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スープラなど来季に導入されるクラス1規定の新車両は、8月末に合同テストでデビューの見通し

GTA定例会見

2019年5月26日 決勝開催

SUPER GTを運営する株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GT第3戦「2019 AUTOBACS SUPER GT Round 3 SUZUKA GT 300km RACE」が5月25日~26日の2日間にわたって鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で行なわれている。5月26日の14時30分からは決勝レースが行なわれる予定だそれに先だちSUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(以下、GTA)による定例会見が行なわれた。

 この中でGTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏は「3社が開発している来季のGT500車両は、8月の末に合同テストを行なって一緒に走らせたい」と述べ、2020年~2022年までの3年間に使用される、DTMとの車両規則を統合した「Class1(クラスワン)」に対応した車両のデビューが、8月末に計画されている合同テストでとなる可能性が高いことを明らかにした。すでにトヨタはスープラをClass1車両として投入することを明らかにしており、その合同テストの中でスープラと、日産、ホンダの車両がそろってデビューすることになる。

GT500のNSXのミッドシップハンデウェイトの搭載位置は第1戦、第2戦から変わらず

──このレースに先立ってブルテンの中でGT500のNSX-GTについて「GTAが指定するバラストウェイトを指定位置に搭載しなければならない」とされているが、この詳細に関して教えてほしい。

坂東代表:すでに説明したとおり、29kgのウェイトは同じで、フロントのハブ線より前に搭載するという搭載位置に関しては、1戦目と2戦目を見て3戦目以降を決めるとしてきた。その結果、現行のまま何も変えておらず、1戦目、2戦目と同じ位置に搭載している。この現行の状況下で拮抗したレースになってほしいと考えている。

──SUZUKA 10Hに関して、その開催についてGTAとしても協力体制ということでやってきているが、昨年から変更があるのか?

坂東代表:昨年から車検機材やテクニカルな部分に関して人材を派遣している。GTE(GTエントラント協会)にお願いして、GT300のエントラントから参加をお願いすることもしている。今年はそれに加えて、SUZUKA 10Hのタイトルスポンサーで、昨日GTAのオフィシャルパートナーとして契約を発表したBHオークションとの取り組みをプラスとしてやっている。

 今後に関しては、将来的にはSUZUKA 10Hをシリーズ戦の中に含まれる形で考えていきたい。SROとも欲話をして、ブランパンとの兼ね合いなども考えながら、GT300をアジアの中でのチャンピオンを決める形にしていければと思っている。SROのステファン・ラテル氏ともよく話あって、SUZUKA 10HもGT300のポイントになるなどの形もあり得るのではないか。もちろん、SUZUKA 10Hはタイヤがピレリのワンメイクで、レインも入れると15セットものタイヤを購入しないといけないということや、エンジンのマイレージの問題などさまざまな要素を加味して、エントラントの負担が軽減されるならシリーズとしてやるのはやぶさかではない。

──それはGT300がレースをする機会を増やすということか、それとも300だけスピンアウトするのか?

坂東代表:それも1つの方法だ。GT500とGT300を分けてやっていく。その場合には、GT500だけ、GT300だけという形でやっても見ていただけるお客さまに楽しんでいただける状況が生じないといけない。その上でエントラントにもプラスになるような方向で考えていきたい。SUZUKA 10Hの場合にはピレリのワンメイクになるので、エントラントにとって経済的にどうするだということも検討すべき事の1つだ。

──それはSROとのタッグを組むということか

坂東代表:そうだ、SROとの話し合いでやっていく。

──11月のDTMとの交流戦の中での、GT300の扱いはどうなるのか?

坂東代表:現状ではさまざまなアイディア出しを行なっている段階で決定している事項はない。時間だったり、タイムスケージュールだったり、サポートレースをどうするのかということを議論している。交流戦に関してはDTMで通常やっている2デイレース(土日それぞれに決勝レースがある)を下地にして行なう。それ以外の部分をどうするかは日本側できちんと決めていくことになる。ただし、11月にそんなに時間が残っている訳ではなく、早めに決定してエントラントに伝えないといけない、来月タイに向けて荷物を運んでいる間に決めないといけない。

クラス1規定の新型車両は8月末に3社合同のテストを行なう見通し

──来年はトヨタがスープラをGT500の車両として導入するが、それに対しての坂東代表の感想を教えてほしい。また、車両がスープラになると、レクサスブランドではなくなるので、レクサス くま吉の存在がピンチになるが、それに対してコメントを……。

坂東代表:くま吉クンに対するものは上野動物園とか引き取ってくれるのか……聞いてみるのがいいか……しゃべってくれないので、そのインタビュー難しいと思うんだが……(筆者注:くま吉にはレクサス くま吉とトヨタ くま吉の2匹の存在が確認されている。詳しくはGazoo RacingのWebサイトを参照いただきたいが、レクサス くま吉はアメリカ出身、トヨタ くま吉は日本生まれなどの違いがある。なお、公式サイトには載っていないが、タイにもトヨタモータースポーツ くま吉というくま吉が2匹存在していることを2018年のタイ戦で確認している)。

どうなる、レクサス くま吉

タイで確認されたトヨタモータースポーツ くま吉、2匹いるようだ

 スープラに変わって、Gazoo Racingとして動くということになると思うが、そのあたりはトヨタさんに確認していただきたい。GTAとしては(Class1規定で)ホイールベースが2750mmになるので、それに合致した車両を作っていただかないといけない。ルールや空力などを踏まえていかないといけないので、非常に難しい中でやっている。これぐらいまでなら許容しましょうというのをDTMも含めて合わせ込みをやっている。

 営業戦略の一環としてスープラという新しい車両が出てくることに関しては大歓迎だ。日産やホンダでも新しい何かがあるだろうと期待していきたい。

 新車作りに関しては、2020年~2022年までの3年間、モノコックもできるだけ国産のモノを使えたらと考えている。日本で作るのと向こうで作るのとでは、作り方は接着剤まで同じモノを作らないといけないというのがルールだが、品質、コストなどを開発から同じ図面から作るモノは一緒であっても納期がかかるとかあるので、一緒のものがつくれるようにお願いしたということなので、経済効果やモノ作りもどんどん進んでいけると思っている。

 この車両は8月末に、それぞれのメーカーが勝手にテストしようという話になってしまっていたので、そこは合同でやっていけるように話をしている。

鈴鹿サーキットに展示された共通パーツ、モノコック

東レ製

メガサプライヤーのZFも、クラッチという重要部品を共通パーツとして供給している。写真は、ZFのモータースポーツアンバサダー 藤堂いのりさん。ZFイヤリングをしていた

──欧米ではアウディなどDTMのマニファクチャラーが来年再来年ではないけど将来的にSUPER GTに参戦することを検討したいという記事がでたりしているが、GTAとしてはどうか?

坂東代表:いつでも来るなら来い(笑)、とウェルカムだ。ITRが管理しているDTMではメルセデス・ベンツが抜けた穴は大きく、今年から参戦を開始するアストンマーチン、アウディ、BMWはEVなどの環境問題などに取り組んで行こうということになっている。我々はまずDTMと規則統合して1つのモノを作り上げ、レギュレーションが同じ中で走ることを最優先してきた。そしてそれが現実になるのが11月の交流戦だ。

 その先にアウディがSUPER GTに来るということなら、マーケティング的に効果があることが重要になるだろう。アジア向けにその効果がある考えれば、彼らは来るのではないだろうか。

 そうした中で、SUPER GTとしてはまず交流戦をやって、その先に環境、そして2030年までの車両、2050年の車両とは何かという議論をしないといけない。

 DTMの交流戦に関しては、この間ハンコックのタイヤをテストしたが、(一部のチームしかテストできなかったので)BSやミシュランじゃないタイヤを履いているチームもテストしたいという話が出てきている。この先はスポーティングレギュレーションはどうかという議論になると思うので、服部(服部尚貴氏、GTAのレースディレクター)をDTMの次のレースに派遣して、向こうとコミュニケーションしながらやっていきたい。

──以前の富士スプリントカップでは多額の賞金が話題になっていたが、交流戦でそうした計画はあるか?

坂東代表:持ってきてもらえばいくらでも払う(笑)。冗談はともかく、タイトルスポンサーに関してもいくつか手が上がっているので、今後そういうことも考えていきたい。

──来年のオリンピックに向けてGTAとして何か取り組みを考えているか?

坂東代表:GTAからオリンピックそのものに対してということはない。ただ、5月末から富士スピードウェイがオリンピックに向けて使えなくなるので、例えばスーパー耐久の富士24時間とかカレンダーをどうするのかという議論を各所としている。それに合わせていくつかのイベントはカレンダーが窮屈になるけど、移動したりして作り上げている。

 そうなるとどうしても海外のレースと被ってしまって、WECとは4つも重なってドライバーがどうするんだとかいう方もいらっしゃるが、だからどうしたと申し上げたが……。昨日もJRP(日本レースプロモーソン、スーパーフォーミュラなど運営)さんがいらっしゃってうちはこれで行きます、うちとは被ってないけど、ほかとみたら……ということもあるのでオーガナイザーなどと綿密にやりとりを行なっている。

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏