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Taipei AMPAについてTAITRA 理事長 兼 CEO 葉明水氏に聞く

台湾の自動車エコシステムを紹介

2019年3月15日 実施

TAITRA 理事長 兼 CEO 葉明水氏にTaipei AMPAについて話をうかがった

 TAITRA(TAIwan external TRAde development council:台湾貿易センター)は、日本で言えばJETRO(日本貿易振興機構)に相当する組織。台湾の貿易振興のために台湾政府と台湾の産業界により設立された非営利公的貿易振興機構になる。

 TAITRAは複数の展示会を台北で開催しており、その中でも最大のイベントは毎年5月下旬から6月上旬に行なわれているCOMPUTEX TAIPEIになる。ICT(情報通信技術)のイベントとしてはアジアで最大規模になるCOMPUTEX TAIPEIは、2019年は5月28日~6月1日の日程で開催される予定だ。

 そして、そのTAITRAが開催している自動車向けのイベントがTaipei AMPA(台北国際自動車部品およびアクセサリー見本市)で、カーエレクトロニクス、EV(電気自動車)、ITSなどの複数の展示会を包含しており、2019年は4月24日~27日の4日間にわたり、台北南港第1展示ホール、第2展示ホールで開催される予定。

 そのTAITRAの理事長 兼 CEOである葉明水氏にお話をうかがってきた。

スタートアップ向けのInnoVEXではアジア最大規模を実現。ベンチャーキャピタルから出展企業への出資などの実績も

──COMPUTEXの名称について。現在グローバルなテックイベントでは、名称をより汎用の意味に取れるようにすることがトレンドになっている。CESはConsumer Electronics Showの略称であることをやめ、MWCもMobile World Congressの略称をやめている。同じようにCEATEC JapanもJapanの名称を取り去りCEATECになっている。COMPUTEX TAIPEIに関してはどうか?

葉明水氏:COMPUTEXの名称は時代のトレンドに適合していると考えている。昔はCOMPUTEXの名称はコンピュータの意味だった、それが今はコンピューティング全般を意味しており、すでに調整されているのだ。これに合わせて内容も、コンピューティング全般に変わりつつある。

 COMPUTEXはもちろん、これまでのコンピュータは依然として重要だが、新しいコアはIoT(Internet of Things)になりつつある。それにAI、ゲーミング、5G、ブロックチェーンなどが新しい要素として入ってきている。ゲーミング分野に関しては世界のトップ企業が参加してくれており、重要なジャンルになりつつある。

──COMPUTEXと併催されているInnoVEXについてはどうか?

葉氏:新しいトレンドになるIoTやAI、ブロックチェーンなどでは、多国間のスタートアップ企業の交流を推進していきたい。そうした取り組みが新しい産業を生んでいくことに繋がればと考えている。

 台湾のスタートアップ企業だけでなく、日本、韓国、オランダ、アメリカといった多くの国からの参加がある。もちろんスタートアップ企業だけでなく、大企業にも参加を呼びかけており、マッチングに繋がればいいと思っている。

 実際、ベンチャーキャピタルからの参加も少なくなく、シンガポールやアメリカのベンチャーキャピタルも参加してくれており、昨年は韓国のスタートアップ企業がInnoVEXに出展したことでイスラエルから出資を受けたという事例もある。ベンチャーキャピタルにとっても有望な投資先を探すという機会になっている。

 CESではそうしたスタートアップ企業が700~800社程度参加したそうだが、われわれのInnoVEXでは400~500社が参加すると見込んでおり、アジアでは最大規模だと自負している。

自動車パーツではアフターマーケット市場が大きな台湾、EV向けのサプライチェーンも存在

──台北で開催される自動車の展示会Taipei AMPAに関して聞きたい。台湾と言えばICTが強いという印象で、自動車のサプライヤーなどが集合しているという印象はないのだが、なぜ台北で自動車関連の展示会を開催しているのか?

葉氏:ご指摘のとおり、自動車産業として見たときに台湾には強いプレーヤーはいない。しかし、サプライチェーンは存在している。オリジナルの製品の割合は10%程度だが、アフターマーケット向けの製品が90%を占めるというマーケット構造になっている。

 これらのアフターマーケットの製品は、台湾国内だけでなく、日本、中東、アフリカなどに向けても輸出されている。また、タイヤメーカーのように台湾やアジア向けに独自のブランドで輸出しているメーカーもあるし、トヨタやホンダといった日本の完成車メーカーのサプライヤーとなっている部品メーカーも存在している。アフターマーケット向けでは台湾でしか見ることができないようなオリジナルのパーツも提供されている。

──台湾の強みであるICTと自動車産業の統合についてはどう見ているのか?

葉氏:AMPAでも従来からEVやハイブリッドといった電動向けのソリューションは多く展示されており、カーエレクトロニクスに特化した展示もある。EVとカーエレクトロニクスの先進企業の1つであるテスラのサプライチェーンには台湾の企業25社が参加しており、これには大きな意味がある。

 台湾にはすでにEV向けのサプライチェーンが存在しているということだ。コネクテッドカーも重要で、これも台湾の強みを発揮できる。ADASのサプライチェーンに関しても同様だ。今回のAMPAではその関連の展示もある。

 例えば、EVではNoodoeという企業がEV向けのチャージングソリューションを提供している。米国でのEVの普及率は5%になっており、その充電施設は重要になりつつある。例えば駐車場やホテルにしてもEVの充電設備がないと使ってもらえないという状況になってきており、それらのソリューションもAMPAで展示される予定だ。

──台湾の自動車向け産業の今後は? 自社ブランドでの展開などはあり得るのか?

葉氏:すでに述べたとおり、サプライチェーンの一部を担うと考えると、表面から見えにくいところは共通するところだ。

 ただ、ICTの分野で言えば、ASUS、Acer、Advantech、自転車で言えばGIANTのようなグローバルで自社ブランドで提供するベンダもあれば、ODMという形で提供するブランドもある。また、TSMCのように受託生産を行なうメーカーもある。このように台湾ではパーツを提供するところ、自社のブランドで提供するという2つの形があり、自動車でもそれは同じだ。

 今後、MaaS(Mobility as a Service)のような新しい交通サービスの形やスマートシティ、さらにはスマートメディカルなど世界は進化していくと思うが、そこに台湾が持つIoTやAIのノウハウを提供していくことになる。その時に重要になるのは単にパーツという製品だけでなく、アプリケーションソフトウェアも含めたソリューションという形で提供していくことが重要だ。

 われわれはCOMPUTEXにせよ、AMPAにせよ、このことを重視しており、COMPUTEXやAMPAではそうした台湾のソリューションを提案できるようにしていきたいと考えている。