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【NGK 鈴鹿2&4】スーパーフォーミュラ開幕戦鈴鹿、山本尚貴選手が2年ぶりのポール・トゥー・ウイン

横浜ゴムの新2スペックタイヤがドラマを生む

2018年4月21日 予選開催

2018年4月22日 決勝開催

2016年以来、山本尚貴選手(16号車 TEAM MUGEN SF14/Honda HR-417E)が2年ぶりのポール・トゥー・ウイン

 2018年 全日本スーパーフォーミュラ選手権の開幕戦となる「2018 NGK スパークプラグ 鈴鹿2&4レース」が、4月21日~22日の2日間にわたって鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催され、22日には決勝レースが行なわれた。

 決勝レースで優勝したのは、土曜日の予選でポールポジションを獲得していた山本尚貴選手(16号車 TEAM MUGEN SF14/Honda HR-417E)。ピットストップ時には、まだピットストップしていない車両にトップを譲ったこともあったが、それがなければトップを維持したままポール・トゥー・ウインで優勝した。

 2位は予選14位からチームの迅速なピットストップと持ち前の速さで追い上げた関口雄飛選手(19号車 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14/TOYOTA RI4A)、3位はスタートでミスして順位を下げたものの、レースでそれを取り返してみせた野尻智紀選手(5号車 DOCOMO DANDELION M5S SF14/Honda HR-417E)が入った。

予選で1-2を占めた無限勢が無難なスタート。5位スタートの塚越広大選手が猛烈な追い上げでトップに迫る

 13時50分にスタートした決勝レースは、ポールポジションを取った山本尚貴選手(16号車 TEAM MUGEN SF14/Honda HR-417E)、2位からスタートした福住仁嶺選手(15号車 TEAM MUGEN SF14/Honda HR-417E)がそろってきれいなスタートを切って、1コーナーにワンツーで入っていった。

スーパーフォーミュラ開幕戦のスタートシーン

 これと対照的なスタートになってしまったのは、予選3位からスタートした野尻智紀選手(5号車 DOCOMO DANDELION M5S SF14/Honda HR-417E)。蹴り出しこそわるくなかったものの、すぐに失速、これにより大きく順位を下げてしまった。それにより順位を上げたのは予選4位の伊沢拓也選手(65号車 TCS NAKAJIMA RACING SF14/Honda HR-417E)、予選5位の塚越広大選手(17号車 REAL SF14/Honda HR-417E)で、それぞれ1つずつ順位を上げた。

 序盤戦に目立ったのは塚越広大選手。最初のラップ終わりのシケインで前を走る伊沢選手をオーバテイク。そして3周目の1コーナーで、2位を走っていた福住選手を抜き2位に浮上した。その後、塚越選手はトップの山本選手に迫り、序盤は山本選手と塚越選手のホンダ勢同士の熾烈なトップ争いが展開された。何度か塚越選手が山本選手に追い抜きをかけるものの最終的には追い抜くには至らず、山本選手はピットストップを行なうまでトップを維持した。

 上位陣で最も早くピットに入ったのは山下健太選手(4号車 ORIENTALBIO KONDO SF14/TOYOTA RI4A)。ソフトタイヤを履いてスタートした山下選手はミディアムタイヤに交換して、コースに戻っていった。その後多くの車両がピットインして給油、タイヤ交換していったが、いち早く新しいタイヤに換えたこともあり、ピットに入った中ではトップを走り続けることになっていった。2位を走っていた塚越広大選手は20周目にピットイン。他車に比べて給油時間は短く、この時点で塚越選手は2回ピット作戦だとほぼ推定された(実際に後にそうなった)。

 そうしたレース中盤に急速に順位を上げてきたのが関口雄飛選手(19号車 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14/TOYOTA RI4A)、平川亮選手(20号車 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14/TOYOTA RI4A)の2台。いずれもチーム・インパルの非常に迅速なピット作業に助けられ、両者がピット作業を終えてみると、関口選手はピット作業を終えた中では、塚越選手、山下選手に次ぐ3番手でコースに戻ることになった。ところがその関口選手がピットアウトすると、先にピット作業を終えていた平川選手が急速に迫る。先にピット作業を終えていた平川選手はタイヤが暖まっており、ピットアウトしてきたばかりの関口選手より速かったのだ。25周目のヘアピンで追いつき、平川選手が関口選手のインに入ってオーバーテイクを仕掛けた。ところが、2輪がダートにでてしまい、アウト側の関口選手のホイールに乗り上げて、そのままバリアにクラッシュしてしまった。危うく同士打ちになるところだったが、関口選手はクルマには影響がなくそのまま走り続けた。

山本選手はトップを維持してそのまま優勝。14位から猛烈な追い上げを見せた関口選手が2位に入る

 トップを走っていた無限の2台がピットに入ったのは31周目と32周目。2位を走っていた福住仁嶺選手が31周目、トップを走っていた山本尚貴選手が32周目にピットに入った。ところが同じチーム同士で明暗分かれるピットストップになってしまう。トップを走っていた山本選手は、(その時点でピットストップを終えた中では)トップのままコースに戻ったのに対して、2位を走っていた福住選手はピットアウト後に、ギアが6速にスタックしてしまい、そのままゆっくり1周してピットガレージに戻り、リタイアになってしまった。デビュー戦で予選2位という素晴らしい結果を得ただけに決勝でも活躍が期待されていた福住選手にとっては、残念な結果となってしまった。

 全車が1回目のピットストップを終えてみると、1位が塚越選手、2位は山本選手、3位は一番最初にピットに入った山下選手、4位に関口選手となっており、その後予想どおり塚越選手が2回目のピットストップに入り給油・タイヤ交換を行なうと、1位山本選手、2位山下選手、3位関口選手という順位になっていた。

 すでにソフト、ミディアムの2種類のタイヤを利用して義務を消化していた山下選手はそのまま走り続けるのかと思ったが、実際には山下選手は2ストップ作戦。終盤に2度目の給油・タイヤ交換を終えてみると、ポイント圏外に転落していた。これで表彰台圏内の3位に上がってきたのは、スタートでのミスを取り返した野尻選手。

 終盤のサーキットを盛り上げたのは、2ストップ作戦により2回目のピットストップを行なってポイント圏外まで転落していた塚越選手。前を走るニック・キャシディ選手(3号車 ORIENTALBIO KONDO SF14/TOYOTA RI4A)を2コーナーでオーバーテイクし7位に。さらに前を走る6位の国本雄資選手(2号車 JMS P.MU/CERUMO・INGING SF14/TOYOTA RI4A)に迫ると、シケインで追い抜きかけるが、その周の終わりに国本選手はガソリンが足りなくなり給油のためのスプラッシュストップを行なうためにピットイン。これで塚越選手は6位に浮上した。そのまま前を走る5位の伊沢選手に追いつき、最終ラップまでテールツーノーズの走りを続けるが、結局抜くことはできなかった。

 残り5周となった段階で、トップを走る山本選手と2位を走る関口選手の差は5秒とじわじわと詰まっていく。これは、前を行く山本選手が交換した寿命の短いソフトタイヤをセカンドスティントの序盤で大分使ってしまったのに対して、関口選手はソフトタイヤでスタートしたため、後半はミディアムタイヤで走っており、関口選手はタイヤのライフがまだ残っていたからだ。しかし、その追い上げも最終的に1.5秒まで詰まったものの、辛くも山本選手が逃げ切ってゴール、山本選手が2016年の開幕戦以来のポール・トゥー・ウインを達成した。

優勝した山本尚貴選手(16号車 TEAM MUGEN SF14/Honda HR-417E)
14位スタートながら2位に入った関口雄飛選手(19号車 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14/TOYOTA RI4A)
スタートで失敗しつつも、予選と同様3位になった野尻智紀選手(5号車 DOCOMO DANDELION M5S SF14/Honda HR-417E)

 2位はこれまでスーパーフォーミュラでは苦手としており、入賞すら経験がない鈴鹿での初入賞となった関口選手。3位はスタートのミスを挽回して3位となった野尻選手。4位には石浦宏明(1号車 JMS P.MU/CERUMO・INGING SF14/TOYOTA RI4A)、5位は伊沢選手、6位は塚越選手、7位はキャシディ選手、8位は中嶋一貴選手(36号車 VANTELIN KOWA TOM’S SF14/TOYOTA RI4A)となり、ここまでがポイント獲得となった。

決勝レース後の記者会見

 決勝レース終了後には、決勝レースで表彰台に上った3位までのドライバー3人と優勝チームの監督となるTEAM 無限 手塚長孝監督が登壇して、記者会見が行なわれた。

山本尚貴選手:嬉しい、のただひと言。後半は追い詰められる場面になって、心から喜べるものではないが。ポールからのスタートで、戦略としては自分とチームにできるベストを出せた。関口選手の終盤のスピードは驚異だった。今日は前に出られたり、前にクルマがいきなりいたり、自分に自信がなくなるぐらい展開が読めなかった。チームとさくら(本田技術研究所)に感謝している。

優勝した山本尚貴選手

手塚長孝監督:ポール・トゥー・ウィンで開幕戦を迎えられて本当に嬉しい。鈴鹿は本当に得意なのだと証明できてよかった。テストの時には戸惑いもあったけど、今回は予選から速さを見せることができた。これだけ汗をかいて疲れていることからも分かるように、山本選手が本当に頑張った。次戦のオートポリスでは新たなチャレンジになるが、今回は山本本当におめでとう。

TEAM 無限 手塚長孝監督

関口雄飛選手:昨日の予選はQ2で赤旗のタイミングがわるくて、14位という不本意な結果だった。その中で今日は2位まで追い上げることができたので満足している。

2位の関口雄飛選手

野尻智紀選手:この会見場にふたたび来ることができるような環境を用意してくれたチームとホンダに感謝したい。ただ、スタートでは取り返しのつかないミスをしてしまったのが残念だった。それでも今後も戦えるという手応えは得たので、悔しさをバネに頑張っていきたい。

3位の野尻智紀選手

――山本選手は通算4勝目で、お父さんになってから初優勝だが何か心境の変化はあったか?

山本尚貴選手:あ、僕まだこれで4勝目なの? 今までポール・トゥー・ウィンしかなくて、追い上げてという優勝はないのか、すみません(笑)。(子供ができたことは)どうですかね、報告する人が増えたというのが違いで、家族が増えて子供が増えて頑張る力を与えてくれた面はある。だが、子供ができたから頑張るという話ではなくて、これまでも同じように頑張ってきたので……。いい報告ができるというのは嬉しいことだが。

――序盤は塚越選手に追われる展開になったが?

山本尚貴選手:スタート前から何かしてくるとは思っていた。燃料が軽い状態での味を占めているチームなので。普通の戦略では前に行けないということもあって、福住選手を抜いた段階で軽いことは確信していたので、彼を前に行かせても負けることはないとは思っていた。しかし、後ろを走ってタイヤを痛めたくなかった。塚越選手を抑えたということは今日のレースのハイライトの1つだ。

――終盤に1分45秒台だったのは、セーブしていたのか?

山本尚貴選手:ピットアウトして余裕でトップなのかと思ったら、塚越選手が前に行ったと言われて、2ストップかなとは思ったけど、タイヤセーブしていると逃げられてしまう可能性があるのでプッシュした。その後、塚越選手がピットインしたのでタイヤマネージメントしていたけど、今度は山下選手が迫ってきていると言われてまたプッシュしたが、彼もピットに入ったのでまたタイヤマネージメントに戻った。そうしたら関口選手が来ていると言われたのでもう1回プッシュしたけど、思いのほか残っていなくて、残り数周は余裕がない状況だった。

――関口選手に。ピットアウトしたあと、チームメイトと接触した状況は?

関口雄飛選手:アウトラップだったので、自分もタイヤが冷えていて、そこに平川選手が来て、ペース速いんだけど、譲る訳にもいかなくて……。一応牽制したんですが、気がついたら(向こうが)空飛んでて……という状況だった。

――野尻選手に。スタート直後に失速しましたが、その時に何が起きていたのか?

野尻智紀選手:言いたくないです(苦笑)。すごく失速して、すごく後悔している。必ず取り返してやるという状況だった。

――関口選手はソフトでスタートして、24周ぐらいまでずっとソフトで走っていたが、タイヤの感触は?

関口雄飛選手:たれてきていたが、セッティングもタイヤの持ちもわるくはなかった。

――最初からソフトで行くことは決めていたのか?

関口雄飛選手:直前まで決まっていなくて、最初はミディアムで行くつもりだった。中盤戦だったらある程度流れは見えてきているのだろうけど、開幕戦なので。ただ、どちらにしても14番手からのスタートだったから、失うモノは何もなかった。今年から(星野)一樹さんが戦略面で入ってくれているので、「ソフトでいいんじゃないの?」って言って、じゃあそれで行きますって決まった(笑)。ただ、300kmのレースだとタンクの関係で15周までは入れない。それでまわりや前を見てから決めようと考えていた。

――手塚監督に。福住選手がリタイアした時の状況を教えてほしい。

手塚長孝監督:シフト系が入らなくなってしまって、原因を調べている。(この会見から)帰ったころには判明しているとは思うが……。

――次戦オートポリスに向けた意気込みや戦略などを教えてほしい。

山本尚貴選手:終わったばかりで次戦のことはまだ考えられない。今回は勝ったことには勝ったが、余裕があった訳ではない。2位になった関口選手がトップグループからスタートしたらぶっちぎっていたかもしれない。コースのキャラクターも変わるので、しっかりミーティングしてまた勝てるようにしていきたい。

関口雄飛選手:去年オートポリスではソフトは持ったが、今年のソフトは大変じゃないかと考えている。ソフトはたれてくるので、その分レースは楽しくなるのかなという予感はある。

野尻智紀選手:昨年は調子はわるくなかったが、ソフトのスペックが変わったりしているので、次に向けてしっかり準備していく必要がある。気温が上がるとセクター3ではタイヤがズルズルになってしまうかもしれないので、レースとしては面白くなるかもしれない。

――今回300kmのレース距離だったが、走っていてしんどい部分とかあったか?

山本尚貴選手:レースとしては面白かったのではないか。やっている方は楽な展開ではなかった。ただ、250kmの距離だと僕がぶっちぎったかもしれない。最後の関口選手の追い上げは、「300kmにしたらこうなるだろう」と誰か台本でも書いた人がいるのかという展開だった。

関口雄飛選手:開幕戦と最終戦が一番路面温度が低いと思うので、ソフトタイヤがまだ持ったという面があった。山本選手は「2~3周あれば」と言っていたけど、最後までタイヤが持ったかは分からなかった。開幕戦と最終戦はもっと柔らかいと面白いのではないか。

野尻智紀選手:僕の場合は、スタートで犯したミスを取り返す時間ができたので、300kmでよかった。体力的にも問題なかったし、乗ってしまえばやるしかないというところ。

山本尚貴選手:そういうこと言うと次は400kmって言われるだろ(大笑)。

野尻智紀選手:(山本選手のツッコミを受けて)きつかったです、本当に(大笑)。

決勝結果
順位カーナンバードライバー車両名エンジン周回数時間
116山本尚貴TEAM MUGEN SF14Honda HR-417E511時間29分25秒365
219関口雄飛ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14TOYOTA RI4A511時間29分27秒085
35野尻智紀DOCOMO DANDELION M5S SF14Honda HR-417E511時間29分39秒082
41石浦宏明JMS P.MU/CERUMO・INGING SF14TOYOTA RI4A511時間29分41秒246
565伊沢拓也TCS NAKAJIMA RACING SF14Honda HR-417E511時間29分56秒272
617塚越 広大REAL SF14Honda HR-417E511時間29分56秒650
73ニック・キャシディORIENTALBIO KONDO SF14TOYOTA RI4A511時間29分57秒940
836中嶋一貴VANTELIN KOWA TOM’S SF14TOYOTA RI4A511時間30分06秒832
94山下健太ORIENTALBIO KONDO SF14TOYOTA RI4A511時間30分10秒792
1018小林可夢偉KCMG Elyse SF14TOYOTA RI4A511時間30分12秒987
1137ジェームス・ロシターVANTELIN KOWA TOM’S SF14TOYOTA RI4A511時間30分14秒725
126松下信治DOCOMO DANDELION M6Y SF14Honda HR-417E511時間30分15秒535
132国本雄資JMS P.MU/CERUMO・INGING SF14TOYOTA RI4A511時間30分35秒845
1450千代勝正B-Max Racing SF14Honda HR-417E511時間30分38秒552
158大嶋和也UOMO SUNOCO SF14TOYOTA RI4A511時間30分54秒702
167ピエトロ・フィッティパルディUOMO SUNOCO SF14TOYOTA RI4A501時間30分57秒304
1764ナレイン・カーティケヤンTCS NAKAJIMA RACING SF14Honda HR-417E481時間30分53秒274
R15福住仁嶺TEAM MUGEN SF14Honda HR-417E3258分24秒576
R20平川亮ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14TOYOTA RI4A2442分41秒258