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Nauto CEO ステファン・ヘック氏の事業戦略説明会リポート。AIによる自動運転で「交通事故回避に3000億km分の走行データが必要」

法人向けドラレコで自動運転に向けたデータ収集を実施

2018年1月17日 実施

Nauto 共同創業者兼CEOのステファン・ヘック氏

 Nauto(ナウト)は1月17日、来日した共同創業者兼CEOのステファン・ヘック氏による事業戦略説明会を開催した。Nautoはドライブレコーダーを法人向けに展開しているが、そのデータを活用して自動運転の実現につなげていく。自動運転では衝突事故の削減のほか、交通の有効化や車両稼働率の向上も目標。現時点で日本のソフトバンクが大株主となっており、自動車メーカーではトヨタ自動車、BMW、GMが出資している。

LTE通信機能を持ち、画像解析をする法人向けドライブレコーダー

 現在Nautoが展開している商用車向けのドライブレコーダーは、単なる製品としてのドライブレコーダーではなく、LTEの通信機能を持っており、単体でネットワークと接続し、リアルタイムで情報をサーバーにアップロードして解析していくという特徴がある。

 ドライブレコーダーは後付タイプが用意されており、前方カメラだけでなく、室内から後方向けにもカメラがあり144度の広角でドライバーの動きなどを記録できる。ドライバーと外部の様子が同時に記録できるため、事故やニアミスが起こった際、ドライバーのハンドル操作や加減速操作まで把握できる。事故原因の解明というだけでなく、事故に至らずに回避できた場合の運転ノウハウについても収集を進めている。

 Nautoのドライブレコーダーは単に映像を記録するだけではなく、AIを内蔵。例えばドライバーが携帯電話を触っているなど脇見運転をした場合は、画像を解析して警告を出す。飲酒運転や居眠り運転も画像などから判断できる。警告によって事故回避のためにブレーキ操作などを行なえば、事故を防いだり被害を軽減したりすることもできる。

現在の課題
今度の変化
将来の目標
学習ループを形成する

 実際にアメリカのタクシーでは2割ほどの事故削減効果があり、とくに脇見運転を削減、すぐ前のクルマに衝突する事故を減らしたとしている。高リスクドライバーの特定や事故処理の効率化などから、現在のところ保険会社と緊密に展開しているという。

 そして、Nautoはこのシステムを使って学習ループを形成。クルマが走行してクラウドにデータを送信、運行管理に役立てる。

車載カメラの概要
車載カメラ
車載カメラには運転席側にも広角カメラが搭載され、運転者側の様子も記録する
クルマに装着したところ
運転席側から見たところ

交通事故を回避するために3000億kmの走行データを収集中

 Nautoでは「人間の運転傾向の理解が自動運転技術開発にとって必要不可欠」とこの情報を自動運転につなげるとしている。

 ステファン・ヘック氏は現在の自動運転の進化は「若いときにいろいろな運転をして勉強したのと同じように、AIが運転を学んでる段階」とし、「AIが180億km以上運転しないと人並みにならない」と説明、さらに「交通事故を回避するためには3000億kmの走行が必要」とし、データを収集しているとした。

 事故が発生した際のデータはもちろんだが、ニアミスや事故が回避できたときの情報も自動運転の進化に必要としたほか、実際のデータと実験データの組み合わせが最良の結果を導くとした。

商用車のドライブレコーダーから自動運転への活用
現在の人間の運転による死亡率にするには180億km以上
確実な信頼性の自動運転車には3000億kmの走行データが必要

日本での展開はまだ。メーカーが車両に埋め込む可能性も

 このドライブレコーダーは、現在のところ日本では未展開。今回の事業戦略説明会では日本でのドライブレコーダーのサービス展開時期などについては触れず、自動車メーカーとの協業のなかで実際に技術が使われる時期や、必要な3000億kmの走行の進捗についても機密事項としてコメントされなかった。

 このシステムはオープンプラットフォームとして運営される。現在、大手5社と協業を進めており、そのうち、協業を明らかにしているのはトヨタ、BMW、GMの3社。各自動車メーカーとの協業内容については、リスクイベントや定められた時間帯の運転状況をシェアするといった契約になっている。自動運転のアルゴリズムやエンジニアリング情報を共有するものではないと説明した。

自動車メーカーとの協業の様子

 なお、自動車メーカーと協業してドライブレコーダーを搭載する場合には、後付とは違ってもっと精度の高いデータを取得するとしており、車両の走行データを直接取得することなども考えられるとしている。

ドライブレコーダーを手にするNauto 共同創業者兼CEO ステファン・ヘック氏