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週末のWEC 富士を控え、アロンソ選手が「eサーキット」で激走
「TOYOTA GAZOO Racing WEC Fan Meeting」開催
2018年10月11日 17:14
- 2018年10月10日 開催
GAZOO Racing Company(トヨタ自動車)は10月10日、東京都江東区にあるメガウェブにおいて、「TOYOTA GAZOO Racing WEC Fan Meeting」を開催した。
これは、今週末の10月12日~13日に静岡県駿東郡小山町の富士スピードウェイで開催される「2018-2019 FIA 世界耐久選手権 第4戦 富士6時間耐久レース(2018-2019 FIA World Endurance Championship Round 4 6 Hours of Fuji)」に先立って、ファンを対象に行なわれた特別イベント。メガウェブ内に用意された「eサーキット」と呼ばれる、ソニー PlayStation4向けのゲームソフト「グランツーリスモSPORT」を利用したeスポーツ会場で、今週末のWEC 富士で2台のTOYOTA TS050 HYBRIDに搭乗する6人のレーシングドライバーが、グランツーリスモSPORTを使ってガチバトルを披露した。
このeスポーツレースで勝利を手に入れたのは、ル・マン24時間レースで優勝した8号車(セバスチャン・ブエミ選手/中嶋一貴選手/フェルナンド・アロンソ選手)クルーの1人で、2005年と2006年のF1世界選手権王者でもあるフェルナンド・アロンソ選手。ル・マン24時間レースでもずっと練習していたというアロンソ選手は、他の5人と激しいレースを展開し、ル・マン24時間レースで2位となった7号車(マイク・コンウェイ選手/小林可夢偉選手/ホセ・マリア・ロペス選手)クルーであるマイク・コンウェイ選手を振り切って優勝した。いずれのドライバーもマイクロフォンを装着していながら、誰もが真剣な表情でレースに臨み、ファンサービスも忘れているのではないか?と思うほど本気の走りで会場を大いに沸かせた。
WEC 富士ではフィニッシュラインがTS050のすごさを感じられるポイント
今回のイベントは、前半がトークショー、後半がeスポーツバトルという2段階で行なわれた。前半は、ファンの中央を通ってドライバーが入場し、アナウンサーとTOYOTA GAZOO Racingアンバサダーを務める脇坂寿一氏の2人の司会により進められた。会場はe-Circuitと呼ばれるeスポーツ仕様になっており、周囲に用意された青いLEDがゲームと連動して光るようになっているなど、選手と会場の一体感が出るように工夫されていた。以下は前半に行なわれたトークショーの模様だ。
――8号車のクルーに、ル・マンを戦った感想や、今年加入したフェルナンド・アロンソ選手はどんな選手か教えてほしい。
中嶋選手:今年フェルナンドが入って、6人みんなコース外では仲よく、コースでは激しくやっている。今年が一番いい雰囲気でやれた。アロンソは一緒にチームメイトをしていると勉強することも多い。勝つことへの欲求が強く、チームメイトとして心強い。
ブエミ選手:とてもハッピー。7号車と激しくバトルしている。競争は激しい。ル・マンでも、富士でも、残りのレースで厳しい競争をしていきたい。
中嶋選手:(日本人として日本車で初めての優勝だがという質問に)個人というより、このレースで勝ちたいとやってきて優勝に手の届くところで取りこぼしてきた。チームとして価値があることで、多くの人が関わってきたからこその重みがある。勝ったことでたくさんのお祝いをいただいて、おめでとうという言葉をかけていただけるので、皆さんのためにもほっとした。
アロンソ選手:非常にいい雰囲気で、ル・マンでのレースは最高だった。このチームは最高で、チームやチームメイトはすごくいい。競争力がある環境で、両方のクルマが競争をしている。このチームでやれることは本当に嬉しい。
――7号車のクルーに、ル・マン24時間レースを振り返ってほしい。
コンウェイ選手:コンニチハ(日本語で)。レースはチャレンジング。僕たちはいつも予選はいいけど決勝では厳しく、非常に厳しい競争を8号車としている。でも楽しんでいるし、いいレースをしていい結果を出したい。
ロペス選手:2回目のル・マンだったけど、チームや8号車は本当にいいレースをした。緊張感あるレースだった。
小林選手:(裏話をしろと脇坂氏に振られて)裏話と言えば、実はこのグランツーリスモSPORTをル・マンの時も持ち込んでいて、6人で空いてる時間にずっとやってた(笑)。この中で誰が速いのかもう分かっている(笑)。
脇坂氏:グランツーリスモSPORTで対決やってるの?
小林選手:スクールで(ゲーム内の)お金稼いで、TS050を買おうとしている(笑)。さらに言うと、(今年はリザーブドライバーだった)アンソニー(アンソニー・デビッドソン選手)は僕らがコースを走ってる間もずっとグランツーリスモを練習して、タイム更新してを繰り返していた(笑)。他のレースでもシートとゲームを持ってきてくれとチームにはお願いしている。
――今週末に走る富士スピードウェイでTS050のすごさを理解するにはどこで見ればいいのか? また、TS050ってどんなクルマ?
小林選手:F1が行なわれていない今となっては、TS050が富士スピードウェイを走る一番速いクルマ。そのものすごい加速感は富士とかル・マンとかストレートが長いところでしか味わえないので、日本のファンの前でそれを見せられることは楽しみだ。
アロンソ選手:レーシングカーとしてのリミットはF1など他のカテゴリーのクルマと変わらない。TS050は4WDで1000馬力の驚くべきクルマだ。
ブエミ選手:パワーはすごい、とくにコーナー出口でアクセルを踏んだときは本当に加速感がすごい。富士だと最終コーナーだと思う。
中嶋選手:最終コーナーは確かにすごいと思う。
小林選手:ただ、予選の時は最終コーナーの出口ではマックスにしない。
中嶋選手:スタート、フィニッシュラインで320km/hに達すると思う。
小林選手:グランドスタンドの最終コーナー寄りが最もすごいと思う。
中嶋選手:他にもヘアピンがすごいと思う。とくに他のクルマとの対比で。
小林選手:100Rとかもすごいと思う。WECのクルマは100Rほぼ全開。あのコーナーでほぼ全開するのは難しいんだけど(苦笑)。
ロペス選手:WTCC(世界ツーリングカー選手権)とWECの違いは本当に大きい、サーキットによっては1周で30秒ぐらい違う。クルマの動きが全然違う。重量も違うし、ダウンフォースが全然違う。首とかをもっと鍛えないといけない。
コンウェイ選手:チームメイトが言っているのと同じだけど、TS050に乗るたびに笑顔になる、それぐらいすごいクルマ。
小林選手:ル・マン24時間レースの前に、スペインのサーキットとかで30時間の耐久テストをやっている。25時間ぐらいからもう死んでる(笑)。ル・マンは結構ストレートが長いから休めるけど、テストのサーキットはコーナーが多いから大変。ウサギとか飛び出してきてクルマに当たったりもするし(笑)。
中嶋選手:ストレートもクルマがいれば、どこで引っかかるかを考えて走っている。冬の間も忙しく走っていて長く感じるので、そういう積み重ねで本番までにできるようになっている。
脇坂氏:ル・マンの最終スティントで緊張しているように見えた。
小林選手:僕が見たら、寿一さんが一番緊張していた(笑)。寿一さんが後ろでずっとうろうろして緊張しているので、僕らも緊張しないといけないと思っていた(笑)。
脇坂氏:TGRはファミリー的なところがある。「プリウス」や「アクア」など、トヨタの技術の証明でもある。富士でそういう雰囲気も感じてほしい。
――では、Twitterで募集したファンからの質問を。アロンソ選手とブエミ選手に、F1日本グランプリの後に日本で何をしていたのか?
アロンソ選手:鈴鹿から東京に来て、月曜日は少し休んだ。セバスチャンや他のチームメイトと一緒にリラックスしているよ。鈴鹿と富士が最もお気に入りの場所だから。
ブエミ選手:フェルナンドが説明してくれたように、リラックスして富士に向けて準備していた。他には床屋に行った、日本語がしゃべれないので苦労したけど(笑)。
――中嶋選手と小林選手に、チーム同士でも最後まで競争するのか?
小林選手:最後までする。帰り道も(笑)。
中嶋選手:帰り道かぁ。御殿場に残る予定なんですが(笑)。競争はしていますが、常に相手はチームメイトということは覚えている。
小林選手:最後まで戦う。戦わせてくれなかったら戦わせてくれと言うつもりだ。
中嶋選手:どっちが前にいるかな?
小林選手:そろそろ空気読んでほしいんだけど(笑)。
――コンウェイ選手とロペス選手は、WRC(世界ラリー選手権)に興味はありますか?
コンウェイ選手:乗ってみたい。すごく楽しいと思うし、ターマックもグラベルもどちらでも走ってみたい。
ロペス選手:WRCは本当にすごいし、自分の出身地でもラリーをみんな愛している。いつか試してみたい。WTCC時代のチームメイトはセバスチャン・ローブ選手だったので、WRCについてはよく話を聞いていたのでいつか乗ってみたい。
まったく容赦のないアロンソ選手。チームメイトに圧勝して10年ぶりに日本で優勝
イベントの後半では、会場に設置されたPlayStation4とディスプレイ、レーシングシートを利用してeスポーツの対戦が行なわれた。利用されたレーシングカーは限定仕様の「トヨタ GR スープラレーシングコンセプト」。サーキットは富士スピードウェイが選ばれており、5周の周回数でレースが行なわれた。ゲストとしてグランツーリスモSPORTのプロデューサーとして知られる山内一典氏を迎え、レーシングアナウンサーの中島秀之氏が実況を担当するという豪華な中継陣も用意されて行なわれた。
じゃんけんで決定されたというスターティンググリッドは、ポールポジションがマイク・コンウェイ選手、2番グリッドが中嶋一貴選手、3番グリッドが小林可夢偉選手、4番グリッドがセバスチャン・ブエミ選手、5番グリッドがホセ・マリア・ロペス選手、そして最後方の6番グリッドがフェルナンド・アロンソ選手となっていた。レースでは6番手からスタートしたアロンソ選手が、1コーナーでの混乱に乗じて2位に上がり、その後、ロペス選手や小林選手などとの激しい争いを制して、最終的には独走で勝利した。2位はブエミ選手で、以下3位コンウェイ選手、4位中嶋選手、5位ロペス選手、6位が小林選手となった。
その順位でスターティンググリッドが決定された第2レースは、マシンはTOYOTA TS050 HYBRIDで、サーキットはル・マンのサルト・サーキット。ル・マン24時間レースの会場で6台のTOYOTA TS050 HYBRIDによるレースが行なわれるというシュールな状況が展開されていた。
このレースでも勝ったのはアロンソ選手。途中、ブエミ選手に弾き飛ばされて3位にまで後退したのだが、その後も冷静な走りで順位を上げ、ファイナルラップでトップに返り咲き、2位に上がったコンウェイ選手をわずかの差で振り切って見事2連勝を飾った。
レース中はアロンソ選手だけでなく、他の選手も表情は真剣そのもの。中継などで登場するオンボードカメラの映像には、ヘルメットを装着する姿は映っていてもバイザー越しの表情まではうかがえないのだが、今回はヘルメットを着用していないため、その真剣な表情が何回もスクリーンに映し出され、会場に足を運んだファンからヤンヤの声援を受けていた。
第2レースの2位はコンウェイ選手で、3位小林選手、4位中島選手、5位ブエミ選手、6位ロペス選手となった。ビリになったロペス選手には、トヨタ自動車の豊田章男社長から「Go For It!!」(ガンバレ!)と書かれた“モリゾウTシャツ”がプレゼントされた。
なお、フェルナンド・アロンソ選手が日本での「レース」で優勝したのは、2008年に富士スピードウェイで開催されたF1日本グランプリ以来となる。果たしてそれがeスポーツだけでなく、現実のレースでも実現するのかは、今週末に富士スピードウェイで行なわれるWEC 富士で分かることだけに、ぜひサーキットに足を運んでみてはいかがだろうか。