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【SUPER GT 最終戦もてぎ】Audi RS5 DTMのデュバル選手とウルリッヒ前監督、SUPER GTとDTMのコラボレーションについて語る

DTMとSUPER GTの違いは大きく2つある

2017年11月11日 予選

2017年11月12日 決勝

アウディのAudi RS5 DTMをドライブしたロイック・デュバル選手

 SUPER GT最終戦「2017 AUTOBACS SUPER GT Round 8 MOTEGI GT GRAND FINAL」が、11月11日~12日の2日間にわたってツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)で開催されている。今回の最終戦には、ドイツからゲストとしてドイツのツーリングカー選手権DTMを主催しているITRのゲルハルト・ベルガー会長や、参戦している3メーカー(アウディ、BMW、メルセデス・ベンツ)の車両が招待されており、11月11日~12日の両日にDTM車両によるデモ走行が行なわれている(GTA定例会見。DTMは2リッター直噴ターボエンジンを導入決定したとITR ゲルハルト・ベルガー会長が明言)。

 そうしたDTMのデモ走行に参加したアウディの77号車 Audi RS5 DTMをドライブしていたのが、ロイック・デュバル選手だ。2016年までアウディのWECドライバーだったデュバル選手だが、昨年末にアウディがWECからの撤退を決定したことで、2017年はDTMに転進して引き続きアウディのワークスドライバーとして活動している。2010年のSUPER GT王者でもあるデュバル選手が、SUPER GTとDTMの違いについて説明した。

SUPER GTとDTMの違いは、スプリントがセミ耐久のレースフォーマットとタイヤ戦争の有無

 ロイック・デュバル選手は、2010年にホンダのHSV-010 GTを、小暮卓史選手とコンビを組んでドライブし、チャンピオンを獲得した経歴の持ち主だ。その後、アウディからWECに転進し、2013年にル・マン24時間の総合優勝、そしてWECのドライバーチャンピオンに輝き、今や世界のトップドライバーの一人と言っていいだろう。昨年末でアウディがWECのプログラムを終了したのに伴い、デュバル選手は活動の場をDTMに移し、引き続きアウディのワークスドライバーとして活躍を続けている。

ロイック・デュバル選手

 今回、アウディがDTMの車両をツインリンクもてぎでデモ走行をさせるにあたり、そのドライバーとしてデュバル選手が選ばれたというのも自然な流れだろう。デュバル選手は、今回のレースでパドックにいる旧知の関係者を訪ねて回るなど旧交を温めていたほか、多くのファンからサインを求められるなど、相変わらずの人気を誇っていた。

 デュバル選手によれば、DTMとSUPER GTの違いは大きく2つあるという。1つめはレースフォーマットの違いであり、もう1つがタイヤ戦争の有無だという。

「DTMは1人のドライバーによるスプリントレースであり、SUPER GTは2人のドライバーによるセミ耐久になる」(デュバル選手)のとおり、SUPER GTでは複数のドライバーによるセミ耐久になっているのに対して、DTMではドライバーは1人でのスプリントレースが土日に1回ずつ行なわれるというレースフォーマットになっている。このため、レース車両もスプリントレースを戦うことを前提に設計されており、そこがSUPER GTとの大きな違いになっている。

DTMが韓国のハンコックタイヤのワンメイク

 そしてもう1つのタイヤに関しては、DTMが韓国のハンコックタイヤのワンメイクであるのに対して、SUPER GTはブリヂストン、ミシュラン、横浜ゴム、ダンロップ(住友ゴム)の4社によるタイヤメーカーの競争が前提になっており、それがレースを面白くしている側面と、そしてタイヤメーカーの負担による公式テストが可能になるなど経済面でのメリットにもなっている。

 デュバル選手によれば「タイヤに関してはタイヤ開発競争が行なわれているSUPER GTの方がハイグリップで速さに貢献していることは間違いないが、タイヤで勝負が決まってしまう側面もある。DTMのワンメイクタイヤはグリップなどではSUPER GTのタイヤには及ばないが、その半面使い方によってはレース終盤にはグリップの低下が発生しそれがレースを面白くする要因にもある」とのことで、一概にどちらがよいとは言えない側面もあるとのこと。逆に言えばそれぐらい2つのレースの”キャラクター“は大きく違うというのがデュバル選手の説明からよくわかると言える。

2.0リッター直噴ターボエンジン規定は、DTMでも2019年から導入されるとアウディのウルリッヒ前監督

アウディスポーツの代表を務め、現在もチームにとどまってアドバイザー的な役割を果たしているウォルフガング・ウルリッヒ氏

 昨年までアウディスポーツの代表を務め、現在もチームにとどまってアドバイザー的な役割を果たしているウォルフガング・ウルリッヒ氏は「今回の合意はDTMとSUPER GTのコラボレーションのスタート地点になる」と述べた。ウルリッヒ氏は「まずは日独のメーカーが同じスタートラインに立つことが重要。ロイックの言うとおり、2つのシリーズにはレースフォーマットやタイヤなどに大きな隔たりがあるが、それはこれから詰めていけばいい」と述べ、日独のメーカーがまずは同じ規定で車両を作ることが重要であり、細かいことは今後の議論の中で話し合っていけば良いという見解を明らかにした。

 GTAの坂東代表とITRのベルガー会長の記者会見では、DTM側が2.0リッター直列4気筒直噴ターボエンジン(日本側の呼称ではNRE)のエンジン規定の導入が決定したことが明らかにされたが、それがいつかということは明確にされなかったのだが、ウルリッヒ氏は2.0リッターエンジン規定はDTMでも2019年から導入されるのかという質問に対して「そのとおりだ」と述べ、2019年からDTMとSUPER GTの車両規定が1つになることが明らかになった。

 その場合、アウディがSUPER GTのGT500に参入することがあり得るのかという質問に対しては「車両のルールが統一されれば、我々の車両をSUPER GTに走らせることは可能になる。その場合、SUPER GTのGT500にアウディが参入するというのもあり得ないことではない」と述べ、可能性はあると説明した。ただし、「現時点ではもちろん何も決定されておらず、どうするかは今後の検討次第だろう」と述べ、あくまで現時点では検討する可能性があるというニュアンスであり、例えば2019年にアウディがGT500に参入するということではないとのことだった。

 今回のツインリンクもてぎのDTMデモで感じたのは、以前からSUPER GTとDTMのコラボレーションは、SUPER GT側は熱心に呼びかけているが、DTM側は及び腰というイメージだったが、今回DTM側は3台の車両を持ち込み、以前よりも明らかに前向きになっているという印象だ。2019年から車両における唯一の差だったエンジンのルールが統一されることで、GTAの坂東代表の悲願だった交流戦に向けて、1歩も、2歩も踏み出したと言え、2019年以降に交流戦が開催されることが現実的になってきた言うことができるだろう。

DTMに参戦している3メーカー、アウディ、BMW、メルセデス・ベンツの車両