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「パリモーターショー 2018」について、代表者 ジャン=クロード・ジロ氏に聞く

CESとのコラボレーションに「長期的に今後も続くことを願っています」

2018年5月8日 実施

パリモーターショー代表 ジャン=クロード・ジロ氏

 フランス見本市協会が5月8日に開催した「パリモーターショー 2018」記者会見では、来日した代表のジャン=クロード・ジロ氏が解説を行なった。

 ジロ氏は会計学と商学を修めた後、クライスラー・ヨーロッパの財務部門からキャリアを積み、1981年からフランスのボルボに、1986年からはルノートラックに勤務。2010年~2014年までルノートラックの渉外部門でディレクターを務め、2016年3月末までフランスのボルボ・グループで広報部門のディレクターを務めた。2016年6月1日にパリモーターショーの代表に就任し、現在はフランス天然ガス自動車協会(AFGNV)の会長、交通産業委員会(COFIT)の委員長も務めている。

 また、日本通のジロ氏は剣道7段の腕前を持ち、過去にフランスチームのキャプテンやコーチを務めたほか、ヨーロッパチャンピオンを6回、フランスチャンピオンを9回獲得した経歴も持っている。

 そのジロ氏にパリモーターショー 2018について、そしてパリモーターショーの今後について伺った。

剣道7段の腕前を持ち、インタビュー当日も刀をモチーフにしたネクタイピンを着用していた

――イベント名が新たなものとなりましたが、そのことについて教えてください。

ジャン=クロード・ジロ氏:もともと大臣指令によって創立された民間の会社がサロンの開催をしており、そのときから「自動車国際見本市」という名称で国際的なサロンを目指していました。そして20年前に自動車の世界見本市という意味の「Mondial de l'Automobile」としました。ただ、“Automobile”というとフランス語で自動車という意味でバイクなどは含まれないので、“mobile”を削除して“Auto”だけにして「MONDIAL DE L'AUTO」としました。そして、「Mondial de la Moto」「Mondial de la Mobilite」「MONDIAL.TECH」の3つを含めて「MONDIAL」としました。

 クルマからスクーターや自転車などに乗り換えるという使い方をする人も増えていますので、全てを見られるようにした方が来場した方のメリットになると考えました。これまでは違う世界というイメージがあったので、自動車の見本市に来られる方々はあまりバイクの見本市に行かないと考えていました。その逆もしかりです。しかし、隣り合わせで開催することでそれぞれの会場を行き来してみようかと思っていただけるかと思います。

 従来的な自動車見本市と一線を画すということで、2018年に120周年を迎えますが、新しいパリモーターショーの0年、あるいは1年と位置付けています。フランスには「進まないというのは後退することだ」ということわざがあります。特にエレクトロニクスの発展も著しく、世界が大きく変わっている中で、過去と同じことを繰り返していたのでは失敗に終わってしまうので、イノベーションを起こす必要があります。

 剣道もそうなのですが、前と横には動いてもいいですが後ろに下がってはいけない。また、トンボも同じでどのような方向にも飛びますが後ろには飛ばない。ビジネスも同じだと思っていて、その場に止まっていてはどんどんと追い抜かれてしまいます。

――パリモーターショー 2018の見どころはどのようなところでしょうか。

ジロ氏:やはり9月30日のパレードです。毎日イベントが目白押しで、いろいろなプレゼンテーションもあります。それから、有名なスポーツ選手や芸能人、政治家も来る予定です。私たち自身で新聞やスマートフォンのニュースレターを発行していまして、そこで常時翌日のイベントを案内していきたいと思っています。その中で自分の関心に合ったものを選んで来られるようにしていきたいと思っています。

――CESとのコラボレーションはどのような内容を予定していますか。

ジロ氏:今回が初のコラボレーションということになります。私どもは世界最大の自動車見本市、CESは世界最大の消費者家電見本市ということなので、CESは自動車を巻き込んでいたので、私たちの方でもその逆方向のことをやろうとなりました。これは長期的に今後も続くことを願っています。フランスではアナウンスをした時点で非常に好意的に受け止められています。

 自動車の世界でのイノベーションというのは一般的には自動運転などのイメージに限定されているのですが、実際にはもっとたくさんのイノベーションが起こっています。例えば、居住空間の快適性に関して家から自動車のエアコンをつけられるといった部分などでも新しいことが起こっていますので、そういうことを見せていけたらと思います。

 それから、ITをテーマにした会議や講演会もたくさん予定しておりますし、フランス語では頭文字をとって“GAFA”と呼んでいるGoogle、Apple、Facebook、Amazonも参加することになっています。これは、パリモーターショーとしては初めてのことです。

 CESは自動車に限って話をするわけではなくて、1月のCESのサロンに関するプレゼンテーションもしますし、もっとジェネラルな話もします。私の方はやはり自動車専門ですので、アレンジをしてモビリティに限って話をするという形になります。

――新しく開催する「レディースナイト」について教えてください。

ジロ氏:運営委員会を立ち上げまして、さまざまな企業や役職に就いている女性たちに集まっていただいて、女性のためのイベントを計画しています。例えばシトロエンのリンダ・ジャクソン氏にもお会いしましたし、「ガゼルラリー」という女性だけが参加するラリーを運営している組織のトップの方とも会いました。

 現在は運営委員会と一緒になってどういうテーマを取り上げるか考えているところではありますが、すでに大手自動車ブランドの女性取締役の参加も決まっていますし、自動車産業の中でも女性に将来があると伝えたいと思います。そして、女性の方に来ていただくために、登壇者とテーマが決まったらSNSなどをフル活用して、たくさん宣伝をします。

 サロンで朝早くから並んでいる人がたくさんいらっしゃる中で、とあるご夫婦に話しかけてみたことがあります。女性の方に「こんな時間から並んでいらっしゃるなんて、クルマがとても好きなのですね」と言ったら、「全然そんなことはありません。夫がクルマを見たいと言ったのでただ付いてきただけです」と話しました。男性の方は「クルマを買い換えたいから来た」と言うのですが、「色とかモデルとか、クルマを決めるのは私なのよ!」と女性の方が言っていたので、女性の影響力は大きいと思います(笑)。

 フランスと日本では女性に対するアプローチは違うかもしれませんが、ぜひ日本の男性の方にも参加していただいて、女性目線に触れていただけたらと思います。

――最後に、今後のパリモーターショーの展開を教えてください。

ジロ氏:今回いろいろと大規模な改革をしたので、新しいものをきちんと確立して、それをどんどん強化していきたいと思っています。さらに、先ほども言いましたが、立ち止まっていてはいけないと思うので、イノベーションを続けていきたいと思います。特に2020年はもう2年後ですので、その時代に適応した新しいコンセプトやダイナミズムをどんどんと作っていきたいと思います。

 スポーツ一般にそうだと思いますが、特に剣道をしていて学んだのは、常に前に進むためには努力を怠ってはいけないということです。なので、すでに2020年には改善するアイデアは浮かんでいます。