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ヤマハとNVIDIA、AIで協業の狙い。知能化で自動化

2018年9月13日 発表

ヤマハ発動機 先進技術本部 研究開発統括部長 村松啓且氏

 ヤマハ発動機は9月13日、AIコンピューティング企業のNVIDIAとの協業を発表した。ヤマハは同社の無人農業用車両、ラストマイルビークル、マリン製品等の次世代製品群の共通開発プラットフォームとして「NVIDIA Jetson AGX Xavier」を採用して、知能化による自動化を推進する。

 9月12日に説明会が開催され、エヌビディア合同会社 インダストリー事業部 事業部長 斉藤弘樹氏とヤマハ発動機 先進技術本部 研究開発統括部長 村松啓且氏が登壇して、今回の協業の狙いについて話した。

 今回ヤマハが採用するJetson AGX Xavierは、NVIDIAのGPU(Graphic Processing Unit)を搭載する高度なAIを実行する組み込みモジュールで、次世代のマシンに不可欠とされるオドメトリ、ローカライゼーション、マッピング、画像認識、ならびにパスプランニングの処理が可能という。

NVIDIA合同会社 インダストリー事業部 事業部長 斉藤弘樹氏

 同説明会でNVIDIAの斉藤氏は、NVIDIAはGPUを活用したAIの開発環境であるCUDA、ロボティクスプラットフォームとなるISAACなど、世界最先端のAIプラットフォームを提供している企業であることを紹介。

 自律動作マシンのためのコンピュータとして開発されたJetson AGX Xavierについては、基本スペックとして512Volta CUDAコア・2×NVDLA、8コアCPU、30DL TOPS(1秒あたり30兆回のDL演算)であることを紹介。JetsonTX2との性能比較で、DL TOPSは22倍、CUDAが8倍、CPUで2倍、DRAM BWで2.4倍、CODECで4倍の性能を実現させたという。

 また、ロボティクスプラットフォームとなるISAACには「骨格検出」「ジェスチャー検知」「顔の認識およびトラッキング」「言語認識」「視線のトラッキング」「骨格検出(手)」「奥行き」「ビジュアルオドメトリ」といったアプリケーションを備えること紹介した。

NVIDIAの斉藤氏スライド

 ヤマハでは、このJetson AGX Xavierを、同社の無人農業用車両、ラストワンマイルビークル、マリン製品等の次世代製品群に搭載して知能化による自動化を推進。農業の効率化、交通利便性の向上、海洋領域における可能性などについて活用の検討を進めるという。

協業による効果として、あらゆる製品に展開可能なAIプラットフォームを獲得することを狙いとしている

 今回の協業について、ヤマハの村松氏は「あらゆる製品に展開可能な万能型の知能化プラットフォームを開発していきたいと考えています。われわれは、陸、海、空に非常に多くの商材を展開しており、個別に知能化技術を展開していくには従来型の開発の数十倍のリソース、体力が必要になると感じており、いかにこの開発を汎用的で共通化された開発基盤で効率的に行なっていくのが、われわれにとって大きな課題となっている」と話した。

 加えて、「そういった中でNVIDIAとの協業をつうじて、GPUを使うのは当然のこととして、われわれが重要視しているのは、GPUと垂直統合された開発環境であるCUDA、ISAACというロボティクスプラットフォームがわれわれにとってもっとも重要なポイント。この垂直統合された開発から製品に至るまでの、一連のエコシステムがNVIDIAから発表され、それを使って製品開発を行なっていくのが今回の協業の一番の目的」と狙いを話した。

 具体的な協業の内容については、村松氏は「今回の協業のポイントは、ISAACはNVIDIAさまから発表されたばかりの商品で完成した商品でないと考えています。われわれはISAACに求める現場サイドの意見として、こういった機能や性能、品質を織り込んでいただきたい、というものがあります。これを比較的に早い段階でNVIDIAとの協業で、ISAACの質を高めることで、よりよい製品ができるのではないかというのが、具体的な協業の1つ」と話した。

 また、協業の成果について、村松氏は「AIの開発はヤマハ1社でできるものでなく、コアプラットフォームは独り占めできない。コアプラットフォームは競争の軸でなく、われわれも参加してできるだけ高度なものに仕上げていくことが大事と考えています。われわれはコアプラットフォームの上に乗せたアプリケーションでいかに製品に適合させていくのかが競争の軸。ISAACでもいろいろ意見交換しておりますが、コアプラットフォームを使ってほかのお客さまが利益を享受することを是として、われわれはそれを使って特徴のある製品作ることで競争していきたい」との考えを示した。

 さらに、「われわれメーカーとNVIDIA、その互いの間にサードベンダーが入ってきて、相互にインタラクティブな協力関係を構築していくことが重要と考えています。知能化の入口をやっているNVIDIA、出口部分をやっているわれわれが手を組み、その間をサードベンダーを含めて補完しやすい関係を作っていきたい」と話した。

ヤマハの村松氏が示したスライド