車体のねじり剛性を45%も向上させることで、グランドツーリングカーとしての走りに寄与することも期待できる。また、足まわりはオーリンズとの共同開発による「CESi」と呼ぶ電子制御サスペンションを、ブレーキには日本の曙ブレーキ工業との共同開発によるシステムを搭載する。
このポールスター 1は2019年の半ばに導入予定で、2018年に完成予定の新しい中国工場において、年間で最大500台の生産を見込んでおり、通常の販売は行なわれず、すべてリース販売という形態を取る予定という。気になる価格は、これまでのボルボとは一線を画する水準に達するようだ。
すでに「ポールスター 2」と「ポールスター 3」の具体的な計画も
当日はボルボ デザイン担当上級副社長兼ポールスターCEOのトーマス・インゲンラート氏と、ポールスターCOOのジョナサン・グッドマン氏が壇上に立ち、アンベールのときを迎えると、世界各国から集まった400人を超える関係者より大きな喝采を受けた。
思えばポールスターというと、あの鮮烈なブルーを真っ先に思い浮かべるところだが、今回展示された車両はいずれもモノトーンだったし、お伝えしたように電動駆動を大きく訴求するクルマでありながら、エコを想起させるような色使いや視覚的にアピールするものがとくに見受けられなかったことも印象的というか、象徴的に思える。ポールスターはあくまで“パフォーマンス”ブランドであるということのようだ。
さらに、今回はまだ実車がなくイメージのシルエットが映し出されるにとどまったが、ポールスター 1が世に出た以降にリリースを予定している「ポールスター 2」と「ポールスター 3」についての概要も説明があった。ポールスター 2はボルボグループとして初のバッテリー式EV(電気自動車)となり、テスラ「モデル3」の競合となるミッドサイズモデル、ポールスター 3は前出のポールスター 2よりもサイズの大きなSUVスタイルのバッテリー式EVで、生産台数は両モデルの中間に位置づけられるという。
レースのイメージも強いポールスターだが、こうしてまったく新しい形で再出発を図るというのは非常に興味深い話。そして肝心のプロダクトも、同じく非常に興味深く、魅力的なものであった。2019年はそう遠くない将来。大いに期待して待つことにしたい。