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【人とくるまのテクノロジー展 2018】内装、スマホ連携、世界初のハイブリッドエンジンなどが要チェックの企業ブース

ヤマハの自立走行プロジェクトは新たなステージへ

2018年5月23日~25日 開催

入場料:無料(登録制)

 5月23日~25日に、パシフィコ横浜・展示ホール(神奈川県横浜市)で自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2018 横浜」が開催されている。本稿では数ある展示の中から、クルマの内装に関わる技術、スマートフォンとの連携、新型ディーゼルハイブリッドエンジンなど、来場時にはぜひチェックしておきたい企業ブースを紹介する。

次世代のコクピットを体感できるカルソニックカンセイブース

ジェスチャー操作が可能なセンターコンソールとメーターディスプレイ

 カルソニックカンセイは、ドライバーやパッセンジャーが快適に過ごせる自動運転時代を見越したコクピットやダッシュボード周りのテクノロジーを複数紹介している。

 1つめは、複数のモニターからなるセンターコンソールとメーターディスプレイ。曲面加工を施すなどして、デザインにもこだわったデバイスとなっている。カーナビ、オーディオ、エアコンなどの機能をセンターコンソールで操作する仕組みだが、その手前に設置されているセンサーで人の手の動きを読み取り、ジェスチャー操作できるのが特徴の1つ。センターコンソールに表示されているコンテンツをメーターディスプレイに移動したり、元に戻したりと、ジェスチャーでシームレスに画面内容をコントロールできる。

 また、センターコンソールの操作にはディスプレイのタッチだけではなく、ダイヤル型のスイッチも利用できる。このダイヤル型スイッチは回転や押し込む操作が可能になっているが、その中央に表示されるモード表示に、同社独自に開発した多層構造の導光板が用いられている。複数あるモードを切り替えた際に、コンパクトなエリアに「現在どのモードか」を液晶ディスプレイなどを用いることなく表示できるのがメリットだとしている。

手前の黒い部分がジェスチャー操作用のセンサー。この上に手をかざす
ジェスチャーでセンターコンソールに表示されていたナビ画面をメーターディスプレイに追加したところ
右側のダイヤルには3層構造の導光板が用いられている。左側の「START」ボタンも2層構造で、押すと表示が「STOP」に切り替わる
ナビ画面などの操作時は「ZOOM」に
エアコン操作時は「TEMP」に。また、オーディオ操作時は「VOL」になる

 2つめは、デザインと機能・操作性を両立させたダッシュボード。高い質感を持つ素材を使い、エアコンの吹き出し口を極限まで薄くしてスタイリッシュに仕上げた。エアコンを操作するボタンはダッシュボード手前にタッチ式センサーとして埋め込まれ、指を置くと軽い振動とともに温度調整や各種機能のON/OFFが可能。現在の設定温度はダッシュボードに浮かび上がるように表示される。少ない振動素子でいかに広い範囲を振動させるか、狭いエアコン吹き出し口でもいかに騒音を抑えるかといった部分がポイントになっている。

高級感あるダッシュボード。エアコン温度などの調節すると設定温度が浮かび上がる
凹み部分に指を置くことでボタンを操作。タッチ時は振動する
吹き出し口は可能な限り高さを抑え、デザイン性を高めている
デザインテイストの異なるダッシュボードの例
自動運転時代に向けた助手席のコンセプト
大きな荷物が置けるテーブルや収納スペースがある
ドリンクホルダーは保温機能も備える。タッチ操作でのリクライニングも可能で、まるで旅客機のビジネスクラスシートのようなリッチさ
アームレストにはヒーター機能を内蔵

降り注ぐ冷気、どこでもワイヤレス給電も可能な帝人が考える“快適内装”

次世代の内装のアイデアにあふれる帝人のブース

 繊維や複合材料などのマテリアル技術を持つ帝人は、快適な車内空間を作る数々の技術を披露している。1つは、特殊な導電シートによるワイヤレス給電と通信が可能になる技術。クルマの内装の奥に電磁波を閉じ込める薄いシートを施工しておき、このシートにワイヤレス給電で動作する照明などを近づけることで、電力を取り出して明かりを点けることができる。

 また、電気の代わりにWi-Fi電波を発するように工夫することで、最大1m程度の範囲でワイヤレス通信が可能になる。車内のような狭い空間での利用だけでなく、秘匿性の高い通信環境が必要なときにも適しているとのこと。現在のところ、出力できる電力は最大でも数W程度とのことだが、将来的にはワイヤレス給電対応のスマートフォンを使いながら充電できる程度にまで出力をアップさせるのが目標だという。

車内の側面とフロアに特殊な導電シートが設置されている
ブロック状に取り付け・取り外しが自由な内装材。この奥に照明を近づけるだけで明かりが点灯する
このコンセプト車両のウィンドウには、電圧を加えることで透過度をコントロールできる素材が貼り付けられている。スイッチ1つで、プロジェクターで上映している映像を見たり、車外の様子が分かるように変更できる

 このほか、エアコンの冷気などを車内の天井から流す「多機能天井トリム」も紹介。冷気が天井から降ってくるように感じられ、効果的に車内や身体を冷やしてくれる。夏場の直射日光でクルマのルーフが熱を持ち、車内が暑苦しくなってしまいがちなシチュエーションでも快適な空間を保てるとのこと。また、カーナビと連動してシートの左右を振動させて右左折のタイミングを知らせる仕組みや、シート自体をディスプレイ化する仕組みなども展示している。

コンセプト車両に設置されている「多機能天井トリム」
冷気が降ってくるような感覚。風として感じることはない穏やかな冷気だが、思った以上に冷やされる。イルミネーションによる見た目の爽やかさもある
カーナビと連動し、右左折のタイミングでシートの側面を振動させて気付かせてくれる
シートをディスプレイ化するデバイスの展示
スイッチをONにすると、背もたれに「TEIJIN」の文字が浮かび上がる
OFFのときは近寄っても発光部の輪郭が見えず、通常のシートそのものだが、ONにするとくっきり

日立オートモティブシステムズ

EVや自動運転車に向けたデバイスを大量に展示する日立オートモティブシステムズ

 日立オートモティブシステムズは、同社が手がけるEV(電動自動車)や自動運転車向けとなる各種デバイスを大量に展示しているほか、クラリオンから2018年7月1日に発売予定の新しいカーナビ「NXV987D」をアピールしている。同製品は「Door to Door ナビゲーション」と命名されたスマートデバイス連携が特徴。

「Door to Door ナビゲーション」が特徴のカーナビ新製品「NXV987D」

 Door to Door ナビゲーションでは、スマホやタブレットであらかじめルート検索しておくと、クルマのエンジンをかける(同製品の電源を入れる)だけでBluetooth連携し、自動でカーナビ側でルートを設定。カーナビ画面で目的地を指定することなく、スムーズにルート案内をスタートする。さらに、目的地近くに到着してクルマを停めたとき(同製品の電源をOFFにしたとき)は、スマホ・タブレット側で正確な目的地までの徒歩ルートを表示する。まさにドア・ツー・ドアのナビゲーションが可能な仕組みとなっている。

スマホの専用アプリでルート検索
目的地を決定
優先するルート候補を選ぶ
スマホからカーナビ側にルート情報が転送
スムーズにドライブをスタートできる
クルマから降りると、今度は降りた場所から実際の目的地までの徒歩ルートをスマホに送信して表示する
アプリ側で決めた複数の経由地、目的地のルート情報をカーナビに送信することも可能

豊田自動織機は“世界初の建機用ディーゼルハイブリッドエンジン”公開

豊田自動織機として初めての建機向けエンジン

 豊田自動織機は、ディーゼルエンジンと電動モーターを一体化した建設機械向けハイブリッドエンジンを展示。同社のハイブリッドエンジン開発は初であり、同時に建設機械市場への初参入も果たしたことになる。排気量は2982cc、ディーゼルエンジン単体の最高出力は74kW、最大トルクは390N・mで、アシスト発電モーターを組み合わせることによりトータルの最高出力は118kWに達する。

 従来から建設機械に用いられている5.0リッタークラスのエンジンと同等のパワーを実現しながら、燃費を40%向上させ、さらにシステム全体のサイズを5.0リッタークラスのエンジンと同等に収めたのがポイント。しかも、ディーゼルエンジンは尿素SCRシステムを不要としているのも特徴で、74kWクラスのエンジンとしては、オフロード法(特定特殊自動車排出ガス規制法)の2014年基準に対応した世界初のエンジンだとしている。すでにこの新しいハイブリッドエンジンは日立建機のハイブリッド油圧ショベルに採用されているとのこと。

2982ccのディーゼルエンジン+電動モーターの組み合わせをコンパクトにまとめ、建機に用いられる5.0リッタークラスのエンジンと同等のサイズに収めた
1963年からフォークリフトのEV化を進めてきた同社はEV市場におけるアドバンテージを持っており、さまざまなEV関連機器を提供している
東京モーターショー 2017でも展示したポリカーボネート製のリアウィンドウ
ガラスでは困難な滑らかな曲面を多用したデザインで、広範囲を1つの樹脂パーツとして作り上げている

公道走行を目標に、0~200km/hの自律走行も見据えるヤマハの「MOTOROiD」プロジェクト

ヤマハの「MOTOROiD」

 ヤマハ発動機は、「東京モーターショー 2017」で公開した電動バイクのコンセプトモデル「MOTOROiD」を展示。重量のあるバッテリー部を車体の重心近くでウエイト代わりに使い、ヤマハ独自の「AMCES(アムセス)」技術の中心軸と連動してモーターを使って2000分の1秒間隔で回転させ、バランスをとることで不倒静止状態を維持できる。さらにAI(人工知能)によりフロントに搭載したカメラでオーナーを認識し、ジェスチャーで自律走行を促すことも可能。開発担当者が登壇したステージイベントでは、フレーム以外の大部分を3Dプリンターで製造することで、わずか8カ月という短期間で開発したことなどが語られた。

 同社では似たようなコンセプトモデルとして、MotoGPライダーのバレンティーノ・ロッシ選手をライバルに見据えた「MOTOBOT」も開発していたが、現在そのプロジェクトは休止中。MOTOROiDは0~15km/hという停止から極低速の自律走行にフォーカスし、MOTOBOTは15~200km/hにフォーカスしていたことから、この2つの活動を統合してMOTOBOTの操舵技術なども取り入れることで、将来的には公道も含めた0~200km/hの自立・自律走行を目指すとしている。

腹部分に3つ見えるシルバーのキャニスター状のものがバッテリー。これをモーターで左右に動かすことで重心を変え、バランスをとる
コンセプトタイヤはブリヂストンが開発。車体開発に8カ月かかったが、なかでも「タイヤのリードタイムが一番長かった」と担当者
工場などの製造現場で監視やスタッフの補助を担う自律走行ロボット「AFV」。ブース内を常にうろうろしている