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日産、アウディ、BMW、ジャガーなどが続々とワークス参戦する「フォーミュラ E」、第5戦香港開催

3月10日、スポーツ専門チャンネル「J SPORTS 4」で生中継

2019年3月10日 開催

Formula EのGen2シャシー、バッテリー容量が2倍になっている

 ABB FIA Formula E選手権(以下Formula E)は、2014年から開催されているEV(電動自動車)のフォーミュラカーレースで、2018年12月からシーズン5(2018~2019年)が始まっている。3月10日(現地時間)に開催される香港戦で第5戦「2019 HKT Hong Kong E-Prix」を迎え、中盤戦に突入している。

 Formula Eの特徴はフォーミュラカーのパワートレインがバッテリーとモーターで構成されているEVであること、さらにはほとんどの会場がサーキットではなく市街地のコースを利用していることにある。

 今回の香港のレースも、香港島のフェリー乗り場近くに設置された特設コースで開催されており、香港島の中心地となる「中環駅」ないしは「香港駅」からすぐという絶好のロケーションで行なわれている。レースは本日11時45分(現地時間、日本時間12時45分)から予選が行なわれ、16時03分(現地時間、日本時間17時03分)より決勝レースが、45分+1周という形で行なわれることになる。

Gen2という新しいシャシーが導入されてバッテリー容量が倍に。1レースを走りきれるようになった初めてのシーズン

Gen2シャシー。フォーミュラカーだけどフロント、リアともにフェンダーがついているのが特徴的

 Formula Eは2014年にファーストシーズンが始まり、現在行なわれているシーズン5(2018年~2019年)で、5シーズン目を迎えて、より大きな発展を見せている。

 シーズン5では新しくGen2と呼ばれる新シャシーが導入され、バッテリーの容量が従来のGen1シャシーに比較して倍になった。これにより、従来は1人のドライバーがレース途中に充電済みの車両を乗り換えていたという仕組み(それはそれでFormula Eのユニークさの一つだったのだが)がなくなり、1台の車両でレースを最後まで戦えるようになった。

Gen2シャシーのバックショット

 これにより、従来とは若干様相が異なるレースが展開されるようになっている。開幕戦から第4戦まで毎回違うウィナーが誕生しており、毎戦誰が勝つのか分からないレースという、より面白いシリーズになっている。

コクピットにはHaloが装着されている
タイヤはミシュランが供給している、フォーミュラカーとしては珍しい18インチのホイルを採用

 そうした中で行なわれるのが、香港開催となる第5戦「2019 HKT Hong Kong E-Prix」だ。会場となるのは、香港の繁華街となる香港島の「中環駅」ないしは「香港駅」から徒歩ですぐというフェリーターミナル近くに設置されている特設サーキットで、電車を降りてすぐという場所。日本で言えば、東京駅を降りてすぐの場所がサーキットであるようなもので、そう言えば、どれくらい便利なロケーションであるか理解してもらえるだろうか。

 サーキットそのものはそうしたフェリー乗り場近くのイベントスペースや周囲の公道を利用したサーキットで、ストレートと直角のコーナーが多い、いわゆるストップアンドゴーのレースとなる。しかし、パワートレインがバッテリー+モーターになっているFormula Eの車両にとっては、レースをするのに最適なサーキットでありになっている。というのも、Formula Eの車両では充電はピットにある充電器で行なうほか、コース上でリアブレーキからのエネルギー回生によりまかなわれているからだ。

 ただし、3月10日の天気予報は雨。これまでのFormula Eのレースはいずれも晴天や曇りという中で行なわれてきたので、雨という状況でどのような予選、レースが展開されるのかまったく予想ができない状況だ。

アウディ、BMW、ジャガー、PSAグループなど自動車メーカーが続々参戦。シーズン5から日産自動車も

 こうしたFormula Eだが、今世界中の自動車メーカーから大きな注目を浴びている。というのは、自動車メーカーにとって参戦費用が、Formula 1などのレースに比べると圧倒的に低いからだ。

ブノア・トレルイエ選手
Audi Sports ABT Schaefferのピットガレージ

 アウディのワークスチームであるAudi Sports ABT Schaefferで、開発・リザーブドライバーを務める日本でもおなじみのブノア・トレルイエ選手によれば「コストに関しては我々のチームがどの程度のコストかは公式なコメントとしては言えないが、ラフに言えば年間で1千万ユーロ(筆者注:1ユーロ=125円換算で12億5千万円)ぐらいと言われており、ほかのメジャーなモータースポーツよりもコストが安く済んでいる」と述べており、メーカーにとってはF1など年間で数百億円が平気で消えていくと言われているカテゴリーに比べるとコストパフォーマンスが良くなっているからだ。

DS Techeetah チーム代表 マーク・プレストン氏

 そしてメーカーにとってのもう1つのメリットは、パワートレインの開発が許されており、開発を続けることができることだ。今年からPSAグループの高級車ブランドであるDS Automobilesと提携を開始してDS Techeetahのチーム代表であるマーク・プレストン氏(かつてもスーパーアグリF1のテクニカルダイレクター)は「メーカーにとっての魅力はパワートレインの開発ができること。我々のチームではDS Automobilesと共同で開発を続けており、特にソフトウェアでの差別が大事になっており、そうした開発を続けている」と述べ、自動車メーカーにとってもEVのパワートレインを開発をできることも魅力の1つであると説明している。

日産も今シーズンからFormula Eに参戦

 このため、トレルイエ選手が所属するAudi、プレストン氏のチームのパートナーであるDS Automobilesだけでなく、ほかにもBMW、ジャガーなどがワークス参戦しており、今シーズンからは日本の自動車メーカーである日産自動車も参戦を開始しているほか、ポルシェがメルセデスが参戦を予定しているなど、世界中の自動車メーカーがFormula Eに集合している、そうしたイメージすらある。

Formula Eのレースは市街地で開催されかつワンデー開催が基本。日本でもJ SPORTS 4で中継が行なわれる

 Formula Eのもう1つの特徴は、イベントもコンパクトに省エネルギーで行なわれていることだ。市街地コースで行なわれているのはすでに述べたとおりだが、イベントもワンデー開催が基本になっており、予選と決勝が同日に行なわれ、1日でイベントが終了する仕組みになっている(実際には前日にシェイクダウンと呼ばれる走行は行なわれるが)。

 香港のレースも、予選が3月10日のワンデー開催になっており、11時45分(現地時間、日本時間12時45分)から予選が行なわれ、16時03分(現地時間、日本時間17時03分)から45分+1周で決勝レースが行なわれる予定になっている。

 なお、日本でのテレビ中継はCS放送などで視聴できるスポーツ専門チャンネル「J SPORTS 4」で12時半から14時半(日本時間)まで予選が、16時半から19時(日本時間)までの予定で決勝レースが生中継で放送される予定だ。