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ミシュラン、ユーラシア大陸を横断した「スカニア製トラクター」も展示した「ドライバー獲得セミナー」開催
すり減ったタイヤの“リグルーブ”体験会も実施
2018年11月27日 05:00
- 2018年11月26日 開催
日本ミシュランタイヤは11月26日、神奈川県川崎市の川崎マリエンで同社のトラック・バス用タイヤのユーザーを対象とするセミナー「運送会社が考えるドライバー獲得&定着方法」を開催した。
このセミナーではドライバーの獲得や定着に向けて積極的に取り組んでいる事業者の代表として、運送会社のトランスウェブ 代表取締役社長 前沢武氏がプレゼンテーションを実施。
前沢氏が代表を務めるトランスウェブは2001年1月の設立と、運送業界では後発の企業であることから、SUPER GTやスーパーフォーミュラといった国内モータースポーツで使われるレースマシンや機材の搬送、高級輸入車の陸送といった、万が一のリスクが大きいことから他社が手を出したがらない分野に積極的に取り組んで差別化を図ってきたという。そんな輸送に使う車両は、すべて同じスカニア製のトラクターを採用。これによって荷物を搭載するトレーラー側は、モータースポーツ用のパネルタイプから車載用、航空貨物向けのエアカーゴなどさまざまな種別向けを牽引することが可能で、いろいろな業務で活用して効率が高められるようにしているという。
その理由として前沢氏は、モータースポーツは仕事の頻度がそれほど高くなく、また、レースマシンや高級輸入車を運ぶためにはドライバーの熟練度が必要になるが、入社してしばらくは航空貨物やさまざまな荷物を運ぶ業務で経験を積み重ねたり、ほかの人が高級輸入車などを載せた後にトレーラーを連結し、運ぶ業務だけを担当することも可能になってドライバーの教育や自由度の高い仕事の割り振りが可能になると説明する。
トラクターを車両単価の高いスカニア製としている理由は、顧客となる荷主にトランスウェブではスカニア製トラクターを使っているというイメージを定着させる戦略があるほか、トラックに強い興味を持っているドライバーに入社してもらったり、退職するとスカニア製のトラクターに乗れなくなると考えてもらってドライバーに定着してもらうことも狙いになっているという。
このほかにトランスウェブでは「トランスウェブ フェスティバル」と名付けた社内イベントを開催して、楽しい雰囲気の中で人材確保に向けたアピールを行なったり、ドライバーを何人か集めて班体制を作り、班内の結束を高めたりすす活動を行なっているという。
また、トランスウェブでは9月から新しいスカニア製トラクターを導入することになったことを受け、「名前が似ているZOZOTOWNの前澤社長が『月に行く』と言ったことに影響された」という「ユーラシア大陸 横断ストーリー」を実施することになったと前沢氏は説明。ほかの人がやっていないことをすれば人の心に残るのではないかと考えたとのことで、モデルチェンジしたばかりの新型車を自分たちで運転して日本まで運ぶことで、5年~10年後に入ってきた新人ドライバーに誇れるエピソードとして取り組むことにしたという。
9月にオランダにあるスカニアの工場で車両を受けとり、さまざまな準備を行なってから9月21日(現地時間)独 ハノーバーで開催された商用車ショー「IAA 2018」の会場から大陸横断の旅をスタート。約1か月で1万2000kmを走破し、韓国から鳥取県の境港に到着したという。この旅の途中ではEU各国からロシアなどを経由したが、道路にもきれいに舗装されているところから未舗装路までさまざまで、EU圏からロシアに入国するときは入国だけで10時間かかったと語る。荷物は積み荷から手荷物の入ったバッグまで全部チェックされるなど大変な思いをしたが、同じように入国待ちをしている前後の現地ドライバーと会話するうち、事情を理解した彼らがさまざまな助言や手助けをしてくれたとのエピソードを語り、「国は違ってもトラックは同じで荷物を運んでいる仲間なんだ」と強く実感したと述べた。
最後に前沢氏は人材確保のポイントとして、「新しく求人するよりも在職者を大事にすること」「他業種からの求人を大事にすること」が重要であると述べ、同じ運送業界で人材を取り合うのではなく、他業種から新しい人にドライバーとして働いてもらうようにすることがこの先重要になっていくとの考えを示した。
前沢氏に続き、日本ミシュランタイヤ B2B事業部 尾根山純一氏からもプレゼンテーションが行なわれた。
尾根山氏は運送業界の人手不足についてデータを分析。実は輸送する物量自体や就業総数については大きな増減は起きていないが、年代構成で10代~20代の若者が減っていることを指摘。また、過積載の取り締まり強化や「働き方改革」によるドライバーの拘束時間管理が厳格化されたこと、若い世代の人がクルマにそれほど関心を持たなくなってきたことなどを挙げ、こういった問題解決に向けて、ミシュランでは「運転事業者向け診断パッケージ」「軸別専用タイヤ」「TPMSクラウドサービス」という3種類のオファーを用意していると紹介した。
また、尾根山氏は軸別専用タイヤについての解説の中で、運送業界に止まらず、今後はタイヤ業界でも人手不足が進んでいくとの予測を披露。この先はタイヤ交換の作業が予約制になっていくほか、タイヤに関する出張サービスなども難しい状況になっていくだろうと語り、偏摩耗を抑制してローテーションの回数を抑え、タイヤを長寿命化する軸別専用タイヤの積極的な導入を呼びかけた。
両氏によるプレゼンテーション後には、屋外展示されたトランスウェブの車両2台の見学や、ミシュランが推奨しているすり減ったタイヤの“リグルーブ”体験会も実施された。
展示車両の1台は、前沢氏のプレゼンテーションでも紹介された「ユーラシア大陸 横断ストーリー」で日本に持ち込まれたスカニアの新しい「Sシリーズ」。トレーラー側面で1か月に渡る旅の概要を紹介するこの車両では、フロントの操舵輪、2軸目の駆動輪、後方にある3軸のトレーラー輪のそれぞれでミシュランの「軸別専用タイヤ」を装着している。
もう1台はミシュランのレース活動で活用されているイメージカラーのブルーに塗装されたトラクターで、後方のトレーラーをテントに活用して、参加者同士の意見交換の場として使われていた。