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PTC、3D CADソフトウェアの最新版「Creo 7.0」オンライン発表会
秋にはマイナーバージョンアップ「7.0.2」発表。テレワーク向けの対応も
2020年4月23日 12:20
- 2020年4月22日 発表
ソフトウェアメーカーのPTC(ピーティーシー)日本法人のPTCジャパンは4月22日、オンライン記者会見を開催し、主力製品であるCADソフトウェア「Creo」(クリオ)の最新版となる「Creo 7.0」を発表した(米国では現地時間4月14日に発表)。
Creo 7.0は「ジェネレーティブ・デザイン」「リアルタイム・シミュレーション」「マルチボディ設計」などの特徴を備えており、ANSYS(別記事参照)との連携による流体解析機能などが追加されている。これにより、Creoで設計したパーツを利用してすぐに流体解析を行なう機能などが追加され、自動車やパーツの空力設計をこれまでよりも効率よく行なうことが可能になっている。
CAD/CAEの老舗ベンダ「PTC」の3D CADソフトウェアの最新版となる「Creo 7.0」
PTCは米国のボストン市に本社を構えるソフトウェアベンダで、古くから3D CAD(Computer Aided Design。コンピュータを利用した設計支援)を提供するベンダとして知られ、自動車、防衛、重工業などの製造業の企業を顧客としている。現代の自動車の設計はCADやCAE(Computer Aided Engineering)などの言葉で呼ばれるコンピュータを活用した設計が当たり前になっている。CADなどで部品を設計し、それを元にコンピュータモデルを作成し、それを実環境を模した仮想空間で走らせてシミュレーションを行なう、そうした開発手法が一般的になっている。
このため、自動車メーカーでは複数のCAD/CAEツールを使うのが一般的で、日本の自動車メーカーでよく使われているツールとしては、ダッソー・システムズのCATIA(キャティア)などが知られているが、PTCのCreoもその1つだ。今回PTCが発表したCreo 7.0はその最新版となる。
PTC PTC部門バイスプレジデント Creo CAD 事業部長 ブライアン・トンプソン氏は「Creo 7.0には作業効率を向上させる機能改善、ジェネレーティブ・デザイン、リアルタイム・シミュレーション機能、マルチボディ設計などの新機能が用意されている」と、その概要を説明した。
目玉機能であるジェネレーティブ・デザインは、加重、制約、使用材料、製造工程と規定されているデザイン要件を入力すると、AI(人工知能)が最適なデザインを自動生成してくれる機能となる。通常の設計では、ある程度まで形にしてから製造の現場と相談して製造可能なようにデザインを変更するといった形で部品の設計が行なわれている。
ジェネレーティブ・デザインではその逆で、まずは製造の現場が実現可能な条件などを入力し、そこに部品にかかる加重や使用する材料、熱などのデータを追加すると、Creoが最適なデザインを自動で導き出してくれる。これにより、製造現場とのやりとりを最小限にしながら最適なパーツ設計が可能になる。
Creoの中で完結するリアルタイム・シミュレーション機能
もう1つの大きな機能アップデートとなるのが「リアルタイム・シミュレーション」で、シミュレーション・ソフトウェアで知られるANSYSとの提携により実現された機能だ。「Creo Simulation Live」の新機能として提供されるリアルタイム・シミュレーションを利用すると、空気の流れなどをシミュレーションして、平面で切ってデータを確認するといった作業などをCreoの中で完結できる。以前は、CADツールで設計してから、別のシミュレーションツールにデータを入力するといった面倒な作業が必要で、何か手直したびにそのプロセスを繰り返さなければいけなかった状況と比べるて生産性が大幅に向上している。
また、部品デザインの管理、把握、編集をより容易にするために「マルチボディ設計」という機能が追加されており、1つの部品を複数の部分に分けて設計できる。これにより、1つの部品として扱うよりも編集などが容易になる。
付加製造の機能では、より詳細に設計できるようユーザー定義ラティスを改善したり、Creo APIとよばれるAPIの機能を強化して、3Dプリンターへの出力をよりやりやすくした他、スイス型加工機などにも対応する。
秋ごろにはCreo 7のマイナーバージョンアップ版となる「Creo 7.0.2」を計画しており、クラウドへの対応やCreo ANSYS Simulation Extentionなどが追加され、ANSYSとの連携がさらに強化される。また、COVID-19(いわゆる新型コロナウィルス)の感染拡大などにより、製造業でも従業員がテレワークになる例が増えていることに対応するため、今後は柔軟なライセンス利用、無償のオンライントレーニングなど、テレワークに対応した使い方ができるような仕組みの提供も行なわれていく予定だ。