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自工会 豊田章男会長が「歴史上初めて恒久減税していただいた」と語る、自動車税減税のポイント

自民党と公明党の与党が策定した「平成31年度税制改正大綱」

12月20日の日本自動車工業会 記者会見で自動車税恒久減税について言及する豊田章男 自工会会長

 12月14日、政権与党である自由民主党と公明党が「平成31年度税制改正大綱」を発表した。政権与党の税制改正大綱は、税制改正のベースとなるもので、とくに2018年末の平成31年度税制改正大綱は、2019年10月(平成31年10月)に消費税率10%への引き上げを控えるだけにこれまでよりも大きな変更が加えられている。

 とくに大型消費財である自動車と住宅には、「自動車と住宅に対する税制上の支援策を講ずる」と基本的な考え方で触れられており、さまざまな税の変更が提言されている。自工会(日本自動車工業会)がユーザーと一体となって要望していた自動車税の引き下げについても、詳細な税額が記されていた。

 自工会は12月20日、年末の記者会見で税制改正大綱に言及。豊田章男自工会会長は、自動車税引き下げについて「歴史上初めて(自動車税を)恒久減税していただいた」と謝辞を述べ、税収においては「自動車産業を納税産業と見るか、戦略産業と見るか」が大切で、今回の平成31年度税制改正大綱については、自動車産業を戦略産業と見てもらったとの手応えを得ているようだ。

 この与党が提言した税制改正大綱の中から、自動車関連についてのポイントを紹介していく。

自工会が作成した消費増税による市場への影響と題したスライド。消費税が増税されるごとに、自動車の年間販売台数のベースが下がっていくのが分かる。10%の消費税率引き上げにより、国内生産が崩壊するのを危惧し、自動車関係諸税の引き下げに注力していた

自動車税の減税について

 自工会がユーザーとともに強く要望していた自動車税減税については、消費税率10%引き上げに合わせ「自動車の保有に係る税負担を恒久的に引き下げる」とし、平成31年10月1日以後に新車新規登録を受けた自家用車乗用車(登録車)に対して適用していくことになった。

 すでに販売された平成31年10月1日以前に登録されたクルマに適用されないのは、「国内自動車市場の活性化」に加え、安全性能や燃費に優れたクルマに置き換えていくとしている点がポイント。新しいクルマが現在町中を走るクルマよりも燃費および安全機能に優れることを前提にしたインセンティブが行なわれている。

 新しい自動車税は小排気量車のほうが引き下げ率が大きくなっており、1000cc以下の引き下げ額は4500円と15.3%に達するのに対し、2500cc超の引き下げ額は一律1000円で率はひと桁。額を見ると、より小型車にお得感があるような自動車税テーブルとなっている。

平成31年度税制改正大綱 自動車税引き下げ案のグラフ。排気量の小さい車両の引き下げ額&率が大きい
自動車税引き下げ額現行改正案引き下げ額引き下げ率
1000cc以下29,500円25,000円4,500円15.25%
1000cc超1500cc以下34,500円30,500円4,000円11.59%
1500cc超2000cc以下39,500円36,000円3,500円8.86%
2000cc超2500cc以下45,000円43,500円1,500円3.33%
2500cc超3000cc以下51,000円50,000円1,000円1.96%
3000cc超3500cc以下58,000円57,000円1,000円1.72%
3500cc超4000cc以下66,500円65,500円1,000円1.50%
4000cc超4500cc以下76,500円75,500円1,000円1.31%
4500cc超6000cc以下88,000円87,000円1,000円1.14%
6000cc超111,000円110,000円1,000円0.90%

エコカー減税の継続と改訂。自動車取得税の廃止と環境性能割の新設、および変更案

 現在も行なわれているエコカー減税については、適用期限の2年延長が行なわれることになった。ただ、エコカー減税率には細かな見直しが行なわれている。ガソリン乗用車における自動車重量税のエコカー減税については、現在の75%軽減が50%軽減に、50%軽減が25%軽減に変更されるなどの引き下げが行なわれる。また、自動車取得税のエコカー減税についても、6か月の延長を実施。80%軽減と60%軽減を50%軽減にまとめ、40%軽減を25%軽減に変更する。自動車取得税は2019年10月以降に廃止されるため、6か月の延長にとどまるわけだ。

 自動車税は引き下げられ恒久減税となるが、この結果従来からの案に手が加わったのが消費税率10%引き上げ後に導入される予定の環境性能割になる。環境性能割は、現在ある自動車取得税の廃止に伴い導入される新しい税制で、基本税率は自動車取得税と同様に3%。そこに対して、燃費によって軽減税率が設定されていたが、その基準が見直されている。

 乗用車では、平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能のよいものが非課税、平成32年度燃費基準値を満たすものが1%、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能のよいものが2%(それ以外が3%)となっていたのが、平成32年度燃費基準値より20%以上燃費性能のよいものが非課税、平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能のよいものが1%、平成32年度燃費基準値を満たすものが2%へと変更している。

 この環境性能割では、平成30年排出ガス規制に適合し、かつ平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物などの排出量が少ない自動車を、非課税または1%もしくは2%の税率の適用を受ける区分に加えるとしており、燃費面・排出ガス面を考慮したものになっている。

 さらにこの環境性能割については、消費税増税後の移行措置があり、平成31年10月1日から平成32年9月30日までの間に取得した自家用自動車については、それぞれ1%の優遇を受ける。

 以上はガソリン乗用車についてだが、電気自動車・燃料電池車・プラグインハイブリッド車・クリーンディーゼル乗用車であればさらに有利な軽減税率が適用できる可能性があり、軽自動車・重量車(バス・トラックなど)では異なる税率・条件が適用されている。

歴史上初めての自動車税恒久減税が持つ意味

 豊田自工会会長は会見で「歴史上初めて恒久減税していただいた」と語ったが、同時に「アメリカにおいては、30倍が29倍」へと下がったと国際水準に言及。「依然として高い税金を(ユーザーに)負担していただいている」と述べた。

 減税規模はおよそ1300億円となると言われているが、自動車税を1300億円減税しても、それ以上の経済効果が日本にとってあるかどうかがこれからの注目点でもあるだろう。減税すると、それ以上の経済効果が発揮されるならば、より減税していくという流れにもなる。豊田会長は「セールススタッフはさぞや大変」と語ったが、この減税の魅力を自動車販売の現場でどう伝えていくのかが今後の課題となる。

 そのための告知活動、セールスキットの提供などに自工会は本気で取り組んでいく必要があり、「歴史上初めての恒久減税」が自動車産業、引いては日本の経済活動にプラスとなるのか示していく必要がある。

 おそらくその大きな取り組みの一つとなるのが、消費税率10%引き上げ&自動車税減税直後に開催される「第46回東京モーターショー 2019」。一般の人が入れるプレビューデーは10月25日から始まり、11月4日まで開催される。ここでいかにクルマの魅力を伝えられるか、100年に一度というクルマの変革を多くの人と共有できるかだろう。