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スバル 緊急記者会見、完成検査員問題でトヨタ「86」を含む直近3年間の全車種25.5万台をリコール。費用は50億円

「心からお詫び申し上げます」と吉永社長

2017年10月27日 会見

スバル 緊急記者会見、完成検査員問題でトヨタ「86」を含む直近3年間の全車種25.5万台をリコール。費用は50億円 生産工程の完成検査員問題で緊急記者会見を開催。株式会社SUBARU 代表取締役社長 吉永泰之氏(左)、執行役員 品質保証本部長 大崎篤氏(右)
生産工程の完成検査員問題で緊急記者会見を開催。株式会社SUBARU 代表取締役社長 吉永泰之氏(左)、執行役員 品質保証本部長 大崎篤氏(右)

 スバルは10月27日、無資格検査による法令違反についての記者会見を同社本社内で開催した。会見には、同社 代表取締役社長 吉永泰之氏、執行役員 品質保証本部長 大崎篤氏が出席。今回の問題に関して陳謝するとともに、経緯を説明した。

 スバルの調査によると、下記の事実があり、週明けの30日に国土交通省に報告。その後、対象車両に関してはリコールを実施することになるという。リコール台数は、初回の車検を受けていないスバルの全車種およびOEM車両で、約25.5万台。この中には、トヨタ自動車の「86」も含まれ、費用総額は約50億円ほどかかるのではないかとのこと。

スバル 緊急記者会見、完成検査員問題でトヨタ「86」を含む直近3年間の全車種25.5万台をリコール。費用は50億円 会見はスバル本社で開催された
会見はスバル本社で開催された

 調査結果は以下のとおり。吉永社長は記者会見の冒頭、下記の調査結果を読み上げた。


報告内容

(1)完成検査員について
型式指定を申請する際に、国交省へ提出している上位規定(完成検査要領)は、完成検査員が完成検査を行なうことになっている。一方、業務規定では、完成検査員登用にあたっては、現場経験の期間が必要と義務付けているため、当該工程の完成検査員と同じく、十分な知識と技能を100%身に付けたと現場管理者(係長)が認定した者を、監督者(班長)の監視下で検査業務に従事させており、型式指定申請書にある上位規定とは異なる運用になっていた。

(2)完成検査の代行押印について
完成検査工程の運用ルールでは登用前の検査員に、完成検査員の印章貸与を行ない、代行押印を行なわせていたが、それを明文化した規定はなかった。

(3)完成検査に関連する規定の確認について
上記(1)(2)で記載した運用は、完成検査に関わる規定に織り込まれておらず、規定全体が体系的に整備されているとは言い難い状況だった。

同社の完成検査の実施要員

・同社の完成検査に従事することができる者は、まず担当検査工程に必要な教育と訓練を受け、完成検査業務に必要な知識と技能を100%身に付けたと現場管理者(係長)に認定され、担当検査工程に従事するよう、監督者(班長)に指名された者。認定結果については、記録簿にて確認することができる仕組みとなっている。

・この指名された者は、個々人の保有資格(2級自動車整備士等)に応じて設定された期間までは、監督者の監視下で完成検査業務に従事。⇒2017年10月1日現在、同社全体で4名

・当該期間を経て、かつ社内の筆記試験に合格した者は、完成検査員という呼称を付し、原則監視下から外します。⇒2017年10月1日現在、同社全体で245名

・上記のとおり、完成検査正規登用前の検査員が完成検査に従事している場合があり、規定として明文化されていなかった。

今後の対応

同社の完成検査を今後、透明性を高め、将来に渡って誤った運用や解釈が生じないように、改めて規定を体系的に整理し直す。なお、対象車両に関しては、市場措置(リコール)を検討中。


 吉永社長、大崎品質保証本部長からは、上記のことに関しての詳細な説明があった。まず、今回問題となった無資格完成検査は、「完成検査正規登用前の検査員が完成検査に従事している場合があり」という部分。スバルでは、「十分な知識と技能を100%身に付けたと現場管理者(係長)が認定した者を、監督者(班長)の監視下で検査業務に従事させており」、社内において十分な知識と技能を100%身に付けたと認定された時点で、資格を持たないが完成検査の業務に就くことができ、最初は監督者(班長)の監視下で、十分に仕事をマスターしたら独り立ちして一定期間完成検査業務を実施。その経験を積んだ上で、筆記試験を行ない、筆記試験に合格したら帽子に緑の完成検査員のバッジを着け完成検査員として完成検査業務に正規登用された。

 問題は、この「十分に仕事をマスターしたら独り立ちして一定期間完成検査業務を実施」というところで、ここでは監督者もマンツーマンでは立ち会っておらず、「完成検査員の印章貸与を行ない、代行押印を行なわせていた」という。押印するハンコは、名前を書いてあるもので、他人の名前のハンコを使っていたことになる。

 スバルとしては、30年以上前から、完成検査に従事する者について、担当検査工程に必要な教育と訓練、完成検査業務に必要な知識と技能を100%身に付けたと現場管理者(係長)が認定、監督者の監視下でマンツーマンで完成検査業務に従事、独り立ちして業務経験を積み、そして筆記試験を受け完成検査員となり、完成検査業務に正規登用というプロセスになっていた。

 つまり、スバルとしては「完成検査員が完成検査を行なう」と規定した上で、「業務規定では完成検査員に登用するにあたっては、現場経験の期間が必要と義務づけている」(大崎氏)といい、社内の上位規定と下位規定で矛盾が発生。しかも、この手順が(完成検査員が完成検査を行なうにもかかわらず、完成検査員になるためには現場での経験が必要となっている)現場の引き継ぎのみで明文化されておらず、問題点をスバルとして認識できていなかった。

 また、国交省の検査においても明文化されたマニュアルなどがないため、この問題点が見つからず、結果として30数年も同様の工程で検査を実施。現在、検査員となっている者もこのプロセスを経て検査員となっているため、これが法令違反の部分があるとは認識できていなかったとのことだ。

 記者からの「日産の問題発覚後もなぜやり続けていたのか?」という質問に対して、スバルがこの問題を認識したのは、「9月29日金曜日深夜に国土交通省から調査依頼があり、10月2日から調査を開始した。すべてのラインに入って、確認をした。10月3日に、これは疑義があると掴んだ。その時点で。完成検査員ではない人がやっているものを停止した」(大崎氏)とのこと。これにより、国交省からの調査依頼から1労働日で回避したという。

スバル 緊急記者会見、完成検査員問題でトヨタ「86」を含む直近3年間の全車種25.5万台をリコール。費用は50億円 現場のプロセスなど詳細については大崎 品質保証本部長より説明
現場のプロセスなど詳細については大崎 品質保証本部長より説明

「日産自動車から始まった問題だが、以前業務提携していたことは関係あるのか?」という質問に対しては、「日産と業務提携していたのはそのとおりです。どちらの会社から学んでやったとしても、最終的に選んだのは当社。当社としてそういうやり方を選んだ」(吉永社長)、「日産からのやり方なのか、日産に渡したやり方なのか、そこは分かっていない」(大崎氏)と答えた。

 スバルとしては10月3日に問題把握した訳だが、「10月3日に分かったが発表しなかった理由は?」との質問に対して、「何度か国土交通省に問い合わせをさせていただいた。私どもとして、私どもがやっていることがどのような関係にあるのかと質問させていただいた」(吉永社長)といい、法規などをすべて見直して、10月5日に国交省に相談。国交省からの問い合わせ時に、「一月(ひとつき、1カ月)をめどにという指示があり、その期間を使って調査させていただいた」(吉永社長)というのがあり、発表がこのタイミングになったいう。

 スバルは10月25日に開幕した東京モーターショーの初日にプレスカンファレンスを実施、吉永社長は「今年の4月に社名をSUBARUに変更し、“モノを作る会社から笑顔を作る会社へ”と宣言しました。私たちが提供する商品を通じて、その先にあるお客様の人生を豊かで笑顔にあふれるものにすること、それこそがスバルブランドの使命です」と同社の目指すビジョンを語るとともに「安心安全な車づくり」に言及(関連記事:次世代スポーツセダンコンセプト「SUBARU VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」を世界初公開したスバル)。つまり、この時点で問題について認識していたことになる。

 その点についても記者から質問が飛び、吉永社長は「認識していた。今朝のみなさまの報道が出るところまで、自分の中では冒頭に説明したような内容で、見守ろうと思っていた」「あのときの発言も素直な気持ち」「当社が日本のものづくりの不安になっていることに対して、非常に忸怩たる思いがある」と語った。

スバル 緊急記者会見、完成検査員問題でトヨタ「86」を含む直近3年間の全車種25.5万台をリコール。費用は50億円 1つ1つ質問に回答していく吉永社長
1つ1つ質問に回答していく吉永社長

「どうしてこういことが起きたか?」という質問に対して、吉永社長は「私どもの会社としてはきちんとやろうと思っていた。社内ではこの方法がまずいという意識がなかった。きちんと明文化されたものがなかった。歴史が古いこともあって、歴史上こうやってきた。(文書がなく)エビデンスがない」「今のやり方を明文化するだけではなく、今の時代にどうするのがふさわしいか根っこから見直す。このことに限らずきちんとする」と答え、大崎氏は「今やっている仕組みを明文化して置き換えるのではなく、30年以上この仕組みでやってきた。単純化するのではなく、すべてを棚卸しして、体系化する」と答えた。

 今回のリコールには、初回車検以前、10月3日以前に群馬の本工場、矢島工場の3ラインで生産したすべての車種が含まれる。トヨタ自動車の「86」も含まれ、トヨタの品質部門に連絡したのが今週頭、経営同士で話をしたのが「ここ数日」(吉永社長)とのこと。

 吉永社長、大崎品質保証本部長が何度も語っていたのは、スバルとしては、この完成検査員育成プロセスが、現場の中で生まれ、現場でよかれと思って続いていたということ。完成検査員になるために、実際のラインで実務を積むステップが、人が育っていくためには必要なものであると思っていたということだ。

 普通に考えると「完成検査業務に必要な知識と技能を100%身に付けたと現場管理者(係長)に認定」された時点で、完成検査員に認定すれば法令違反とならず、記者からも同様の質問が出たが、「係長が認定した時点で完成検査員に登用すれば問題はなかったのだろうが、私どもとしては実務経験を重視した。これがきちんと明文化されていなかったことが問題だと思っている。印鑑について、現場の監督者の印章を、ハンコを押すまでが業務ということで渡している。印章も班長のものを渡して、管理している。そこは正すべきだと反省をしている」(大崎氏)と語る。

 スバルは国内向け、海外向けを1つのラインで混流生産しており、今回の問題が影響するのは国内生産分のみ。輸出生産分に関しては、日本と同等の検査をした上で、各国の法令に準拠した検査をしているが、例えば北米には完成検査員という制度がなく輸出分は問題にならないという(そもそも北米のイリノイ工場には完成検査員がいない)。しかし、国内分については、法令違反は法令違反。

 発表では、完成検査員が245名、そうでないものが全体で4名とのことで、ラインの検査プロセスで、この4名がどこかで確認(完成検査業務)を行なっていれば法令違反となり、リコール対象となる。月によって異なるが、完成検査員でないものは最大で17名、平均で8名とし、誰が何時どの場所で業務についていたかは確認できているとし、リコール対象もそこから決まっている。

 吉永社長は、「会社の中で起きたことは社長の責任」と語り、今回の問題によってスバルというブランドが毀損することに関連した、「ブランドの再構築のためなにがもっとも必要か?」という質問に対して、「4月に社名変更をして、5月に決算発表した。当社は社内全員が実力を高めていくことをしなければいけないと話した。成長できたことはうれしいが、全体の力がこの件に限らず追いついていない。無理矢理どんどん販売台数を上げていこうとは思っていない。本当の意味で足下を見つめ直して企業としての実力を高める」と答えた。

 記者会見は17時ちょうどに始まり、19時20分に終了。重複質問もあったが、質問のために挙手をしたすべての記者に答える形で終了した。

スバル 緊急記者会見、完成検査員問題でトヨタ「86」を含む直近3年間の全車種25.5万台をリコール。費用は50億円 会見の冒頭、および最後に陳謝した
会見の冒頭、および最後に陳謝した

 国交省への報告は来週の月曜日となる10月30日となるが、10月28日から一般公開が始まる東京モーターショーのスバルブースと、各スバルディーラーにおいては何らかのインフォメーションを行なうことを検討しているという。対象となる車種を所有の方は、下記の問い合わせ窓口まで確認していただきたい。

【フリーダイヤル】SUBARU完成検査お問い合わせ窓口 TEL:0120-592215 (9時~17時)