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マイクロソフト、トヨタの「HoloLens 2」活用事例やAI自動運転企業との協業など発表
「de:code 2019」基調講演で平野拓也社長が紹介
2019年5月29日 16:03
- 2019年5月29日 開催
日本マイクロソフトは、ザ・プリンス パークタワー東京(東京都港区)でIT関連のエンジニア向けテクニカルカンファレンス「de:code 2019」を5月29日~30日に開催している。
初日の5月29日には、日本マイクロソフト 代表取締役 社長の平野拓也氏などが登壇する基調講演が開催された。なお、この基調講演はライブ配信が行なわれ、その模様はアーカイブ動画として公開されている。
基調講演内の冒頭部分では、平野社長からマイクロソフトが「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるように支援する」という目標をミッションとして掲げていることについて紹介。さらに日本マイクロソフトとしても、日本の社会変革に貢献し、日本がもっと元気にエネルギーが出るように活動していきたいと考えていると説明。
そのためにコアとなる技術がマイクロソフトのクラウドテクノロジー「Microsoft Dynamics 365&Power Platform」「Microsoft 365」「Microsoft Gaming」「Microsoft Azure」の4つであり、ベースになるのがMicrosoft Azureで、その上に用途別の3つがレイヤーとなって業務を進めていくという。また、オープンなプラットフォームを備えていることでパートナー企業も巻き込み、ダイナミックにビジネスを進めていくといい、日本のユーザーが展開する「デジタルトランスフォーメーション」の最新事例として、トヨタ自動車におけるクラウド技術と「HoloLens 2」による「MR(ミックスドリアリティ)」活用について紹介した。
平野社長はトヨタでの事例について、HoloLens 2を装着してMRを活用することにより、クルマの整備や修理などのシーンで、これまで車種ごとに行なっていた印刷物やWeb情報などを参照する手順が不要となった。加えて、パーツや作業手順などが3D表示で直感的に分かるようになり、作業レベルの標準化やクオリティの確保、作業員の習熟度の加速といったメリットが出ることを期待できると解説。
2019年内に導入が開始され、全国のトヨタ系ディーラーで3Dの作業手順書などが順次展開されていく予定であると述べ、さらに3Dの作業手順書などと同様の機能を有するMicrosoft Dynamics 365ガイドの活用検証についてもすでに行なわれていると紹介。将来的な技術としては、Microsoft AzureのAI技術を使い、作業ミスや作業の漏れなどを検出する機能の開発と検証を行なっているという。
これについて平野社長は、販売店の顧客にとっても大幅な待ち時間短縮でサービス向上につながる取り組みであり、「業界に先駆けてCADや3Dデータを活用し、AIの実装についても検証していることは先進的であり、非常に楽しみにしています」と解説している。
複雑な仮想環境下での自動運転技術開発には、Microsoft Azureのようなクラウド技術が不可欠
トヨタでの事例紹介に続き、平野社長はアセントロボティクスとの協業について発表。アセントロボティクスについて紹介する動画に続き、アセントロボティクスの代表取締役を務める石﨑雅之氏が登壇した。
石﨑氏はアセントロボティクスについて、AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)を使った自動運転向けソフトウェアを開発している2016年9月創業のスタートアップ企業であると紹介。90名以上いる社員の80%以上を技術者やエンジニアが占めているという。
現在の自動運転車が抱える一番の課題について、石﨑氏は「道路に人間が運転するクルマやバイク、自転車、歩行者などが存在し、自動運転以外のものと共存しなければならないこと」と解説。現在の自動運転車ではカメラやセンサー類以外にも通信によって手に入れたインフラからの情報を活用して道路の状況を把握していることから、通信などの環境が整っていない場所では自動運転が実現できないと指摘した。
この課題に対して石﨑氏は、自動運転車が人間と同じように周囲の状況を把握して走行を続けられるテクノロジーの開発に取り組んでいると紹介。そのために、人間に近いレベルで認知・判断・意思決定ができるAIの開発に注力しているという。
アセントロボティクスでは、独自技術であるシミュレータを駆使し、めったに起きないような状況をAIに学習させる「仮想空間におけるAIのトレーニング」、判断や観測が難しいような状況の予測をAIに学習させ、人間のような対応を可能にしていく「機械学習」、車両の運転操作がどのような理由から行なわれたのかトレース可能にする「説明可能性」といった3つのアプローチを行なっているという。
このように複雑な仮想環境下で大量のデータを扱うには、その活動をサポートするインフラ環境の整備は必要不可欠で、Microsoft Azureが持つスケーラビリティや高いセキュリティ認証、データ認証の扱われ方、Microsoft Azure上で提供されるさまざまなAIやIoTサービスなどについて検証した結果、マイクロソフトとの協業を決断。マイクロソフトからは技術面でのサポートだけでなく、ビジネス開拓などの面でも支援を受ける予定と語った。
最後は石﨑氏と平野社長のトークセッション形式で進められた。石﨑氏は2019年末から2020年初頭をめどにロボット向けのAIソリューションを初めて製品として発売予定であることを紹介し、販売ではマイクロソフトが持つ広い顧客ベース、販売ネットワークを活用させてもらいたいとコメント。平野社長もいっしょにどんどん売っていきたいと答えている。