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佐藤琢磨選手が小学生レーサーを2日間レッスンした「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE 2017 ACADEMY」レポート
ポッキーの日にマンツーマン指導
2017年11月15日 17:47
- 2017年11月11日~12日 開催
11月11日~12日の2日間、鈴鹿サーキット国際南コース(三重県鈴鹿市)において、レーシングドライバーの佐藤琢磨選手による小学生を対象としたカートイベント「グリコ×With you Japan“TAKUMA KIDS KART CHALLENGE 2017 ACADEMY”」が開催された。
この「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」は、佐藤琢磨選手が主催する復興地応援プロジェクト”With you Japan”が立ち上げたもので、「モータースポーツの楽しさを通じて復興地を応援しよう!」とカートを通じて全国の子供達が触れ合うことを目的としている。
5年目を迎える今年は全国10カ所のサーキットでタイムトライアルを行ない、上位40名を選出。11月3日に行なわれた「FINAL」の上位10名が、今回の「ACADEMY」において佐藤琢磨選手から直接レッスンを受けることになった。
今回のACADEMYがFINALまでと大きく違うのは、使用車両がレンタルカートから125cc、6.8HPのROTAX「Micro Max」エンジンを搭載したレーシングカートに変更されたこと。このカートは小学生を対象としたもので、今回は体重38kgをベースとしたセッティングを実施。それより軽い場合にはウエイトを積み、重い場合はそのままという調整が行なわれた。このエンジンはMAXシリーズではもっとも出力を抑えた仕様となるが、それでも最高速は70km/hほどになるとのことで、より実践的で本格的なプログラムになっているわけだ。
11月11日(ポッキーの日)は、琢磨選手によるマンツーマンの熱血指導
11月11日の最初のプログラムとなる開会式で、琢磨選手は「今回はレーシングドライバーになるための第一歩」だとするとともに、「みんなは(今年参加した858人の)代表に選ばれたのだから自分自身の自覚、立場や置かれている状況をもってしっかりと挨拶から始めて、お礼も言えないといけない」と、スポーツマンとしての心がけを強調。また、「カートも突然どこかからか降って湧いたものではなく、多くの人達が準備してくれたもの。感謝の気持ちを持って大切に扱って、自分のパートナーになるワケだから最高に仲良くなって、みんなが笑顔で(このイベントを)終われるようにしたい」と話した。
続けて、モータースポーツは危険が伴うとした上で、「ルールをキッチリと守ればこんなにエキサイティングな素晴らしいスポーツはないと思っているし、たくさんの人達に感動や夢を与えられる。本当に素晴らしいスポーツだと思っています」と前置き。
だからこそレースでは「コーナーの出口で押し出したり、相手のラインをカットしたり、追突したりは絶対によくない」と危険な行為に言及。「そうやって勝ったとしてもそれはあまり美しい勝ち方ではないし、なってしまった時は仕方ないけれど降りた後にキチンと謝って話をして、どうしてそういう状況になってしまったかを自分の中でも整理してほしい」と、レーサーとしての心構えを説いた。また、今回のイベントでは「速く走るのも1つ。でもレースではないのでレーシングカートをしっかりと感じながら、一歩一歩自分の中で整理をしながら少しずつ早くなっていく、その過程をみんなに楽しんでもらいたい」と、エールを送った。
その後、コースへと場所を移し、実際にカートへ乗り込んでのレッスンとなった。最初はコースの一部を使用し、パイロンを置いてのスラロームと、フルブレーキングの練習を実施した。
琢磨選手は「レーシングカートに乗って“怖い”と思うのは“スピードが出てコントロールできないだろう”と感じるため」だと説明。「クルマと体が一緒になる感覚に持っていきたい。クルマをコントロール下に置くことができれば、どんな状況でも自分がコントロールできるんだ、と自信が付くから怖さはグッと少なくなる。そうすれば技術も同時に身に着けられる」と、この練習の意義を説いた。
練習は5名ずつ2クラスに分かれて行なわれたが、さすがに全国から選出されてきたメンバーだけに、レーシングカートに乗るのは初めてという選手がいるとは思えないほど走りはスムーズ。琢磨選手は1人ひとりの走りをチェックし、「フルブレーキングではタイヤをロックさせてしまってもいいから、もっとキッチリ最後まで止まって」など、アドバイスを送っていた。
休憩を挟んでフルコースを使ったフリー走行に。今度は琢磨選手もカートに乗って隊列を先導したり、前や後ろについてチェックをしたり。時にはカートを降りて気になる選手に駆け寄ったりと、まさにマンツーマンの熱血指導。傍から見ていても教師役がよく似合う印象だった。
琢磨選手に1日目の印象を尋ねてみたところ、「初めてカートに乗る子供達から、今回はレーシングドライバーを目指す子供達のアカデミーということで、カリキュラムの内容はこれまでよりずっとずっと濃くして、レースに特化して初めてレーシングカートを体験してもらうというカタチになっていますが、子供達の走りたくて走りたくてたまらないという表情がよいですね」と話した。
開催2日目、タイムトライアルや模擬レースで子供たちの成長を確認
2日目もスラロームとフルブレーキングの練習を経て、フルコースでのフリー走行へ。その後、模擬レースのグリッドを決めるタイムアタックとなったが、選手たちから「タイヤが温まらない」との意見が出され、周回数を5周から7周に増やす場面も。そうして行なわれたタイムアタックでは59秒台のタイムも! 同様のカートを使った世界選手権のトップが58秒台だというから、琢磨選手の指導はもちろんのこと、子供たちのレベルアップの速さには驚くばかりだった。
イベントの締めくくりにはローリングスタートからの模擬レースを2ヒート実施し、2日間にわたったプログラムは終了。閉会式において琢磨選手は「ホントに素晴らしいレースでした。それぞれが最高の走りをしたと思うし、悔しい思いをしたドライバーも多かったと思うんだけれども、逆に悔しさをバネにして次はよいレースができるように、さらに腕を磨いていってほしいなと思います」と総括。「お互いよいライバルとして共に技を磨きあって成長してもらいたいと思います」と締めくくった。