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【スーパーフォーミュラ最終戦 JAF鈴鹿グランプリ】新型車両「SF19」について、SF解説者 松田次生選手に聞いてみた

「デザインはかっこいいよね」、空力については「楽しみ」と

2017年10月21日 予選

2017年10月22日 決勝は中止

【スーパーフォーミュラ最終戦 JAF鈴鹿グランプリ】新型車両「SF19」について、SF解説者 松田次生選手に聞いてみた 新型車「SF19」について、日本を代表するドライバーである松田次生選手に聞いてみた
新型車「SF19」について、日本を代表するドライバーである松田次生選手に聞いてみた

 10月21日、「第16回JAFグランプリ 2017年 全日本スーパーフォーミュラ選手権 最終戦」開催中の鈴鹿サーキットにおいて、スーパーフォーミュラを運営するJRP(日本レースプロモーション)は記者会見を開催。2019年より導入する新型車両「SF19」についての発表を行なった。

 記者会見についての詳細は、関連記事(ラップタイムを2秒速く、2019年から導入の新型車両「SF19」デザイン公開。ダラーラCEO来日会見)を参照してほしいが、記者会見場でSUPER GTのトップドライバーである松田次生選手に新型車両「SF19」についての第一印象を聞いてみた。

 松田次生選手は、スーパーフォーミュラの前身となるフォーミュラ・ニッポンを2007年、2008年と連覇し、SUPER GTでも2014年、2015年と連覇。日本を代表するドライバーとして知られている。スーパーフォーミュラについても解説者として活躍しており、その的確なコメントが評判となっている。

 新型車両「SF19」については、JRP技術顧問 白井裕氏より従来のSF14より2秒程度のラップタイム向上との話のほか、SF19の車体設計・製作を担当するダラーラ アウトモビリ CEO アンドレア・ポントレモリ氏より、「オーバーテイクしやすいクルマ」との説明があった。スーパーフォーミュラのマシンにはOTS(オーバーテイクシステム、20秒間だけ燃料流量をアップしてエンジン出力を増加し、前走車を抜きやすくするシステム)が、搭載されており、詳細は不明がながら同名のシステムをSF19も搭載。その上で、タイムを向上させつつ、オーバーテイクしやすいクルマの実現には、空力を主とするとし、その空力についても「ウィングではなく、フロアを重視する」とのこと。

【スーパーフォーミュラ最終戦 JAF鈴鹿グランプリ】新型車両「SF19」について、SF解説者 松田次生選手に聞いてみた 2019年から導入される新型車「SF19」
【スーパーフォーミュラ最終戦 JAF鈴鹿グランプリ】新型車両「SF19」について、SF解説者 松田次生選手に聞いてみた 2019年から導入される新型車「SF19」
【スーパーフォーミュラ最終戦 JAF鈴鹿グランプリ】新型車両「SF19」について、SF解説者 松田次生選手に聞いてみた 2019年から導入される新型車「SF19」
2019年から導入される新型車「SF19」

 現代のレーシングカーはフロントやリアウィングだけでなく、シャシー下面を流れる空気を利用してダウンフォースを発生させている。ポントレモリ氏の発言は、このダウンフォースの発生割合について、シャシーまわりを重視するとのことで、ボディ全体で速く走るために必要なダウンフォースを作り出していくことを示唆している。

 現在、SF19について公開されている情報は少ないが、松田選手はSF19の第一印象について「かっこいいよね」と評価。トップドライバーにとってもSF19のデザインは評価できるもののようだ。

 ただ、オーバテイクをしやすくするため、フロアを重視するということについては若干の不安があるという。一般に空気の層は、スムーズに流れる層流や、乱れて流れる乱流という言葉で表現されることがあり、乱流の英語がturbulence(タービュランス)となり、レース解説では「タービュランスの発生によりドライバーが抜きづらい」などと表現されることがある。

 松田選手によると、フロアでダウンフォースを稼ぐため空気の流量を増やすと、リアウィングでダウンフォースを稼ぐより空気の乱れの影響が大きくなりそうだとのこと。これは、フロアの幅がリアウィング幅より長いことが影響しており、フロアが発生する乱流の影響は一般的により狭いリアウィングからの乱流よりも後続車に大きくなってしまうとのことだ。

 ただ、実際にフロア幅のどの程度を使ってダウンフォースを発生させるか、どの程度乱流が幅方向で増えるのかがポイントといい、実際のマシンの仕上がりが楽しみだとした。ダウンフォース発生には空気の流速の差があればよく、フロア下を通過した空気が整っていれば(層流であれば)、乱流問題は小さくなる。しかしながら、フロア下を通るなど一般的になんらかの影響を受けた空気は乱流になることが多く、松田選手は実体験からそれを心配していることになる。

 ポントレモリ氏が示唆する、フロア下でダウンフォースを稼ぎながら抜きやすいクルマを実現するには、乱流の発生量が幅方向に大きくならないようにしながら、より多くの空気を効率よく利用するクルマということになる。ポントレモリ氏は、「すでにCFD(Computational Fluid Dynamics、数値流体力学。数値流体力学シミュレーションソフトの略称)を回している」といい、シミュレーションによってマシンの形状を作り上げつつあるようだ。

 2018年2月より風洞実験開始、6月テスト車両完成、7月走行テスト開始というスケジュールなので、いずれダラーラがどのようなアイデアの元にマシンを作り上げたか見ることができるだろう。

 松田選手についてオーバーテイクについて確認質問してみたが、現在のスーパーフォーミュラで使われているOTSはよい仕組みだという。F1ではDRS(ドラッグリダクションシステム)という仕組みを使ってオーバーテイクを演出。DRSは使った瞬間に抜けることが分かるが、OTSではエンジンパワーの増加のため必ずしも抜けることが決まっておらず、レースを見る側として楽しめるという。

 SF19ではOTS採用が決まっており、オーバーテイクしやすいという新たなボディ形状が加わることで、よりレースは見ていて楽しい方向に向かうだろう。SF19では安全性の向上も図られており、さらにラップタイムも向上し速さも手に入れるとするならば、F1に匹敵するエキサイティングなフォーミュラレースを日本で手軽に見られる時代がやってくるのかもしれない。

【お知らせ】鈴鹿サーキットで10月22日に開催予定の決勝レースは台風接近に伴い中止になりました。これに伴い鈴鹿サーキットではチケットの払い戻しを実施しています。詳細は鈴鹿サーキットのWebサイトを参照ください。