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8月の「SUZUKA 10H」に参加する脇阪寿一・薫一兄弟に聞く

「ロッテラー選手がオレも乗りたいとLINEの嵐」と寿一監督

脇阪寿一監督

 昨年から始まった「SUZUKA 10 HOURS」が、2019年も8月22日(木)~25日(日)の4日間にわたって鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で「2019 第48回サマーエンデュランス「BH オークション SMBC 鈴鹿10時間耐久レース」として開催される。

 FIA-GT3という世界的に最もポピュラーなレーシングカーを使って行なわれるSUZUKA 10Hは、10時間の耐久レースという新しいレースフォーマットを採用しており、世界中のプロレーサーやジェントルマンレーサーから注目を集めるレースとなっている。

 2019年のSUZUKA 10Hに向けては著名レーサーが多数参戦を表明しており、先日は1998年/1999年のF1チャンピオンであるミカ・ハッキネン選手と2015/2017年のスーパーフォーミュラ王者の石浦宏明選手が「McLAREN 720S GT3」で参戦することが明らかにされた。

 また、4月6日には現在はSUPER GTで6号車 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也/山下健太組、BS)のチーム監督を務め、かつTGR(Toyota Gazoo Racing)のブランドアンバサダーも務めている脇阪寿一監督と、その実弟で52号車 埼玉トヨペットGB マークX MC(脇阪薫一/吉田広樹組、BS)でGT300にドライバーとして参戦している脇阪薫一選手が兄弟でSUZUKA 10Hに参戦することが、脇阪監督のBLOG「脇阪寿一の走らなあかん!」で明らかにされている。

 SUPER GTの開幕戦(4月13日~14日)が行なわれている岡山国際サーキットでは、脇阪寿一監督と脇阪薫一選手による囲み会見が、6号車のチームであるチーム・ルマンのホスピタリティブースで行なわれた。

脇阪薫一選手

メーカーの枠を超えてSUZUKA 10Hを盛り上げていきたいという気持ちで参戦を決めた

脇阪薫一選手:自分は今もSUPER GTやS耐などでスーパートヨペットでレースに出させていただいている。その母体となっているLMCorsaのエントラントでレースをしたいというのが始まりで、ブランパンGTのアジアシリーズに、僕とジェントルマン・ドライバーで出場している。それで、SUZUKA 10Hは誰かと考えたときに、TGRのアンバサダーという立場もあるが、兄弟でレースをやってきた兄として、先輩として脇阪寿一しかいないのではないかと。現在はこのチーム・ルマンの監督という立場だけど、86レースにもでていて、「こういう機会があるんだけど、どうですか?」と聞いたら渋々ながらも受けてくれた。

 レースを始めてからずっと兄の背中について行ってレーシングキャリアを始めたが、童夢がフォーミュラ・ニッポン(現在のスーパーフォーミュラの前身)をやらなくなってから兄を追いかけるのはやめて別々のキャリアを歩むことになった。そんな中で、SUPER GTになる前の鈴鹿1000km時代にはトヨタさんと兄に助けてもらって出場し、ビッグタイトルを獲得できた(筆者注:脇阪兄弟は2002年の鈴鹿1000kmを、飯田章選手とトリオで優勝している)。

(鈴鹿サーキットの運営会社である)モビリティランドとして4輪の8耐にしたいという思いでSUZUKA 10Hを始められたと聞いていて、そんな中で兄のJS STYLE Companyを辞めて8年が経って、そろそろいいかなということで(話をしに行った)。

 そもそも大阪トヨペットグループに入ったのも、最初に兄のスポンサーどうですかと話に行ったことが始まりだった。その後トヨタが86を発売するときにディーラーもレースをやっていく時代ということで、じゃあ自分はどうかということで関係が始まった。

脇阪寿一監督:FIA-GT3というと、SUPER GTではGT300を走っている車両というイメージだった。しかし、ニュルブルクリンク24時間に参戦するようになって、クラス優勝したが、その上の総合優勝を争っていたのはFIA-GT3の車両で、イメージは日本と完全に逆で興味をもっていた。SUZUKA 10Hには弟を誘ってかつて勝ったレースだし、その歴史と伝統のある鈴鹿1000kmの後継ということで、重みがあるレースというイメージだった。

 もちろん体制的には総合優勝を狙う位置ではないけど、しっかりと戦っていきたい。鈴鹿サーキットの思い出と言えば、フォーミュラ・ニッポンに乗り始めたころはお金もなくて、バイトとして鈴鹿のレーシングスクールの講師をやっていた。1日1万5千円ももらえてすごく助かった。ところが2年目になると、まわりが3万円もらうことに気がついて(笑)、3年目には高木虎之助さんが7万円ももらっていることに気がつき(笑)。もちろん冗談ですが、その時のSRS-Fの生徒さんでは佐藤琢磨選手や松田次生選手など、今でも第一線で戦っている優秀な生徒さんもいた。その意味で、鈴鹿サーキットには思い入れがある。

(レースに出ることを決断したのは)ハンドルを握りたいというのがある。86レースに出るのもそうで、熱くなれるからだ。また、モータースポーツを盛り上げていきたいという思いと、TGRアンバサダーの仕事の1つクルマ作りがあるが、それをするためにはクルマを知らないといけない。

 去年の富士スピードウェイでの24時間レースでは、TGRのロゴがついたレースシングスーツを着て、フォルクスワーゲンの車両でレースに出ることができた。それでTGRのボスからは宣伝してくれてありがとうと言われる。SUZUKA 10Hではポルシェの新しいクルマを理解して、次のクルマ作りにつなげていきたいし、何よりレースを盛り上げていきたい。

SUZUKA 10Hに出ると明らかにしたらアンドレ・ロッテラー選手からLINEの嵐

──2018年はGT300のチームの1つとして道上龍選手が出走したりと、同じ世代のドライバーも参戦しています。今年GT500からの引退を発表した本山選手などにも出てきてほしいですか?

脇阪寿一監督:そのとおりだ。SUZUKA 10Hは多くのドライバーにとって注目されている。今のモータースポーツのトレンドとしては、参加型のレースが増えてきており、欧州でもジェントルマンドライバーが参戦できるようなレースが多くある。

 このSUZUKA 10Hにでるということを明らかにしたら、ヨーロッパにいるアンドレ・ロッテラーからLINEの嵐で、「乗りたい、乗りたい」って言ってきた(笑)。(ここで薫一選手が「あやうく僕が降ろされるところでした(笑)」とツッコミを入れ)。ワークスドライバーとして走っているアンドレにしても、2007年に一緒に鈴鹿1000kmを優勝したときのよい思い出があるのだと思うけど、そうした欧州のドライバーも注目しているレースになっている。

──新しい車両で事前のテストはできるのか?

脇阪薫一選手:先週ブランパンGTの開幕戦がマレーシアで開催されて、我々も参加してきた。テストはレギュレーション上禁止なのだが、我々の場合は新規参戦であること、シェイクダウンということもあって特別に許可されている。我々にデリバリーされる車両は、先週のレースでは予選で1-2-3-4で、決勝レースでも1-2を実現している車両。

 今年のSUZUKA 10Hにはミカ・ハッキネンも出てくると聞いている。そのうえ石浦選手と組んで出てくるというので、それはとてもいいことだと思っている。ブランパンでも名前のあるプロとプロが同じスティントを走ってレースを盛り上げるとかしており、どの周回でも激しくレースを見せており、我々の参戦もそうしたコンテンツの1つになるといいと考えている。

──SUPER GTの自チームの状況について教えてほしい。

脇阪薫一選手:最近SUPER GTではマザーシャシーに乗っており、ライバルとして戦うのはFIA-GT3。そのFIA-GT3に乗ってレースするので、今後SUPER GTのレースをする上で参考になると考えている。それはチームにとってもメリットがある。今週のレースはどうかと言えば、それは新しいチームメイトの吉田選手次第ですので、吉田選手に注目しておいてください(笑)。

 これまで我々のチームは結果がまったく出ていなかったけど、今年はその欠けている新しいピースを手に入れた。ブリヂストンタイヤを得たので、しっかりと組み立てて行けばチャンスがあると考えている。

脇阪寿一監督:ご存じのどおり、不幸があって1年最後まで戦えるのかというレベルだった。普通なら途中でサードさんから田中耕太郎さんが来てくれたりとかあり得ない。ほかのチームにそして助けていただいた1年だった。今年は田中耕太郎さんが戻って、新しく山下健太選手が来てくれて、大嶋選手がニコニコ笑いながら楽しみにしている。

 監督を始めてから2位、3位ときて、去年は忘れて(笑)、今年はチャンピオンを狙える位置に戻ってきたと思っている。予選を見て、1年間どう戦うかプランを立てていこうと思っている。今年は4年の中で一番準備ができている年で、テストでも要所要所でトップタイムがでている。大嶋和也とチーム・ルマンに、早く一勝を与えることで、チームスポンサーにも安心していただきたいというのが正直な気持ち。