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三菱電機、電力コスト削減にEVを有効活用するエネルギーマネジメント技術の説明会

11月から中国でのフィールド実証実験を実施

2018年10月25日 開催

 三菱電機は、駐車中のEV(電気自動車)や蓄電池などの蓄電設備と、PV(太陽光発電)や発電機などの発電設備を組み合わせた高圧需要家向けのエネルギーマネジメント技術を開発した。

 これはEVの充放電スケジュールを最適化計算するもので、10台のEVを活用したシミュレーションでは建物の電力コストを5%削減し、段階的な制御によりEVの使用予定が変わっても電力コストの増加を抑制するとのこと。

 10月25日に三菱電機 先端技術総合研究所 所長の水落隆司氏、同 先端技術総合研究所 ソリューション技術部長の北村操代氏が出席する開発説明会が開催されたので、その内容をレポートする。

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 所長の水落隆司氏

EVの充放電スケジュールの最適化計算で、建物の電力コストを5%削減

世界のEV普及予想

 中国では発電供給量の約7割を石炭を使った火力発電でまかなっているが、環境負荷低減が政府主導で進められており、2030年には新車販売台数の40%を新エネルギー車とすることを目指している。こうしたことを背景にビルや工場などのエネルギーマネージメントにEVの活用が期待できるとしている。

 三菱電機ではすでに、工場施設の電力需要平準化やデマンドレスポンスなどの実証を通じて得た経験があることから、電力コスト削減を目的としたエネルギーマネージメント技術を開発した。

 増加するEVを活用して、PVの余剰電力をEVや蓄電池に充電することで再生可能エネルギーを自家消費したり、電力需要の少ない時間帯に充電しておいたEVや蓄電池の電力を、需要ピーク時間帯に放電することでピーク電力を削減(ピークカット・ピークシフト)させるなど、EVを建物の電源や負荷とするエネルギーマネジメント技術が注目されているる。しかし、従来の方法では電力料金が考慮されておらず、高コストの電力を購入したり、あらかじめ入力しておいたEVの使用スケジュールは予定どおりに到着・出発するとは限らないため、さらに高コストの電力を購入する必要があった点が課題だったという。

従来からのEVを活用したエネルギーマネージメントの課題。確かにEVは移動するものであるため、必ずしも計画通りに充放電できる場所にあるわけではない

きめ細かい充放電スケジュールで電力コストの増加を制御

開発した技術のポイント

 今回開発された技術のポイントとしては、PVの発電量予測、建物の電力需要予測、独自のモデルを組み込んだ数理計画法で1日の電力コストを最小化、各発電設備の運転計画や充放電スケジュールの策定など、各電源設備の連携制御の最適化が挙げられた。

きめ細かい充放電スケジュールで電力コストの増加を抑制する

 また、EVの使用予定が変更となった場合などは、接続・解列(複数台利用)状態を監視することで、接続中のEVのみで都度、最適計画を実施できるように、1日数回の「24時間先までの制御計画」、受電電力量の計画値と実績値の比較などによる数分周期の「計画補正」、受電電力量の補正値と実績値を数秒周期で比較して行なわれる「制御指令」による、きめ細かい充放電スケジュールで電力コストの増加を制御するとのこと。

 さらに電気料金単価、EV到着時の蓄電残量(SOC)、出発時刻や出発位に必要なSOCを考慮しながら、電力ピークを抑えつつも電力コストも抑える計画を立案する、細かな充放電が実施できるとのことだ。

EVの使用予定が変わった場合
充放電制御の例。「そんなに充放電を繰り返してバッテリーの寿命が縮まないのか?」との質問に対しては、「バッテリーも含めて、どこまでがコスト的に許容される範囲なのかも実証実験で確認したい」とのこと

中国で実証実験を実施予定

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 ソリューション技術部長の北村操代氏

 そして11月から、EV普及が見込まれる中国でのフィールド実証実験を、三菱電機自動車機器(中国)有限公司の工場(中国・常熟市)で実施する。従業員約1000人、電力需要2200kWの工場ではあるが、今回の実証実験では電力需要200kWの実証対象に対し、50kWのPV、24kWhのEVを6台使用して実験が行なわれ、1000人規模の工場の電力量の約10分の1に相当するモデルとなる。

この実験レベルの規模だと、おおよそ1345円/月の削減が行なえる見込み。また、今回の実験はあくまでもビルや工場向けのものであり、一般家庭のような低圧需要家向けではないとのこと

 なお、10台のEVを活用して典型的な需要パターンとEV使用予定でシミュレーションした際には、エネルギーマネジメントを行なわない場合と比較して電力コストを1日あたり5%削減することを確認しているとのこと。

今後の展開と、実証実験の概要