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横浜ゴム、新中期経営計画「GD2020」と関連してモータースポーツ事業を山石昌孝社長が説明

スーパーフォーミュラ開催中の鈴鹿サーキットで説明会

2018年4月22日 実施

スーパーフォーミュラ開催中の鈴鹿サーキットで、モータースポーツに関する横浜ゴムの取り組みを説明した横浜ゴム株式会社 代表取締役社長 山石昌孝氏

 2018年 全日本スーパーフォーミュラ選手権の開幕戦となる「2018 NGK スパークプラグ 鈴鹿2&4レース」が、4月21日~22日の2日間にわたって鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催された。4月22日の決勝レースの開催に先立ち、サーキット内の会場において横浜ゴム 代表取締役社長 山石昌孝氏による記者会見が行なわれた。

 この会見は、3月10日に横浜ゴムより発表された「2018年モータースポーツ活動計画」具体的に説明する場として用意された。山石社長のほか、取締役常務執行役員 野呂政樹氏、モータースポーツ推進室長 阿部義郎氏、MST開発部長 秋山一郎氏が同席して質疑応答も実施された。

新中期経営計画「GD2020」と密接な関わりがあるモータースポーツへの取り組み

 山石社長は3月10日に横浜ゴムより発表された、2018年モータースポーツ活動計画に関しての説明を行なった。山石氏は「横浜ゴムのモータースポーツ活動は、101年の弊社の歴史の中で今年61年目となる。それと同時に4月17日にはADVANブランドも40歳の誕生日を迎えた。みなさまのご愛顧に感謝し、今後も支持されるブランドとして努力していきたい」と述べ、横浜のモータースポーツ活動が61年という長い歴史を紡いで来たことを説明した。

 その上で「弊社がかかげる新中期経営計画『GD2020』とモータースポーツのかかわりという観点では、モータースポーツで先行技術開発を行ない、プレミアムタイヤのブランド向上のために重要な存在として位置づけており、そのGD2020のスタートの年として本年も積極的にモータースポーツ活動を行なっていきたい」とこれからも、横浜ゴムがモータースポーツ活動を積極的に進めることを強調した。

 山石社長は、横浜ゴムが2018年のモータースポーツ活動を行なうカテゴリーを紹介。ワンメイク(横浜ゴム1社供給)では、2018年からWTCCに代わって開始されるWTCR、スーパーフォーミュラ、F3、スーパーFJ、インタープロト、各国のポルシェのワンメイクシリーズなどにタイヤ供給を行なう。

「特にWTCRでは2006年からWTCCに供給してきた実績が評価されて、18年、19年のワンメイクタイヤサプライヤーに選ばれた。ほかにもTCR規格のレース、イギリス、ポルトガル、中東などにもサポートが決定している」と述べ、長年のWTCCへのタイヤ供給が評価され、世界選手権であるWTCRのサプライヤーになったことを説明した。

GD2020と関連してモータースポーツ活動を説明する山石社長

 コンペティション(競争)があるカテゴリーに関しては、SUPER GT、全日本カート選手権、VLN耐久選手権などに参戦するチームにタイヤを供給すると説明した。「GT500には24号車 フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R、19号車 WedsSport ADVAN LC500、16号車 MOTUL MUGEN NSX-GTの3台に引き続き供給。さらなる技術開発を行ない最先端技術で勝負する。GT300に関しては22チームに供給してシリーズチャンピオンの獲得を目指す」と述べ、SUPER GTに関しても従来どおりの体制で競争に勝つことを目指していくと述べた。

 最後にいわゆるBライ競技と言われているラリー、ダートトライアル、ジムカーナに関しては「全日本ラリー選手権、ダートトライアル、ジムカーナそれぞれに1台ずつ、ADVAN40周年を記念したADVANカラーの車両をエントリーする。また、スカラシップを設けてユーザー支援を行なっていく」(山石氏)と、そのサポート体制を説明した。

 最後に山石社長は、「横浜ゴムはBライからトップカテゴリーまで、安心して競技を行なえるようにサポートしていくことで、さらにモータースポーツを盛り上げていきたい」と述べ、草の根の競技からスーパーフォーミュラのトップカテゴリーまで幅広くサポートしていくと強調した。

スーパーフォーミュラに供給しているADVANレーシングタイヤ。2018年から全戦に2スペックタイヤを供給。写真はミディアムタイヤ
赤いラインの入ったADVANレーシングタイヤがソフトタイヤ
2018年はADVANブランド40周年となるため、タイヤのサイドには「40th」の文字がプリントされる。グリッドウォークなどで確認していただきたい

スーパーフォーミュラの先にはF1があると考えてはいるが、「現時点では決定していることは何もない」と山石社長

 山石社長の会見の後半では、山石社長および横浜ゴムの役員やモータースポーツ関連事業の責任者などが同席して質疑応答が行なわれた。

──ADVAN 40周年を記念したタイヤの発売などはあるのか?

阿部氏:常に開発はしているし、新しい技術を使ったタイヤは開発しているが、現時点で何かお話できるような決定事項はない。

横浜ゴム株式会社 モータースポーツ推進室長 阿部義郎氏

──他社に比べてモータースポーツの予算割合が高いという話もでていたが……。また、コンペティションに比べてワンメイクは社内でもあまり注目されないのか?

阿部氏:予算割合に関しては公表していない。世界のタイヤメーカーでレーシングタイヤを安定して供給できるメーカーはあまりなくて、販売も含めて積極的にやっているという話だ。

秋山氏:ワンメイクの方は1社供給で、不具合でレースが決まるということがないように責任を果たすことが大事。その半面、何かあった時には注目されやすいので、社内でもそこに注目が集まる面はある。

横浜ゴム株式会社 MST開発部長 秋山一郎氏

山石氏:横浜ゴムの強みは何なのかを再定義する必要がある。モータースポーツはそのルーツであり、再定義して取り組んで行きたい。レーシングタイヤの販売ベースで見ると、フランスのミシュラン、イタリアのピレリと弊社が販売本数では拮抗している。他社と比較すると、モータースポーツに積極的に取り組んでいることがアイデンティティとなっている。

──ADVAN40周年を記念して、その歴史的な車両などを展示するという計画はあるか?

阿部氏:今日富士スピードウェイで行われているイベント(モータファンフェスタ)でGC(グラチャン)カーを展示したりしているなどさまざまな活動をしている。今後も過去のクルマを展示するなどの取り組みは継続して行なっていきたい。5月の富士のSUPER GTではADVANクラブというファンクラブがあり、ファンクラブメンバー中心のイベントなどは検討しているが、具体的な計画はまだ考えられていない。

──モータースポーツ活動が、横浜ゴムの業績に与えている影響は?

山石氏:弊社のグローバルでのシェアは3.3%で、国内ではよいけど、海外では厳しい状況になっている。そうした中で欧州ではADVANブランドのレーシングタイヤがレースに使われて、それがプレミアムカーへの装着などにつながっていたり、ほかのブランドより認知度が高くて、高付加価値タイヤとして売れている。我々の中でもADVANの割合は大きく、収益に貢献している。一般的に高付加価値タイヤは10%ぐらいだと言われているが、それを超えることを目標としている。

──横浜ゴムのモータースポーツタイヤの開発拠点はどこになるか? また、ピレリがスーパー耐久やSUZUKA 10Hのワンメイクタイヤになるなど日本への進出を図っていることをどう捉えているか?

野呂氏:モータースポーツを技術開発として重要だと位置づけており、弊社の研究開発拠点となっている平塚を中心にモータースポーツタイヤの開発も行なっている。他社の動きに関しては言い方はあれかもしれませんが「不愉快」と思っており、日本だけでなく、ミシュラン、ピレリ、横浜ゴムという競争の中で日本を中心に世界で負けないようにしていきたい。

横浜ゴム株式会社 取締役常務執行役員 野呂政樹氏

──これからスーパーフォーミュラの決勝を迎えるが、2スペックタイヤになってどのような展開を予想するか?

秋山氏:正直、自分たちでも特性を全部把握できている訳ではない。昨日(4月21日)の予選では分かりにくかったと思うが、日曜(4月22日)午前のフリー走行を見ていると、それなりの距離を走るとソフトとミディアムの差はそれなりにある。各チームの戦略というのは現時点では予想がつかない。ソフトタイヤは作動領域が狭いけど、ピークを上げるという設定にしているので、温め方やタイヤマネジメントが勝負を分ける鍵になると考えている。

──これまでF3、スーパーフォーミュラと徐々にステップアップしてきた訳だが、それを踏まえて次の目標というのはあるか?

山石氏:(筆者注:質問がスーパーフォーミュラの先にF1があるのかということを言外にいっていることに答えて)何をおっしゃりたいのかよく分かりますが、これも本当に契約とかいろいろな問題とか、費用の問題などもあるが、タイヤメーカーである以上我々もそういうことを考えては行きたいとは思うが、現時点で決まったことは何もない。

──モータースポーツ事業をヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナルという子会社から本体に戻して1年が経ったが何か変わったか?

山石氏:私がここに来て話しているということが、本社がモータースポーツにコミットメントしているという何よりの証拠。新技術開発を推進していくために、平塚事業所、三島工場に昨年投資を行っている。その効果がでるこれからに期待してほしい。

──モータースポーツ事業によるブランド向上に特に期待したい地域は?

阿部氏:欧州だ。販路を含めてビジネス的な効果が大きい。WTCRを取りに行ったのも、欧州で効果があると考えたからだ。