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【SUPER GT 最終戦もてぎ】GTA定例会見。DTMは2リッター直噴ターボエンジンを導入決定したとITR ゲルハルト・ベルガー会長が明言
「ここからが本当のスタートだと考えている」と坂東 GTA代表
2017年11月11日 18:31
- 2017年11月11日 予選
- 2017年11月12日 決勝
SUPER GT最終戦「2017 AUTOBACS SUPER GT Round 8 MOTEGI GT GRAND FINAL」が、11月11日~12日の2日間にわたってツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)で開催されている。全8戦で開催されているSUPER GTもこのレースが最終戦となり、GT500、GT300ともにチャンピオン決定がこの最終戦に持ち越されており、今回のレースの結果でチャンピオンが決まる。
この最終戦で大きな話題となっているのが、SUPER GTと共通車両ルールとなる「Class1」の策定に向けてコラボレーションを行なっているDTM(Deutsche Tourenwagen Masters、ドイツのレースシリーズ)に参戦している3メーカー(アウディ、BMW、メルセデス)によるデモ走行だ。DTMの車両が日本のサーキットを走るのはこれが初めてということもあり、大きな話題を呼んでいる。11月11日の午前には、SUPER GTを主催するGTアソシエイション(以下、GTA)の記者会見に、DTMを運営するITRの会長を務めるゲルハルト・ベルガー氏も参加して、SUPER GTとDTMのコラボレーションについての説明を行なった。
アウディ、BMW、メルセデスと、レクサス、日産、ホンダの6台が日本のサーキットを走る
8時45分から行なわれたSUPER GTのフリー走行は、10時30分にGT500の占有走行のチェッカーが出され終了した。その後にコースインしたのは、聞き慣れた2リッター直噴ターボエンジンのサウンドとは異なる、V8ターボエンジンのサウンドを轟かすGT500によく似た車両、それがDTMのレーシングマシンだ。
DTMはドイツで行なわれているツーリングカーレースで、日本のSUPER GTのGT500に近いレーシングカーを利用して行なわれているレースとなる。というのも、現在のSUPER GTのGT500の車両規則は、DTMの車両規則を2014年から採用しており、車両そのものに関しては共通になっているからだ。ただし、エンジンに関しては、DTMがV8ターボエンジン、日本のSUPER GTはNREと呼ばれる2リッター直列4気筒直噴ターボエンジンとなっているという違いがある。元々の予定ではDTMもNREに合わせた規定にするという予定だったのが、ドイツ側の事情で導入が延期されて今に至るという形になっていたのだ。
それが今年に入り、メルセデス・ベンツが2018年限りでDTMから撤退を決めるなど状況が大きく動き、ドイツ側でも急速に規則を統合するという方針に向かうことになった。先月末にドイツのホッケンハイムで行なわれたDTM最終戦に、SUPER GTのレクサス LC500、日産 GT-Rの2台が持ち込まれ、デモランを実施するなど急速に統合へ向けた動きが進みつつあった。今回のツインリンクもてぎのレースでは、逆にDTM側の3台の車両が持ち込まれ、デモランを日本のファンの前で行なうことになったのだ。
ツインリンクもてぎに登場したのは、77号車 Audi RS5 DTM(ロイック・デュバル選手)、31号車 BMW M4 DTM(アウグスト・ファルフス選手)、63号車 Mercedes-AMG C 63 DTM(マロ・エンゲル選手)のDTMに参戦しているアウディ、BMW、メルセデスのそれぞれ1台。レクサス LC500、日産GT-R、ホンダ NSX-GTという日本のSUPER GTの3メーカーの車両も加わってのパレードランが行なわれた。10月にホッケンハイムで行ったときにはホンダのNSX-GTは不参加だったので、日独の6メーカーの車両が同じコースを、同じ時間に走るというのは初めてのことになる。
ITRのベルガー会長が、DTMへの2リッター直噴ターボエンジンの導入を明言。2019年からとなる見通し
11時15分からはGTA主催の定例記者会見が行なわれ、GTA 代表取締役 坂東正明氏、ITR 会長 ゲルハルト・ベルガー氏により、GTAとITRの協力体制などが説明された。
この中でベルガー会長は「欧州側は現行のV8エンジンを、2リッターターボエンジンにすると決めた」と述べ、ITRとアウディ、BMWのメーカーが現在SUPER GTで利用されているエンジンと同方式のエンジンを採用することを決定したと明言した。具体的な時期に関してベルガー氏は明言しなかったが、会見後に行われたアウディ モータースポーツ部長 ウォルフガング・ウルリッヒ氏の共同インタビューでは、ウォルフガング氏は2019年から導入される予定だと説明しており、2019年のシーズンには日本とドイツの双方で同じ車両でシリーズが戦われる可能性が高いとということになる。
ベルガー会長:今回、日本招待いただき感謝している。日本に戻ってくることができてうれしい。個人的にも日本にファンは沢山いるし、ホンダ時代によい時を過ごしたメカニックもいる。今回の記者会見にも来てくださっている田辺さんは、F1でホンダ時代に私のエンジニアを務めてくれた。
今回ここに来たのは、もちろんそうしたF1時代の話しとは別の理由だ。DTMの運営に責任を持つようになり、坂東さんと協力して同じルールに下でレースをすることを模索してきた。日本側の関係を深めて努力を続けることで、DTMの最終戦でSUPER GT車両のデモ走行を行うことができた。そこで今回は我々の3つのメーカーが日本に来て、レーシングカーやドライバーをお見せすることで、よりよい関係が作れると考えている。
現在我々が取り組んでいるのは見解を深めるだけでなく、日欧共有のレギュレーションを策定することだ。それにより、日本と欧州のプレミアムブランドが同じレギュレーションの下で同じレースを戦うことが可能になる。このため、欧州側は現行のV8エンジンを、2Lターボエンジンにすることを決定した。
今朝も行なったが、今後も行なってミーティングの中で、同じレギュレーションを採用した後で、どんな提携ができるのか、そしてそれをどのように発展していくかを詳細に検討していく。日本、欧州のファンにとってよりよいレースを実現し、最終的に交流戦が実現できるようにしていきたい。非常に厳しい議論だったが、同時に建設的な議論でもあった。
(SUPER GTのレースに来た感想を聞かれ)ここの雰囲気は最高。素晴らしいファンがいて、ピットレーンには所狭しとクルマが並んでいる。なぜSUPER GTというプラットフォームが成功しているのか理解することができた。また、今回DTM車両を走らせるにあたり、日本のマニファクチャラーにも協力していただき感謝している。メーカー全てが協力しなければ、我々はスタートきないのだから。
坂東代表:先月行なわれたDTMのホッケンハイム戦で、GT-RとLC500の2台をドイツのファンにお見せすることができ、今回は3台のDTMマシンを日本に持ってくることがきた。ITRのベルガー会長、そしてドイツのメーカーにも協力していただき、光栄なことだと思っている。これはSUPER GTとDTMの交流戦に向けた第一歩で、長い間交渉してきて、それがようやく進んだという感慨をもっている。
これまでは言葉で説明しているだけだったが、今回は実際に目の前で見ていただけた。ホッケンハイムでLC500とGT-Rをごご覧いただいた時も胸熱だったが、今日は音を聞いて匂いを感じると詰まるモノがあるので、窓越し、ガラス越しに見ていた。6つの車両がここにあるということに、ITRとの距離が縮まった、そう感じている。
また、やるからにはファンの共感を得られるように考えないといけない。日本のSUPER GTのあり方は欧州とは異なっている。レースをファンの方が見に来ていただける環境を作ることが大事で、そこはマニファクチャラーに任せるのではなく、GTAがきちんと取り組んでいかなければならない。サーキットにお客様が集まっていただけることが価値であって、その道を間違わないように交流戦のあり方も作らないといけない。
2018年でメルセデス・ベンツがDTMから撤退すると発表されているが、日本にもベンツファンは多い。これからそれと覆すというのは難しいことだとは思うが、日本のファンが応援しており、ここに参加してもらうことがマーケティングや販売促進につながり、日本のファンが応援していることを理解していただければ話し合える余地があるのではないかと考えている。
ホッケンハイムにSUPER GTの車両を持っていった時、日本からのスタッフは歓待を受けた。現地のレースもあるのに、メカニックも出していただき、ドイツ側の対応に感謝したい。それもあって今回はドイツから来ている皆さんにお返しできるようにテントなどを用意している。最終的に交流戦を意識しながらお互いにやっていかないといけない。本当にベルガー氏をはじめ、さまざまな方の協力でここまで来ることができ、感謝したい。ここからが本当のスタートだと考えている。