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アウディ、速度トレースエラー37件が判明した完成車の抜取検査について記者会見

「恒久的な対策」として数か月以内に判定システムを自動化

2018年9月28日 開催

アウディ ジャパン株式会社 代表取締役社長 フィリップ・ノアック氏(左)とアウディ ジャパン株式会社 テクニカルサービス部 部長 森謙介氏(右)

 アウディ ジャパンは9月28日、同日国土交通省に報告を行なった燃費・排出ガス抜取検査(完成検査時)に関する記者会見を都内で開催した。

 アウディでは同日、国交省から調査を要請された「燃費及び排出ガスの抜取検査の不正事案を受けた確認の実施等について」(国自審第674号)に基づき、独アウディから入手した調査結果の報告を行なっており、この中で速度トレースエラーによって本来は無効にすべき計37台分の測定データが、有効とされた計692台に含まれていたことなどを明らかにしている。

 この報告内容の概要は、関連記事の「アウディ、過去5年間に燃費・排出ガスで抜取検査した692台のうち、無効にすべき37台を有効に」を参照していただきたい。

アウディ ジャパン株式会社 代表取締役社長 フィリップ・ノアック氏

 会見では最初に、アウディ ジャパン 代表取締役社長 フィリップ・ノアック氏から国交省に対して報告を行なった旨が説明され、「ドイツにあるアウディの生産工場で行なっている試験において、一部で不適切な処理がございました。若干の『トレースエラー』が起きており、本来は無効にすべきテスト結果が有効として完成車検査に合算しておりました。調査の結果、今回の件によってアウディが生産しているクルマにおいて、排出ガス性能や燃費の数値に影響はないと判明して、すでに社内で再発防止策を実施しておりますが、お客さまをはじめ、関係者の方々にご心配をおかけすることになりましたことを心よりお詫び申し上げます」と語られた。

アウディ ジャパン株式会社 テクニカルサービス部 部長 森謙介氏

 報告内容の内容については、アウディ ジャパン テクニカルサービス部 部長 森謙介氏から解説された。

 森氏は、今回問題となった速度トレースエラーが、検査実施時に定められた速度域の指定範囲を超えて走行したことが問題になるとあらためて説明。また、いずれの場合も燃費と排出ガスの測定値が、速度トレースエラー分を除いた測定データの中で最もわるい数値と比較しても基準値の範囲内に収まっており、測定結果に対して影響はないと再度アピールした。

 調査を行なった工場は、独アウディ本社にある「インゴルシュタット工場」、上級車種を中心に生産している「ネッカースウルム工場」、メキシコ工場製の「Q5」の抜取検査を担当している「エムデン工場」の3か所で、それぞれ2014年7月~2018年7月の5年間を調査対象期間とした。

 調査台数は計692台で、このうち計37台が速度トレースエラーとなっており、1回の測定で発生した速度トレースエラーの累積時間は最大5.55秒と森氏は説明。なお、同期間に行なわれた検査で速度トレースエラーが規定どおり無効処理されたケースも92台分あり、これについては改めて追加測定を実施しているとのこと。

 今後については、今回の調査が行なわれる以前から測定結果や走行ログの内容が変更できないようロックされた状態でシステム化されていることに加え、2017年の第2四半期~第4四半期の期間に全社的に実施された業務品質を改善する取り組みの成果により、速度トレースエラーの発生が2018年はインゴルシュタット工場とネッカースウルム工場の各1件に低下しており、すでに大幅な改善が実現しているとアピール。さらに8月からはすべてのデータを複数のオペレーターでチェックする体制作り、走行ログなどの測定結果をデータベースに自動伝送するシステムなどがスタートして今回のような人的ミスが起きにくいようにしている。

 対策の最終的なプロセスとなる「恒久的な対策」では、測定結果の有効・無効の判断をシステムに任せ、結果を自動的にデータベースに流し込む体制を構築。オペレーターはプロセスのモニタリングのみを行なうようにしていくとしており、これを「数か月以内には実現していきたい」と森氏は語った。

 また、アウディでは抜取検査の実施にあたり、生産台数が500台以下の場合は3台、1000台以下の場合は6台、1000台以上の場合は12台と社内規定で定めているが、今回の調査で抜取検査の割合が規定を下まわってしまったモデル(型式)が複数存在。現時点ではネッカースウルム工場で2018年に生産された「A7」1台、インゴルシュタット工場で2017年に生産された「A1」1台が対象になるという。A7は今後の生産車であらためて抜取検査を行ない、すでに対象となるモデルの生産が終了しているA1については、市場に出た車両を回収するといった手段で追加測定を実施する予定とのこと。2016年以前のモデルについては独アウディから詳細の報告を待っている段階で、判明次第、追加測定を行なうとしている。

調査の対象となった工場と期間、調査方法の概要など
有効と判定されて測定値となっていた692件のうち、37件で速度トレースエラーが発生していた。1回の測定で発生した速度トレースエラーの累積時間は最大5.55秒
調査結果の内訳。「Q5」を抜取検査した「エムデン工場」では速度トレースエラーは起きていない
速度トレースエラーがあったモデルと年式
速度トレースエラーの概念図
測定プロセスの2番目にあるオペレーターの判定で入力ミスが起きていた
青いグラフが正常な測定値の平均、赤いグラフが速度トレースエラーの測定値。青いグラフは平均化された数値で実際にはばらつきがあり、無効となるべきデータもこの範囲内にあることから、燃費や排出ガスの測定値に影響はないと結論付けられている
3種類の再発防止策で2種類がすでに導入されており、最終的なプロセスとしてシステムによる自動化を実施予定。森氏は「数か月以内には実現していきたい」とした

 質疑応答では、国交省からの調査要請は8月8日が回答期限とされていたが、それがこのタイミングとなった理由について問われ、森氏は「走行ログを含む対象となる測定結果について徹底的に調べるということに時間を要してしまったという側面があります。また、7月から8月にかけてはドイツの休暇時期に重なり、スピード感を持って進めることができなかったこともあります。遅れてしまって申し訳ありませんでした」と回答した。

会見の冒頭と最後に、両氏が心配させることになってしまったユーザーや関係者に対して深く謝罪した