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トヨタとアラン・チューリング研究所、AIに関する共同研究開始。都市計画と交通流最適化にAI活用

多様な交通手段をリアルタイム管理可能なシステムの実現を目指す

2018年5月24日 発表

都市計画と交通流最適化に人工知能を活用(イメージ)

 トヨタ・モビリティ基金(TMF:Toyota Mobility Foundation)は5月24日、英国に拠点を持つアラン・チューリング研究所(ATI:Alan Turing Institute)と共に、AI(人工知能)を活用した都市計画と交通流最適化に関する18カ月の共同研究を5月より開始したと発表した。

 TMFとATIが目指す成果は以下の3つ。

・人工知能が組み込まれた交通信号制御システムの構築

・シナリオ検証や、交通状況の監視・予測等を可能にする統合データ操作プラットフォームの構築

・交通事業者や都市計画者が活用可能な、さまざまなメカニズムの解明(例:渋滞や高濃度大気汚染地域の共有、問題の深刻化回避など)

 この共同研究の目的である「人工知能による都市における交通流最適化」は、ATIにおける新しい人工知能研究の1つで、複雑な交通管理システムを、従来型の静的なシステムから、多様な交通手段のリアルタイム管理が可能な、動的なシステムへの移行の実現を目指すもの。

 共同研究にはATI以外にも、ケンブリッジ大学、マンチェスター大学から、数学やデータ相互作用の研究者やソフトウェアエンジニアらが、またTMFからはモビリティの専門家が参加し、加えて、データの提供者、未来都市を設計する行政担当者、大ロンドン行政庁の関連部署の専門家からも協力を得る予定。

 ATIのCEOであるアラン・ウィルソン氏は「われわれのビジョンは、都市計画者と管理者に、リアルタイムの状況把握および分析や、シナリオ検証が行なえ、数学とコンピューターモデリングと機械学習モデルを統合し、行動変容の発生タイミングを予測できるシステムを提供することです。データと最新技術を活用することで、短期間に輸送形態に劇的な変化をもたらすことが可能になっています。我々は共同研究が、交通管理による安全性と効率の向上に加え、都市に住む人々の健康と移動の自由に寄与することを願っています」とコメント。

 トヨタ・モビリティ基金のプログラムディレクターであるライアン・クレム氏は「これまでわれわれは自動車内部における人工知能の活用に重点をおいていましたが、ATIとの共同研究を通じ、データサイエンスと人工知能によって交通インフラを改善する機会を得たことに、とても感謝しています。社会の発展と世界中の人々の豊かな暮らしの実現のために、モビリティは大変重要な要素であると考えています。本共同研究は、社会への貢献と、すべての人々の移動の自由の実現に向けた重要な一歩です」と述べた。

 同発表によると、国連は2030年には世界の人口の約60%が都市部に集中すると予想しており、大都市圏の人口増加に加えて、ライドシェアリングの普及や自転車の利用増加などの交通手段の変化、さらに交通流に大きな影響を及ぼす即日配送サービスの増加などに伴い、都市のあり方が変化しているという。また、環境負荷の低減に向けて基準強化が進められているように、都市部で暮らす人々の健康維持のために、交通の混雑を管理する必要があるとしている。

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