ニュース

【F1 アブダビGP】優勝したハミルトン選手、2位のベッテル選手、F1から去るアロンソ選手と合わせて計11回の王者がドーナッツターンでシーズンを締めくくる

トロロッソ・ホンダはハートレー選手が12位完走

2018年11月23日~25日(現地時間)開催

優勝したルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)

 F1世界選手権 第21戦「2018 ETIHAD AIRWAYS ABU DHABI GRAND PRIX」(アブダビGP)が11月23日~11月25日(現地時間)に、アラブ首長国連邦 アブダビ首長国 ヤス・マリーナ島にあるヤス・マリーナ・サーキットで開催された。11月25日には決勝レースが行なわれて、ルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)がポールポジションから優勝を飾った。2位はセバスチャン・ベッテル選手(5号車 フェラーリ)、3位はマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)。

 今回の最終戦では、2005年、2006年のワールドチャンピオンで2019年はF1に乗らないことを決めているフェルナンド・アロンソ選手のお別れレースとなっており、レース終了後には優勝したルイス・ハミルトン選手(2008年、2014年、2015年、2017年、2018年)、2位のセバスチャン・ベッテル選手(2010年、2011年、2012年、2013年)、アロンソ選手(2005年、2006年)と3人合わせて実に11回の世界チャンピオンとなる3人が、特別にメインストレートに戻ってきて3人でドーナッツターンを披露するという実に豪華なファンサービスも行なわれた。

 日本期待のトロロッソ・ホンダ勢は、下位に沈んでしまった予選から追い上げを図り、ピエール・ガスリー選手(10号車 トロロッソ・ホンダ)がタイヤ交換を引き延ばして後半に柔らかいタイヤを投入するという作戦で入賞圏内まで追い上げたものの、残念ながらパワーユニットにトラブルが発生し、白煙を出しながら止まってしまいリタイアとなった。チームメイトのブレンドン・ハートレー選手(28号車 トロロッソ・ホンダ)は12位完走となった。

事実上の引退レースとなったフェルナンド・アロンソ選手は特別カラーのマシンで最後のGPを疾走

 今回のF1の最終戦となるアブダビGPは、第19戦のメキシコGPでドライバーズチャンピオンにルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)が、そして前戦の第20戦 ブラジルGPでコンストラクターズチャンピオンにメルセデスF1チームが輝いており、すでに両タイトルとも決定している状況で、この第21戦は消化試合となったが、来年に向けての体制作りを関係者が行なう場ともなっており、日本からもスーパーフォーミュラ、SUPER GTのダブルチャンピオンに輝いた山本尚貴選手が視察に訪れるなど、来季に向けたさまざまな話し合いが行なわれた。

 そうした中、まだシートが決まっていないウィリアムズの1つ、フォースインディアの1つ、トロロッソの1つのうち、ウィリアムズはロバート・クビサ選手が、来年F1にステップアップするジョージ・ラッセル選手(F1直下のカテゴリーになるF2の今年度チャンピオン)のチームメイトとなることが発表された。なお、依然としてフォースインディア、トロロッソのシートは発表されていないが、前者はウィリアムズのランス・ストロール選手が移籍する見通しで、後者に関しては今年F2を走っていたアレクサンダー・アルボン選手が有力とされているが、いずれもまだ発表はない。

 そして、今回のアブダビGPは、2005年、2006年のダブルワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソ選手(14号車 マクラーレン・ルノー)とのお別れのレースともなった。アロンソ選手自身はF1から引退するという言葉はひと言も使っていないが、2019年はF1では走らないことを明らかにしており、F1界としては「事実上の引退」という受け止めが一般的で、パドックではアロン選手とのお別れ会が開催されるなど、アロンソ選手との別れを惜しむ雰囲気が一般的だった。今回のアブダビGPでは、マクラーレンがアロンソ選手への敬意を表してアロンソ選手のヘルメットを模したスペシャル・カラーリングをマシンに施しており、こちらもお別れの雰囲気を醸し出していた。

アロンソ選手のヘルメットなどを意識したスペシャルカラーで走るフェルナンド・アロンソ選手(14号車 マクラーレン・ルノー)

予選ではメルセデス勢が1-2位、フェラーリは3-4位、トロロッソ・ホンダの2台はICEのトラブルもありQ1脱落

 そうした雰囲気の中で11月24日に行なわれた予選では、メルセデスのルイス・ハミルトン選手が今シーズン11回目となるポールポジションを獲得した。このアブダビに来てからもメルセデスは好調さを維持しており、フリー走行でもトップタイムをマークするなどしており、危なげなくポールを獲得した。2位はチームメイトのバルテリ・ボッタス選手(77号車 メルセデス)、3位はセバスチャン・ベッテル選手(5号車 フェラーリ)。

 トロロッソ・ホンダ勢は、金曜日の練習走行ではピエール・ガスリー選手(10号車 トロロッソ・ホンダ)が11位につけるなどして期待が持てたが、Q1の最後のアタックを行なっている最終ラップの最終コーナーでパワーユニットにトラブルが発生。ガスリー選手は「パワーがない、パワーがない」と言いながらストレートを立ち上がっていくが、最後のセクターのタイムが大きく落ちてしまいタイム更新ならず。セクター1/セクター2までは自己ベストを更新していただけに、そのエンジントラブルさえなければ余裕でQ2に進んでいた可能性が高く、予選17位は残念な結果になってしまった。ホンダ F1テクニカルディレクター 田辺豊治氏によれば「ICEのトラブルで、1気筒が死んでしまった」とのことで、パワーユニットのうちエンジン部分に問題が発生したとのことだった。田辺氏によればすでにストックしてあるエンジンを利用するので、今回ガスリー選手はペナルティを受けることなく、エンジンを交換して、翌日のレースに臨むことになった。

ピエール・ガスリー選手(10号車 トロロッソ・ホンダ)

 なお、チームメイトのブレンドン・ハートレー選手(28号車 トロロッソ・ホンダ)は16位と、こちらもQ2には進めないという結果に終わった。

アブダビGP予選結果
順位カーナンバードライバー車両Q1Q2Q3周回
144ルイス・ハミルトンメルセデス1分36秒8281分35秒6931分34秒79419
277バルテリ・ボッタスメルセデス1分36秒7891分36秒3921分34秒95619
35セバスチャン・ベッテルフェラーリ1分36秒7751分36秒3451分35秒12518
47キミ・ライコネンフェラーリ1分37秒0101分36秒7351分35秒36518
53ダニエル・リカルドレッドブル・レーシング・タグホイヤー1分37秒1171分36秒9641分35秒40116
633マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・タグホイヤー1分37秒1951分36秒1441分35秒58914
78ロマン・グロージャンハース・フェラーリ1分37秒5751分36秒7321分36秒19215
816シャルル・ルクレールザウバー・フェラーリ1分37秒1241分36秒5801分36秒23720
931エステバン・オコンフォースインディア・メルセデス1分36秒9361分36秒8141分36秒54018
1027ニコ・ヒュルケンブルグルノー1分37秒5691分36秒6301分36秒54215
1155カルロス・サインツルノー1分37秒7571分36秒982-9
129マーカス・エリクソンザウバー・フェラーリ1分37秒6191分37秒132-14
1320ケビン・マグネッセンハース・フェラーリ1分37秒9341分37秒309-12
1411セルジオ・ペレスフォースインディア・メルセデス1分37秒2551分37秒541-12
1514フェルナンド・アロンソマクラーレン・ルノー1分37秒8901:37秒743-15
1628ブレンドン・ハートレースクーデリア・トロロッソ・ホンダ1分37秒994--9
1710ピエール・ガスリースクーデリア・トロロッソ・ホンダ1分38秒166--9
182ストフェル・バンドーンマクラーレン・ルノー1分38秒577--9
1935セルゲイ・シロトキンウィリアムズ・メルセデス1分38秒635--6
2018ランス・ストロールウィリアムズ・メルセデス1分38秒682--6

ハミルトン選手がポールトゥウィン。2位のベッテル選手とこれが最後のF1レースとなるアロンソ選手の3人が豪華なドーナッツターンで締めくくる

 現地時間17時10分に切られたスタートでは、2つのストレートをつなぐシケインでニコ・ヒュルケンベルグ選手(27号車 ルノー)がロマン・グロージャン選手(8号車 ハース・フェラーリ)のリアタイヤに乗り上げてマシンがジャンプし、1回転半してタイヤバリアに逆さまになって突っ込むというアクシデントが発生。

 それによりレースはセーフティカーが出動することになった。その中でも、ポールのハミルトン選手、2位のボッタス選手、3位のベッテル選手、4位にはこれがフェラーリでの最後のレースになるキミ・ライコネン選手(7号車 フェラーリ)という予選のトップ4はそのまま変わらず、レースは進行していた。その後ろでは、7位からスタートしたシャルル・ルクレール選手(16号車 ザウバー・フェラーリ)が、ダニエル・リカルド選手(3号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)、マックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)というレッドブル2台をセーフティカーが出る前に抜いて5位に上がり、一方で抜かれたフェルスタッペン選手は9位にまで下がってしまっていた。

 クラッシュしたヒュルケンベルグ選手のマシンを排除した後、5周目にレースは再開。その後7周目にキミ・ライコネン選手のマシンが本人曰く「シャットダウンした」というトラブルに見舞われ、ストレージにマシンを止めてリタイア。その影響でバーチャルセーフティカーが出されたこともあり、8周目にはトップを行くハミルトン選手がピットに入り、タイヤをウルトラソフトからスーパーソフトに交換。ハミルトン選手は5位になったが、これで最後までピットストップなしで走り続けることが可能になった。同じように4位を走っていたルクレール選手も一緒に入ったが、こちらは13位まで順位を下げてしまい、そこから追い上げることになった。

 これでレースはボッタス選手、ベッテル選手、リカルド選手とフェルスタッペン選手のレッドブル勢、その後ろにタイヤを交換して最後まで走れるハミルトン選手という順位になった。16周目には3位を走っていたフェラーリのベッテル選手がタイヤ交換。それを見たメルセデスチームが翌周にボッタス選手をピットに入れ、引き続きフェルスタッペン選手がピットに入ると、暫定的にダニエル・リカルド選手がトップにたった。

優勝したルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)
2位に入ったセバスチャン・ベッテル選手(5号車 フェラーリ)
3位に入ったマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・タグホイヤー)

 レースはそのままリカルド選手、2位ハミルトン選手の順で続き、リカルド選手はなかなかピットに入らず、降水確率40%というこの地方としては高い降水確率にかける作戦を選んだようだ。だがそれも33周目までで、リカルド選手はピットに入り、チームメイトであるフェルスタッペン選手の後ろとなる5位でレースに戻った。その翌周34周目には、2位を走っていたボッタス選手を3位のベッテル選手が2つ目のバックストレートでオーバーテイクして、メルセデスの1-2体制は崩れることになった。その後、ボッタス選手はブレーキングに失敗してコースを飛び出すなどしてさらに遅れ、4位のフェルスタッペン選手、5位のリカルド選手というレッドブル勢に後ろを脅かされはじめた。

 37周目、2つ目のバックストレートの終わりで抜くと見せかけたフェルスタッペン選手だが、そこのコーナーを大回りし、次のコーナーで強引にインに入り、ボッタス選手をコース外に追いやるような強引な追い越しをみせて3位へ。続いて翌周にリカルド選手もボッタス選手をオーバーテイクして4位に上がった。これにより5位に下がったボッタス選手はタイヤを交換しても順位が替わらないため、タイヤを交換して、セーフティカーの出動などイレギュラーに備えることになった。だが、その後イレギュラーは起こらず、結局レースはそのままゴールを迎え、ハミルトン選手が優勝、2位ベッテル選手、3位はフェルスタッペン選手、4位リカルド選手、5位ボッタス選手となった。

トップ3会見に登場した3人、タイトルもすべて決まった後のレースということもあって笑顔の絶えない和やかな会見となった
優勝したルイス・ハミルトン選手
2位に入ったセバスチャン・ベッテル選手
3位に入ったマックス・フェルスタッペン選手

 このレースが最後のレースとみられているアロンソ選手は11位と入賞一歩手前でゴールした。そして、最後には1位のハミルトン選手、2位のベッテル選手という2人のチャンピオンと共にメインストレートに戻ってきて3人でドーナッツターンを披露。3人で11回のワールドタイトルという豪華なドーナツターンで、フェルナンド・アロンソ選手という偉大なドライバーのF1との別れに華を添えた。

トロロッソ・ホンダは入賞圏内を走っていたが、パワーユニットのオイルリークが発生し一転リタイアに

 トロロッソ・ホンダの2台は入賞を目指しして1回ストップでゴールを目指した。ウルトラソフトでスタートしたブレンドン・ハートレー選手は2周目というセーフティカーの間にタイヤを交換して、ピットストップの時間を帳消しにすることで、上位入賞を狙ったが、結局12位に終わった。

ブレンドン・ハートレー選手(28号車 トロロッソ・ホンダ)

 それに対してスーパーソフトでスタートしたピエール・ガスリー選手は29周目にピットに入り、ウルトラソフトへ交換し、より柔らかいタイヤでゴールを目指した。タイヤ交換で一時的に順位が下がったものの、徐々に順位を回復し、9位を走るグロージャン選手の後ろまで追い上げて入賞目前まで迫ったが、エキゾーストから煙を吐きエスケープロード近くに止まってしまい、リタイアを余儀なくされた。前出の田辺氏によれば「オイルリークが発生して徐々に煙が大きくなり、油圧も低下し始めたので停止させた。原因はメカニカルなものではなく締めが甘かったことに近いトラブル」とのことで、パワーユニット本体に問題があったというよりは、何らかの整備ミスのような要因でオイルリークが発生し、それがリタイアの原因になってしまったとのこと。最終戦だけにポイントを獲って終わりたかったところだが、残念な結果になってしまった。

ピエール・ガスリー選手(10号車 トロロッソ・ホンダ)

 長かったF1シーズンもこれで終了だが、11月27日~28日にはオフシーズンテストが予定されている。パワーユニットこそ今年のパートナーのまま(つまりレッドブルはルノーのまま)だが、何人かのチームを移籍するドライバーはこのテストからチームを移籍してドライブする予定で、長い冬休みに入る前の実走行の機会となる。そこではパワーユニットのテストだったり、空力パーツのテストだったりなどを各チーム予定しており、来年の新型車に向けてさまざまなテストが行なわれることになりそうだ。

レース結果
順位カーナンバードライバー車両周回数タイム
144ルイス・ハミルトンメルセデス551時間39分40秒382
25セバスチャン・ベッテルフェラーリ55+2.581秒
333マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・タグホイヤー55+12.706秒
43ダニエル・リカルドレッドブル・レーシング・タグホイヤー55+15.379秒
577バルテリ・ボッタスメルセデス55+47.957秒
655カルロス・サインツルノー55+72.548秒
716シャルル・ルクレールザウバー・フェラーリ55+90.789秒
811セルジオ・ペレスフォースインディア・メルセデス55+91.275秒
98ロマン・グロージャンハース・フェラーリ54+1 lap
1020ケビン・マグネッセンハース・フェラーリ54+1 lap
1114フェルナンド・アロンソマクラーレン・ルノー54+1 lap
1228ブレンドン・ハートレースクーデリア・トロロッソ・ホンダ54+1 lap
1318ランス・ストロールウィリアムズ・メルセデス54+1 lap
142ストフェル・バンドーンマクラーレン・ルノー54+1 lap
1535セルゲイ・シロトキンウィリアムズ・メルセデス54+1 lap
R10ピエール・ガスリースクーデリア・トロロッソ・ホンダ46DNF
R31エステバン・オコンフォースインディア・メルセデス44DNF
R9マーカス・エリクソンザウバー・フェラーリ24DNF
R7キミ・ライコネンフェラーリ6DNF
R27ニコ・ヒュルケンブルグルノー0DNF
ドライバーズポイント
順位ドライバーポイント
1ルイス・ハミルトン408
2セバスチャン・ベッテル320
3キミ・ライコネン251
4マックス・フェルスタッペン249
5バルテリ・ボッタス247
6ダニエル・リカルド170
7ニコ・ヒュルケンブルグ69
8セルジオ・ペレス62
9ケビン・マグネッセン56
10カルロス・サインツ53
11フェルナンド・アロンソ50
12エステバン・オコン49
13シャルル・ルクレール39
14ロマン・グロージャン37
15ピエール・ガスリー29
16ストフェル・バンドーン12
17マーカス・エリクソン9
18ランス・ストロール6
19ブレンドン・ハートレー4
20セルゲイ・シロトキン1
コンストラクターズポイント
TeamPts
メルセデスAMGペトロナス・モータースポーツ655
スクーデリア・フェラーリ571
アストンマーチン・レッドブル・レーシング419
ルノー・スポーツ・フォーミュラーワン・チーム122
ハースF1チーム93
マクラーレンF1チーム62
レーシングポイント・フォースインディア52
アルファロメオ・ザウバーF1チーム48
レッドブル・トロロッソ・ホンダ33
ウィリアムズマルティニレーシング7