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日産 西川社長、「日産の再発防止策を信頼いただいた皆様に大変申し訳ない」

国内市場向けの完成検査業務、車両出荷、車両登録が停止した件について会見

2017年10月19日 開催

日産 西川社長、「日産の再発防止策を信頼いただいた皆様に大変申し訳ない」 会見を行なった日産自動車株式会社 代表取締役社長兼最高経営責任者の西川廣人氏
会見を行なった日産自動車株式会社 代表取締役社長兼最高経営責任者の西川廣人氏

 日産自動車は10月19日、一連の完成検査の不備に関して再発防止策が講じられた以降にも、完成車検査員に任命されていない作業員が完成検査の一部を継続して行なっていたことを受け、横浜の同社本社で会見を行なった。会見では日産自動車 代表取締役社長兼最高経営責任者の西川廣人氏が出席して説明が行なわれた。

 この問題では、同社の国内事業所(追浜工場、栃木工場、日産自動車九州)、日産車体、日産車体九州で車両製造の最終工程、完成検査工程のうち一部の項目で同社の規定で定められた検査員が実施していなかった。

 そのため、2014年1月~2017年9月に製造された計123型式38車種で、日産以外のいすゞ自動車、スズキ、マツダ、三菱自動車工業にOEM供給した車両も含む約114万台のリコールを行なうことを10月6日に発表。指定整備工場で自動車検査員による点検を行ない、安全環境性能法規(保安基準)に関する不具合が認められた場合は是正することがアナウンスされた。

 しかしその後、日産車体湘南工場において、再発防止策が講じられた以降にも完成車検査員に任命されていない作業員が、完成検査の一部を継続して行なっていたことが発覚。そして今回の会見では、この日産車体湘南工場に加えて追浜工場、栃木工場、日産自動車九州でも同様の事例が発生していることが10月18日までに明らかになった。

 この事態を重く見た日産は、日産と日産車体の全6工場で生産している国内市場向けの全車両の完成検査業務、車両出荷、車両登録を停止すると発表。販社における営業活動などの業務は行なわれるものの、ユーザーへの納車ができない状態になる。

日産 西川社長、「日産の再発防止策を信頼いただいた皆様に大変申し訳ない」 「日産の再発防止策を信頼いただいた皆様には大変申し訳ないことをしてしまいました」と語る西川社長
「日産の再発防止策を信頼いただいた皆様には大変申し訳ないことをしてしまいました」と語る西川社長

 会見に臨んだ西川社長は、冒頭に「今日は大変申し訳ない、残念な報告をさせていただきます」として上記の内容について説明。「9月19日に不適切な完成検査の事案が発覚しました。それ以降、再発防止策を打ったうえで国内の販売・登録を再開させていただいたわけでございます。ところが、緊急の対策を打ったにも関わらず、報道でもありました日産車体湘南工場の問題に加えて日産工場でも別件の事案が発見されました。結果として、国内向けの出荷・登録を停止しております」とコメント。これは10月6日に発表された約114万台のリコール以降の問題であり、その後に生産(2017年9月20日~2017年10月18日製造)した約3万4000台(現在精査中)が今回の問題にあたるという。この約3万4000台についてはリコールの届け出を検討している段階であり、西川社長は「日産の再発防止策を信頼いただいた皆様には大変申し訳ないことをしてしまいました。深くお詫び申し上げます」と謝罪。

日産 西川社長、「日産の再発防止策を信頼いただいた皆様に大変申し訳ない」 日産自動車株式会社 CCOの山内康裕氏は、今後の対策についての責任者になる
日産自動車株式会社 CCOの山内康裕氏は、今後の対策についての責任者になる

 これを受け、西川社長とともに会見に出席したCCOの山内康裕氏からは、具体的に今回発生したこと、そして今後の対策についての説明が行なわれ、「10月17日の夜、追浜工場の完成検査工程の一部が完成検査工程ではないほかのラインで実施されていて、さらに検査が任命された完成検査員ではない検査員によって行なわれている、こう疑われる事象が確認されました。ここに2つの問題がございます。1つは、完成検査工程というのはクルマが立ち上がるときに国土交通省に『こういう工程で検査をする』というお届けをしています。その完成検査工程が変更されていたこと。変更された場合は30日以内に国土交通省にもう一度お届けをすることになっているのですが、変更されたのは8月1日。従いまして、我々がこれを発見した時点では30日を過ぎておりまして、届け出なしに変更してしまったことが1つ」。

「そのうえで、その完成検査の一部が任命されていない完成検査員によって実施されていたと思われるという事象が確認されました。これを受けまして昨日、日産自動車および日産車体の国内の工場につきまして同様の案件がないかどうか、すべて調査いたしました。その結果、栃木の第1工場で1件、日産自動車九州の第2工場で1件、同様の案件が確認されました。これを受けましてクルマの出荷を止め、そして登録を止めるということに至ったわけでございます」と説明が行なわれた。

 そしてふたたびマイクを握った西川社長から、「少し補足させていただくと、今回リコールをお届けするつもりの3万4000台について、単純にコストというインパクトで見ると10億円弱ということでこれ自体は限定的でございますが、先ほど申し上げたとおり、我々は対策を打って(生産を)再開しましたが、我々を信用して買っていただいたお客様に大変信頼を裏切ってしまったと、こちらが大変大きな問題だと私は思っています。山内の方からありましたとおり、我々の対策は事案が発覚したあと、任命されていない検査員が印鑑を押すなど“これが常態化していた”と。皆様から『これは組織的な問題なのか』というお問い合わせもありましたが、当然組織的でなければ状態化することはないわけです。そういう意味では無資格者による検査等々が行なわれていたということで、それを対策するものだったのです。具体的に言いますと『無資格者による完成検査行為の禁止』『2つあったハンコを1つにする』『管理の強化』の徹底を図ってまいりました。その過程のなかで、全部ではございませんが私も一部の現場に足を運んで確認をし、そして直接話を聞いてきました。そのようななかで今回の事案が発覚したわけでございます。まさに不徹底と申し上げるしかないと思います」。

日産 西川社長、「日産の再発防止策を信頼いただいた皆様に大変申し訳ない」 「課長から係長でのコミュニケーションにギャップがあった」ことが、今回の重要なポイントの1つという
「課長から係長でのコミュニケーションにギャップがあった」ことが、今回の重要なポイントの1つという

「なぜ作業をしてはいけない人間が作業をしたか、という疑問を皆様が持つのはよく分かります。今のところ不徹底としか言い訳のしようがないのですが、結局1つ明らかなのは組織的に運営をされていた。その要になるのは課長ではなく係長でした。今回、我々から生産部門のトップ、工場長、部長、課長、係長と指揮命令が伝わっていったわけですが、その過程で課長から係長でのコミュニケーションにギャップがあり、ここに1つ落とし穴があったのではないかと思っています。これはほかの件でも散見されますので、非常に重要なポイントであろうと思っています」。

「当面の対策については山内からあったとおり、日本の国内向けの出荷は停止をしています。輸出がありますので生産は継続ですが、追浜のように国内専用の工場は止まっています。今後、再開をしていくことを考えなくてはなりませんが、非常に慎重にいきたいと考えています。一度我々は再開をして、登録をはじめてこういう事態に至っておりますので、今回は日常対応ではなく緊急対応としてがんじがらめのところからスタートしたいと思っています」とし、今後「完成検査ラインの編成を届け出状態に戻し、完成検査を実施する」「完成検査ラインを集約し、完成検査員以外は立ち入れない対策を検討、実施する」という2点の是正案が示された。加えて外部の専門の監査機関に依頼し、当面週1回の監査を実施していくことなどを早急に行なっていくという。

 なお、これらの修正案は2週間ほどかけて各工場で行なっていくとしており、従って2週間以上は国内市場向けの全車両の完成検査業務、車両出荷、車両登録が停止することになる。

日産 西川社長、「日産の再発防止策を信頼いただいた皆様に大変申し訳ない」