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マイクロソフト、MRデバイス「HoloLens 2」を全国のトヨタ GR Garageに導入開始

自動車の整備作業の効率化やトレーニングで活用

2020年10月6日 発表

HoloLens 2を使って目の前にある実車を見ると3Dデータが重なって見える

 日本マイクロソフトは10月6日、トヨタ自動車がMixed Reality(複合現実、以下MR)デバイス「HoloLens 2」を10月より全国のGR Garage 56店舗に順次導入していくと発表した。

 トヨタは2019年5月に、自動車の修理・点検業務におけるMRおよびHoloLens 2の活用に向けた検証実施を発表していたが、本取り組みが発展し、今回の全国のGR Garageでの導入に至ったという。

HoloLens 2

 これまで、現場のサービスエンジニア(整備士)が自動車の修理、整備作業を行なう際に参照するサービス技術情報(修理書、配線図など)は、イラストや文字などの2Dデータが主に使われているため、実車での正確な位置や、勘やコツなどの情報を伝えるのが難しいことに加えて、CASEなどの複雑化・多様化する情報への対応において課題があった。

 そこで、トヨタは最新のMRテクノロジと3Dデータの活用により、効率的で正確な作業支援ができないかを検証していた。今回GR Garageでは、4つの機能が活用される(画像は開発中のもの)。

MRを用いた配線図・艤装図(GR ヤリス、C-HR、プリウスの3車種)

 従来の2Dマニュアルでは分かりづらかった部品や、コネクタの配置などの配線や艤装に関する情報を、3Dで実車に重ね合わせて表示させることで正確な位置を直感的に理解できるようになった。

従来の2Dの艤装図
実車に重ね合わせて表示させた3Dの艤装図
品番や品名、回路図などの必要な情報を一括表示させ、正確で効率的な作業ができるようにサポート
MRを用いた新型車機能解説(GR ヤリス)

 自動車の複雑な機能や通常は目には見えない空力の様子などを、3Dホログラムとして車体に重ね合わせて表示させ、稼働状態などをアニメーションで確認できることから、整備士は車両を見ながら、より分かりやすく楽しく直感的に学習できる。また、詳細な解説機能ナレーションなどを使った自己学習も可能とした。

4WD機構の解説例

 上記の「MR配線図・艤装図」と「MR 新型車機能解説」では、Microsoft Azureの新サービス「Azure Object Anchors」が活用されている。

 従来はホログラム表示の位置を特定するためにQRコードなどのマーカーや手動による位置合わせが必要だったが、このAzure Object Anchorsを用いることで、実空間の車両の位置を自動で検出し、ホログラムをその車両に重ね合わせた位置で正確に表示できる。

 トヨタ自動車サービス技術部主幹の栢野浩一氏は「マーカーをお客さまのクルマに貼り付けると、傷や汚れが付く可能性があるため、車両の位置を特定して3Dモデルを配置することが必須条件でした。Object Anchorsを使うことで、誰でも簡単に、3Dモデルを車両に合わせて自動的に表示することが可能になります。マイクロソフトと先行的な技術開発を行ない、今回初めて実現できました」と述べている。

作業手順ガイド・トレーニング

 自動車のパーツや用品の取り付け手順を、3Dホログラムを用いて、自動車に重ね合わせて表示することで、トレーニングや実際の作業時の作業ガイドとして使用可能。こちらは、汎用的な「Microsoft Dynamics 365 Guides」が活用されていて、プログラミングが不要なので、販売店でも独自の教材を容易に作成できる。

Microsoft Dynamics 365 Guidesを活用したトレーニングおよび作業ガイドの様子
遠隔地とのコミュニケーション支援

 トヨタの販売店では「Microsoft Teams」が活用され始めていて、オフィスでパソコンを使って働く従業員と現場の整備士とのコミュニケーション促進のためHoloLens 2に「Microsoft Dynamics 365 Remote Assist」を導入。

 現場の整備士はHoloLens 2を装着することで、自身の視点の映像を、遠隔地にいる販売店本社のエキスパートのMicrosoft Teams上にリアルタイムに表示させながら会話ができる。

 さらに矢印やインクなどのアノテーション機能によって、現実の空間内に書き込みもできるので、あたかも隣にいるかのような具体的な指示やコミュニケーションが可能となる。

Dynamics 365 Remote Assistを活用した遠隔地とのコミュニケーションの様子

 上記の「作業手順ガイド・トレーニング」および「遠隔地とのコミュニケーション支援」は、とくに現在の新型コロナウイルス感染症の状況下において有用な機能となり、集合研修や人の移動が難しい時でも、3密を避けた自己学習を実現し、また現場の視線を遠隔地と共有することで、その場にいるかのようなコミュニケーションとサポートが可能とした。

 全国のGR GarageへのMRの展開に際して、100台に上るHoloLens 2のOS設定、アプリ配信、アクセス権などの細かな設定やその状況把握を行なう必要があるが、トヨタではクラウド上で各種デバイスの運用管理が可能となる「Microsoft Endpoint Manager」を活用することで、運用工数の大幅削減に成功している。