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フォルシアとクラリオンが第4の事業部門設立。「フォルシア クラリオン エレクトロニクス」記者会見
「クラリオン単独では実現できなかったアイデアを具体化できるチャンス」
2019年4月3日 00:00
- 2019年4月2日 開催
仏フォルシアは4月1日、2018年10月に株式公開買付によって100%子会社化したクラリオンを中核とする新たな事業部門「Faurecia Clarion Electronics(フォルシア クラリオン エレクトロニクス)」を設立し、翌4月2日に都内で記者会見を開催した。
記者会見にはフォルシア CEO パトリック・コラー氏と、フォルシア クラリオン エレクトロニクスのEVP(エグゼクティブ ヴァイス プレジデント)に就任した川端敦氏の2人が登壇。まず、コラーCEOからフォルシアの概要と展開している戦略、クラリオンを買収したことで生まれる意義などについて解説された。
コラーCEOは、フォルシアが年間売上175億ユーロで世界トップ10に名を連ねる自動車部品メーカーであること、主力事業は「シーティング」「インテリア」「クリーンモビリティ」の3事業であり、シートフレーム、排気浄化システムで世界1位、インテリア分野でも統計によって上下するものの、1位を争うグローバルサプライヤーであり、37か国に300以上の拠点を持って従業員数が11万5000人となっていることなどを紹介した。
そんなフォルシアも、自動車業界の“メガトレンド”と呼ばれている「CASE(コネクテッド、自動運転、ライドシェア、電動化)」に取り組んでおり、電動化ではフォルシアとしては水素系の技術をメインに位置付けているという。将来戦略としてフォルシアが得意とする「サステイナブル・モビリティ」「コックピット・オブ・ザ・フューチャー」の2つの市場に対して製品を投入し、高い収益性を確保していく。
この計画を進めていくキーとして、2016年~2018年の期間に1億9000万ユーロの投資を行なってきたほか、同じく大手自動車部品サプライヤーである独ZF、タイヤメーカーの仏ミシュラン、燃料電池技術を持つ仏ステラ、ディスプレイメーカーのジャパンディスプレイなど高い技術力を誇る会社とパートナーシップを締結し、これに今回のクラリオンをはじめ、Parrot AutomotiveやCoagent、CREOといった企業の買収を実施。さらに現時点で13~14のスタートアップ企業に投資を行なっており、フォルシア1社だけではまかないきれない幅広い分野で高い技術を手に入れ、ユーザーが求める「個人に合わせた最適化」「高い没入体験」といったニーズを満たすことを目指しているという。
また、クラリオンを買収した意義についてコラーCEOは、「クラリオンと一緒にならなければ、われわれの意気込みや大志を達成できないと判断したから」とコメント。具体的には、フォルシアでは2020年に200億ユーロ、2025年に300億ユーロの売り上げ目標を設定しているが、この実現に向けてはクラリオンなどの買収で採り入れる新事業分野での売上増が重要になるとしたほか、フォルシアが今後の中核事業としていくサステイナブル・モビリティとコックピット・オブ・ザ・フューチャーでも、モジュールやスイッチ類などの調整に関連してクラリオンの手助けが必要であると指摘。新たな組み合わせによってこれまでになかったユーザー体験を作り出していくことを目指している。
個別の技術では、低速ADAS(先進運転支援システム)、高速ADAS、自動運転、IVI(車載情報システム)、サウンドシステム、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)などの分野でクラリオンのセンサー類や乗客モニタリング技術がコックピット管理に多大な貢献をしていくだろうとコラーCEOは述べた。
一方でクラリオンにとっても、同じくフォルシア傘下に入ったParrot Automotiveが持つAndroid OS関連技術やCoagentのIVI技術などを使ってグローバルな成長が望めるほか、現状ではフル稼働となっていないクラリオンの生産拠点をフォルシアグループで活用していけることもメリットとした。
クラリオン単独では実現できなかったアイデアを具体化できるチャンス
川端EVPからは、フォルシアの「第4の事業部門」として設立されたフォルシア クラリオン エレクトロニクスが誕生することになった経緯や今後の戦略などについて解説を実施。
2018年10月に株式公開買付が行なわれることになった際、クラリオンではフォルシアについて精査。この結果、このTOBが「完璧な補完関係を生み出す」との結論に至り、積極的に取り組んでいくことになったと川端EVPはコメント。これまでフォルシアはシート事業の「シーティング」、インパネやドアパネルを取り扱う「インテリア」、排気系技術を提供する「クリーンモビリティ」の3事業を柱としてきたが、クラリオンとParrot Automotive、Coagentの3社が合流し、フォルシア クラリオン エレクトロニクスが第4の事業部として設立された。
フォルシア クラリオン エレクトロニクスでは、クラリオンの電子技術、コンピューター技術、ソフトウェア技術、画像処理技術をフォルシアのシーティングやインテリアの領域に活用。これまでクラリオン単独では、考えついても実現に至らなかったアイデアを、フォルシアでシーティングやインテリアを担当するチームと協力することによって具体化していけることを大きなチャンスとして位置付けた。
また、合流する3社については、Parrot AutomotiveがAndroid OS系のプラットフォームについて高い技術を持ち、欧州系の自動車メーカーをOEMカスタマーとして保有。Coagentは低コストでの製品化に長け、IVIプラットフォームを持ち、中国系の自動車メーカーをOEMカスタマーとして保有しているという。これについて川端EVPは、いち早くこの2社とインテグレーションを行ない、グローバルに向けて新たなコアコンピタンスを訴求していきたいと述べた。
フォルシア クラリオン エレクトロニクスとして今後注力していく領域としては、「コックピット」「低速ADAS」「BtoBなどOEMビジネス以外の事業」の3つを事業の柱に位置付け、得意領域となっているこの3領域について経営資源を集中投資していく。
コックピット領域では3社の力を結集し、さらにフォルシアのほかの事業部と連携してグローバルリーダーの地位を目指すとのこと。低速ADASでは現状で競合他社を1歩先んじているとアピールしつつ、トップクラスの争いをさらに推し進めていくとする。OEMビジネス以外の事業では、収益性にこだわった経営を行なっていくと川端EVPは解説している。
両氏によるプレゼンテーションの後には質疑応答も実施。今後の注目技術として激しい開発競争が続けられているCASEについて、フォルシアがアドバンテージとしている点について質問され、これについてコラーCEOは、「フォルシアはインテリアに関連するすべての技術を統合するユニークな存在であり、正当なサプライヤーとして選ばれる立場にいる。インテリアに関するサーフェイスはつながっており、品質や安全性、快適性は重要視されるポイント。快適性にはいろいろな種類があり、姿勢や温度、音響システムなどが快適性として挙げられるが、クラリオンが新たに参画することによって音響システムやアンビエンスによるユーザー体験が追加される」。
「低速ADASでは、これまで日立のサポートを受けて技術投資を続けてきたクラリオンが大手となっており、画像検出や画像処理に多くの投資が行なわれている。ADASではレベル5の技術が市場に出まわるのはかなり先になると想定しており、これからしばらく先も低速ADASや運転支援の技術が主流になると考えている」。
「サステイナブル・モビリティの領域でも、パワートレーンやドライバーモニタリングシステムといったドメインで、あと少しでメーカーOEMの座を獲得できるだろうと考えている。こういった領域で成長を達成していけると確信している」と回答。
フォルシア クラリオン エレクトロニクスがどのようにシナジー効果を挙げていくのかといった質問に対しては、川端EVPが「(フォルシアの)4つの事業部では、フォルシア クラリオン エレクトロニクスだけにクラリオンという従来の名前が残っています。クラリオンという社名にこだわっているわけではありませんが、ここにわれわれの名前が残っているということを重く受け止めて、事業部としてちゃんと育てていかなければいけないのだなという思いがあります。クラリオンのブランドを愛していただいた多くの方には、ここにクラリオンの名前が残ったことで、いろいろな思いをお伝えしていきたいと考えています」と回答。
このコメントをコラーCEOが引き継ぎ、「名前を保つ重要性は、われわれはフォルシア クラリオン エレクトロニクスを『グローバルな日本企業』にしたいということ。そして『グローバルな領域でリーダーになること』。また、名前をキープしただけでなく、ロゴの色遣いも保っており、これは会社の価値観を信じていて、クラリオンで働く人のエネルギーや情熱を信じていて、その理由から買収を決定したからだ」と補足している。