ニュース
ヒストリックF1カーの自然吸気エンジンサウンドも響いた、鈴鹿サーキット「サウンド・オブ・エンジン2018」
11月18日も歴史的に貴重なレーシングカーが続々走行
2018年11月18日 00:43
- 2018年11月17日~18日 開催
11月17日~18日の2日間にわたって「RICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2018」が、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催されている。このサウンド・オブ・エンジンはヒストリックレーシングカーのイベントで、2018年で4回目となる。
快晴に恵まれた11月17日の鈴鹿サーキットでは、「マスターズ・ヒストリック・フォーミュラ1・シリーズ」(以下マスターズF1)と呼ばれる、1966年~1985年までの自然吸気エンジンのヒストリックF1カーによるレースの公式戦が始めて行なわれ、12号車ロータス91をドライブするグレゴリー・ソーントン選手が優勝を果たした。
そのほかにも、ル・マン24時間レースの1991年優勝車の同型車となるマツダ787B、1992年と1993年優勝者の同型車となるプジョー905、1992年のデイトナ24時間レース優勝車のニッサン R91CPなどのグループCカーや、60年台のプロトタイプカーやフォーミュラカーなどが実際に国際レーシングコースを走行し、そのエンジン音をサーキットに響かせた。
マスターズF1が2017年に引き続き来日、ノンタイトル戦ながら公式戦に昇格
今回のサウンド・オブ・エンジン2018の目玉は、「マスターズ・ヒストリック・フォーミュラ1・シリーズ」(マスターズF1)と呼ばれる、60-80年代のヒストリックF1カーを利用したレースシリーズの公式戦が初めて日本で行なわれた。マスターズF1は、欧州や米国で開催されている、ヒストリックF1カーを利用したレースシリーズ。1966年~1985年までの自然吸気エンジンのF1カーを利用するレギュレーションで、かつての古いF1カーを利用したレースを行なっている。車両の年式の違いで、スチュワートクラス(1966年~)、フィッティバルディクラス(1972年~)、ヘッドクラス(1978年~のグランドエフェクト車両)、ラウダクラス(1983年~のフラットボトム車両)などとクラス分けされているが、主に1972年~のフィッティバルディクラスとヘッドクラスへの参加者が多く、特に総合争いはヘッドクラスにより争われることが多い。
2017年もマスターズF1に参戦している車両が来日し、デモレースを行なったが、2018年はノンタイトル戦という位置づけながら公式戦になり、レギュラーシリーズを戦っているドライバーとチームの多くが来日して本格的なレース形式で予選と決勝が行なわれることになった。
午前中に行なわれた予選では2号車 ロータス91をドライブする久保田克昭選手が1分56秒263というタイムで、同じロータス91をドライブする2番手のグレゴリー・ソーントン選手に0.954秒の差を付けて、ポールポジションを獲得した。久保田克昭選手は、日本の通信機器販売会社プラネックスコミュニケーションズを創業して経営している経営者でもあり、ヒストリックF1のコレクターとして、そしてマスターズF1でも常連として知られているいわゆるジェントルマン・ドライバーだ。
ポールポジションを獲得した久保田選手、午後に行なわれた決勝レースでも活躍が期待されたものの、決勝レースではローリングスタートの直前に突然緊急ピットイン、マシンに何らかのトラブルが発生したようで、結局そのままピットでレースを終えることになり、残念ながら地元で錦を飾ることは出来なかった。変わってトップにたったのは、チームメイトでもあるグレゴリー・ソーントン選手の12号車ロータス91で、結局そのままソーントン選手がレースを支配し、初めての日本でのマスターズF1公式戦を優勝した。2位は1号車 フィッティパルディF5Aをドライブしたニック・パドモア選手で、3位は24号車ヘスケス 308Eをドライブしたマイケル・ライオンズ選手となった。
このマスターズF1だが、実際に70~80年代を走っていたF1カーが鈴鹿の1コーナーになだれ込んでいくシーンは迫力もあり見ていて楽しいレースだった。往年のF1ファンからすれば夢の対決で、今回のようにロータス、フィッティパルディ、ヘスケスが1-2-3など見たこともない表彰台を見に来るだけでも十分価値があると言えるのではないだろうか。日曜日に行なわれるレース2では久保田選手のマシンが直って、地元での巻き返しがあることに期待したいところだ。
マスターズF1にはでていないヒストリックF1も走行、フェラーリミュージックを堪能
マスターズF1に参戦しているヒストリックF1以外のF1カーも走行を行ない、フェラーリF2005(2005年型)、フェラーリF10(2010年型)、アルファロメオ 179C、ウルフWR1、AGS JH23、などが走行した。特に2台のフェラーリは甲高いNAのフェラーリサウンドを響かせており、多くのファンがその高音に聞き入っていた。
この日は走行していなかったが、中嶋悟氏が1989年にドライブしていたロータス101、片山右京氏のF1デビューイヤーのマシンであるベンチュリーラルースLC92などはピットに展示されるなどして多くの来場者が写真撮影などを行なっていた。
92年、93年のル・マン24時間レース王者であるプジョー905が鈴鹿サーキットを久々走行
グループCカーの目玉は、1992年そして1993年にル・マン24時間レースを制覇したプジョー905だ。プジョー905はグループCカーが3.5リッター自然吸気エンジンに規定が変更された時に登場したグループCカー。現在FIA(世界自動車連盟)の会長を務めているジャン・トッド氏が監督としてプジョースポールを指揮して作成したマシンで、トヨタ自動車のTS010とWSPCやル・マン24時間で死闘を演じたことでも知られている。今回サウンド・オブ・エンジンに持ち込まれたのは特徴的なフロントウイングがついた905エボ1bisで、当時はスプリントレース仕様とされていたバージョンだ。
プジョー905が鈴鹿サーキットをレースで走ったのは1992年にSWC(スポーツカー世界選手権)の1戦として行なわれていた鈴鹿1000kmが最後で、おそらくプジョー905が鈴鹿サーキットや日本のサーキットを走ったのはそれ以来のことと思われる。午後に行なわれたデモランでは途中でトラブルが発生してピットに戻ってしまったが、それまで快調にプジョーV10のサウンドを響かせていた。
また、マツダの1991年のル・マン24時間レース優勝車として知られているマツダ787Bの国内レース向け仕様も持ち込まれた。ル・マン24時間を優勝した車両がミュージアムに展示されるようになったことを受けて作成された国内レース向け仕様の車両で、ル・マン向けの車両とはライトの形状などが異なっているが、同じ4ローターのロータリーエンジンを搭載しており、今回行なわれたデモランでも特徴的なロータリーサウンドを鈴鹿サーキットにとどろかせていた。
この他、1992年のデイトナ24時間レースで星野一義/長谷見昌弘/鈴木利男組で優勝したニッサン R91CP、1990年のル・マン24時間レースで日本車としては初めてポールポジションを獲得したニッサン R90CKなどの日本のスポーツカーの歴史を作ってきた車両や、ニッサンR86CV、ニッサン シルビアターボCニチラ・マーチ83G、MCSグッピー、1988年のJSPCチャンピオン車両のポルシェ962Cなどが走行した。
さらには車両のトラブルで走行はできなかったがトヨタが1985年にル・マン24時間に初参戦して12位入賞したトヨタ・トムス85Cも展示された。
11月18日にも同様のプログラムが行なわれる他、パドックへは入場料だけでアクセス可能
このほかにも、例えば1968年の日本GPに参戦したローラT70 Mk.3、ル・マン24時間レースで優勝したこともあるフォードGT Mk.2Bなど60年代を代表するプロトタイプカー、1960年代のフォーミュラカーとなる「Historic Formula Register」、1972年までのレーシングモーターサイクルなどの多種多彩なレーシングカー、レーシングモーターサイクルが展示したり、走ったりしていた。
このサウンド・オブ・エンジン2018は11月18日も引き続き開催されており、11月18日にも上記に紹介したレーシングカーが走行したり、マスターズF1のレース2などが行なわれる予定になっている。入場料金は当日券が大人4000円となっているが、中高生は1700円、小学生は800円、3歳~未就学児は600円という遊園地の入園料だけで入場できる。なお、この料金は通常のレースなどでは別売りのチケットになっているパドックへもアクセスすることができる。
12時5分からはピットウォークも用意されているので、参加しているレーシングカーにかなり近づいて写真を撮ることも可能だ。なお詳しいスケジュールやチケット購入情報は鈴鹿サーキットのWebサイトをご覧頂きたい。