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フォルシア・ジャパン、未来のコクピットを展示する技術展示会「コックピット・オブ・ザ・フューチャーへようこそ」日本初開催

株式買収予定のクラリオンは第4事業部になることが確定

2018年11月22日 実施

フォルシア・ジャパンが報道関係者向けの技術展示会「コックピット・オブ・ザ・フューチャーへようこそ」を日本初開催

 フランスの自動車部品会社Faurecia S.Aの日本法人フォルシア・ジャパンは11月22日、報道関係者向けの技術展示会「コックピット・オブ・ザ・フューチャーへようこそ」を日本初開催した。

 フォルシアは、35か国に30か所のR&Dを含む290の事業所、10万9000人の従業員を有し、自動車用のシート、インテリア、クリーンモビリティ(排気関連)の3領域において新しいテクノロジーの開発を行なう企業で、10月にクラリオンの全株式を公開買い付けした。

 今回初開催となった技術展示会では、フォルシアのシステム統合のノウハウやシートと内装における強みを活かした未来のコクピットを展示。実演が行なわれた。

 最初に、フォルシア・ジャパン 代表取締役 ケイバン・カルガー氏が「われわれの会社は『スマート・ライフ・オン・ボード』『サステイナブル・モビリティ』という2つの柱をもって事業を展開しております。今回はスマート・ライフ・オン・ボードに特化した技術紹介をさせていただきたいと思います」と挨拶。

フォルシア・ジャパン株式会社 代表取締役 ケイバン・カルガー氏

 今後クラリオンとどのような開発を行なっていくかに関しては「2019年のQ1(1月~3月)で最終決定するため現時点で具体的に何をするかはお伝えできないのですが、現在われわれはFCM(フォルシア クリーン モビリティ)、FIS(フォルシア インテリア システム)、FAS(フォルシア オートモーティブ シーティング)の3事業部がありまして、フォルシア クラリオン エレクトリックシステムは、第4事業部になることが確定しています。そして、その本社も日本に残すことが確定しています。コクピット・オブ・ザ・フューチャーは、FIS、FAS、そしてフォルシア クラリオン エレクトリックシステムの3事業部から情報を吸い上げて機能するようになってきます」と説明。

 また、「クラリオンを買収するという行為は、われわれとしても大きなアクティビティの1つではあるのですが、まずは日本に対しての足がかりとしています。ここで完結するわけではありません。縦軸の組織を強化するために、さらに他の日本企業とのコラボレーションなども視野に入れています」と今後日本での活動も活発にしていくことが語られた。

 続けて、フォルシア・ジャパン 事業本部長のアレハンドロ・エスパーダ氏がコクピット・オブ・ザ・フューチャーについて、「オートモーティブ産業で今注目されている4つのトレンド『CASE』に基づいたユースケースをコネクトして作られました。当社が打ち出しているスマート・ライフ・オン・ボードというコンセプトを具現化して、シートを含めた車内空間でトレンドを経験していただくコンセプトです。直感的なインターフェースに加え、個人の空間を持ったり、車内の情報を予見して対応したりする技術を採用しています」と説明した。

フォルシア・ジャパン株式会社 事業本部長 アレハンドロ・エスパーダ氏
「コクピット・オブ・ザ・フューチャー」は、「CASE」に基づいている
インテリアを開発するにあたって、今後は3つの差別化が求められてくるという
これまで夢のように描かれていた自動運転のインテリア(左)と、現実に近い自動運転のインテリア(右)の違い

スマート・サーフェイス

 車内にあるさまざまな機能をスタイルに統合したという「スマート・サーフェイス」。従来のようにエアコンのマニュアルベントがなく、モーターで向きなどを変えることができるスタイリッシュなベントを採用し、風量や温度を変更すると内蔵されたイルミネーションが連動して点灯。曲面に埋め込まれたディスプレイは、電源がOFFになったときにはパネルとディスプレイが一体となって見えるという。

エアコンのベントを細くスタイリッシュにした「スマート・サーフェイス」
ベントは内部にモーターを搭載
タッチパネル式のボタンとなり、押すと触感が返ってくる
ディスプレイは少し湾曲した1枚のパネルに埋め込まれる

カーブド・インストルメント・パネル

 ディスプレイをいかにインテリアデザインに統合するかという課題に挑戦したという「カーブド・インストルメント・パネル」は、運転席側と助手席側にそれぞれカーブさせた1枚のディスプレイを搭載して、ドライバー側の画面にはナビゲーションや運転に必要な情報を表示。助手席側ではエンターテイメントを楽しむことができるようにした。操作がしやすいように緩く角度がつけられたセンターコンソールには、運転席側と助手席側でそれぞれパーソナライズ化された情報が表示できる。

「カーブド・インストルメント・パネル」
2つのディスプレイを搭載した1枚のパネルを湾曲させて、運転席側と助手席側でそれぞれ別の情報を表示
センターコンソールは操作がしやすいように少し角度が付いている
運転席側のディスプレイは運転に必要な情報を表示
助手席側のディスプレイ

モーフィング・インストルメント・パネル

 将来的にドライバーが運転する状態から自動運転に移行していく中で、それに対応するための提案となる「モーフィング・インストルメント・パネル」。実際に運転している状態と自動運転の場合では完全に異なる状況となり、それぞれに合わせた車内空間を提供していく必要があるとして、ドライバーがステアリングを握るドライビングモードでは運転席側にディスプレイが位置して、スピードメーターや地図といった運転に必要な情報を表示。自動運転時は中央で画面を大きく表示させて、エンターテインメントを楽しむことができるようにするとともに、ステアリングを収納してくつろげるようにした。これらの切り替えはスイッチ操作で行なえる。

今後、中国での採用が決まっているという「モーフィング・インストルメント・パネル」
ドライブモードではディスプレイが運転席寄りになり、運転に必要な情報だけを表示
自動運転モードではディスプレイが中央に位置し、エンターテインメントを楽しむことができる。加えて、ドライブモード時よりもディスプレイサイズが大きくなる
自動運転モード時はステアリングを収納
ドライブモード(左)と自動運転モード(中央)では、ツィーターの有無も切り替わる
ドライブモードと自動運転モードの切り替えは中央のスイッチで操作

次世代コクピット

「どの姿勢でも最高の座り心地」をコンセプトに開発。「自動運転車での運転」「仕事」「リラックス」の3パターンがあり、さらにヘッドレストなどの位置調整が細かくできるようになっている。シートベルト、エアバッグを内蔵していて、どんな姿勢でも安全を確保できるという。

 カーシェアを想定してアームレスト部にはスマートフォンを入れられるポケットがあり、事前に登録した体型などの個人情報をクルマやシートと共有することで、自動でシートポジションを合わせられる。アームレストにはシートの調整などができるスイッチが搭載されるほか、ネックサポート付きヘッドレストにはスピーカーが内蔵されており、座席の乗員ごとに異なる音楽を聴けたり、通話できたりする。

ドライブモード(左)やリラックスモード(右)など、シート角度を大きく変えられる

ActiveWellness2.0

 健康促進をコンセプトにした「ActiveWellness2.0」。シート内部などにセンサーやカメラなどを組み込み、心拍数や呼吸、あくびの回数、身体の動きの監視といった12種類の状態を確認し、これらのセンサーの情報により前方注意力、クルマ酔い、ストレス、眠気、快適性の5つの状態を判断できる。また、自動運転モードから自分で運転をするドライブモードに切り替える際も、これらのセンサーを使ってきちんと運転できる状態かどうか判断される。

シートにセンサーなどを組み込み、心拍数や呼吸、あくびの回数、身体の動きの監視といった12種類の状態を確認可能
車内のライティングやオーディオ、ベンチレーションなどもモードによって切り替わる
センサーの情報により、前方注意力、クルマ酔い、ストレス、眠気、快適性の5つの状態を判断可能

バック(車両モックアップ)

 車内環境を開発するにあたり、車両を摸したモックアップを使って実際にパーツを交換したりシートの角度を変えたりしながら、ユーザーエクスペリエンスがどのように変化するのかを体験するモックアップ「バック」。経験をすることでさまざまなユースケースに対応するための基礎的な部分を厚くしていくという。また、内覧会で展示されているディスプレイやシートなどは、このモックアップを使ったワークショップでアイデアが出されたものとのこと。

車両モックアップ「バック」
ステアリングやドアハンドル、ディスプレイなど車内のすべてのパーツが取り外しできる
プロペラシャフトの有無も切り替えられる
シートは前後左右自由に移動可能。角度も変えられる